生き切る-(7)ハハはカオナシ
2008/12/19(Fri) Category : 心の闘い物語
■7.ハハは、カオナシ----------------------------------
振り返らずに行くよ。
寒くたって、歩ける。
知らず知らずに取り込まれ、管理され、支配される恐さに比べたら。
断ち切ったとき、誰かに何かを言われたら、
こう言う。
「あそこは『油屋』。父は湯婆婆とボウを合わせたような存在で、母はカオナシ。」
『千と千尋の神隠し』の湯婆婆は最後に言う、
「坊、あなた立てるようになったの?」
ずっと前から、立てたんだ。
それを自律してほしくないから、部屋に閉じ込めていた湯婆婆。
何でも買い与えて、外には病気になると言って、出させなかった。
いつまでも赤ちゃんでいてほしかったから、自律できないと思いこませていた。
千尋をセンと呼ぶように、父は子をカタカナで呼んだ。
「名」ではない。「記号」だ。
異様だ。
気持ち悪い。
ハハは、カオナシのようにわかりやすく人を呑み込まないから、こわい。
傍から見れば、自分を差し出す気前のいい献身的な人。
「いらない。欲しくない。私が欲しいものはあなたには絶対に出せない。」
わかりやすく人を呑み込まない人に、そう言うのは痛みがある。
その痛みや情に取り込まれそうになったら、思い出す。
お母さんが可哀そうよ、なんて言われても、私はちゃんと言えるよ。
言えるようになるよ。
「ハハはカオナシなんです。」
無自覚に人を呑み込んで、エネルギーを吸う存在。
その恐さを知らないでしょう?
私は知っている。
家を出ることがものすごく労力のいることで、
べったりまとわりつくものをかき分けながら、
やっと家を出て、避難したときにはたと気づく。
あそこは異様だ。
環境のせいにしたらだめ、あなたが変われば、見方も変わる、
そう言う人もいるんだろうな。
じゃあ、あなたもあそこに行ってごらん。
たぶん、2週間が過ぎたあたりから、自覚的に耐えることを止めるよ。
もう反射的にずっと力が入っているようになるよ。
そして、考えることをやめそうになるよ。無駄だから。
やっと一か月経って、解放されたと思った時、それをあとワンセットと言われてみて…。
その世界に住んできた。
自分が変なのか、そう思って、あそこを出て気づくんだよ。
あぁ、異様だったんだって。
人格の問題じゃないんだ。
あそこにいると、知らず知らずのうちに汚染がすすむんだ。
心を流れる水が、少しずつ少しずつ濁っていくようだ。
まだ、汚水が心にあるようだ。
ゆっくり休んで、水にもどるまで待とう。
<続く>
【かつて親への殺意を持っていた小学生が成人し、出逢いと喪失の激流の中で、自分の中にあった生きる力を発見し親を卒業していく物語です。多くの人の参考になると思います。許可を得て掲載させていただきました。タイトルは、痛くても、苦しくても、温かさをしってしまったから「生き切る」-現在のご本人の思いです。】
振り返らずに行くよ。
寒くたって、歩ける。
知らず知らずに取り込まれ、管理され、支配される恐さに比べたら。
断ち切ったとき、誰かに何かを言われたら、
こう言う。
「あそこは『油屋』。父は湯婆婆とボウを合わせたような存在で、母はカオナシ。」
『千と千尋の神隠し』の湯婆婆は最後に言う、
「坊、あなた立てるようになったの?」
ずっと前から、立てたんだ。
それを自律してほしくないから、部屋に閉じ込めていた湯婆婆。
何でも買い与えて、外には病気になると言って、出させなかった。
いつまでも赤ちゃんでいてほしかったから、自律できないと思いこませていた。
千尋をセンと呼ぶように、父は子をカタカナで呼んだ。
「名」ではない。「記号」だ。
異様だ。
気持ち悪い。
ハハは、カオナシのようにわかりやすく人を呑み込まないから、こわい。
傍から見れば、自分を差し出す気前のいい献身的な人。
「いらない。欲しくない。私が欲しいものはあなたには絶対に出せない。」
わかりやすく人を呑み込まない人に、そう言うのは痛みがある。
その痛みや情に取り込まれそうになったら、思い出す。
お母さんが可哀そうよ、なんて言われても、私はちゃんと言えるよ。
言えるようになるよ。
「ハハはカオナシなんです。」
無自覚に人を呑み込んで、エネルギーを吸う存在。
その恐さを知らないでしょう?
私は知っている。
家を出ることがものすごく労力のいることで、
べったりまとわりつくものをかき分けながら、
やっと家を出て、避難したときにはたと気づく。
あそこは異様だ。
環境のせいにしたらだめ、あなたが変われば、見方も変わる、
そう言う人もいるんだろうな。
じゃあ、あなたもあそこに行ってごらん。
たぶん、2週間が過ぎたあたりから、自覚的に耐えることを止めるよ。
もう反射的にずっと力が入っているようになるよ。
そして、考えることをやめそうになるよ。無駄だから。
やっと一か月経って、解放されたと思った時、それをあとワンセットと言われてみて…。
その世界に住んできた。
自分が変なのか、そう思って、あそこを出て気づくんだよ。
あぁ、異様だったんだって。
人格の問題じゃないんだ。
あそこにいると、知らず知らずのうちに汚染がすすむんだ。
心を流れる水が、少しずつ少しずつ濁っていくようだ。
まだ、汚水が心にあるようだ。
ゆっくり休んで、水にもどるまで待とう。
<続く>
【かつて親への殺意を持っていた小学生が成人し、出逢いと喪失の激流の中で、自分の中にあった生きる力を発見し親を卒業していく物語です。多くの人の参考になると思います。許可を得て掲載させていただきました。タイトルは、痛くても、苦しくても、温かさをしってしまったから「生き切る」-現在のご本人の思いです。】