パワハラ事例:パワハラ上司の心理と追い詰め方
上司と部下という逃れられない関係において、上司の言うことには逆らえないという圧倒的権力格差の中で行われるハラスメント(嫌がらせ)。なぜ、それは起こるのか? そして、どのように心理的に追い詰められていくのか? パワハラは傍にいてもわかりにくい巧みなものです。自分を守るために是非その構造をご理解ください。

★パワハラ事例紙上再現ドラマ
<職場構成>
部長、女性課長(新任)、一般社員男性2名、女性1名。
女性社員(Aさん)は娘一人いる3人家族で会社勤務を続けているキャリアウーマン。Aさんから見た課長のMさんは、信頼できるバリバリのキャリアウーマン。ストーリーは、このMさんとAさんを軸に展開します。
■Aさんが、鬱になって退職に追い込まれる経緯
①
課長が、「この企画書目を通してくれるかな。あなたの意見を聞きたいの」
Aさんが、2時間後に意見をまとめて持って行くと、
「あ、あれ。もういいわ。時間がかかりすぎね。もっと早く出してくれないとダメよ。あ~忙しい。仕事が山積みだわ」
②
課長が、「この書類コピー20部とって会議室に持ってきてくれる」
持って行くと、
「遅いわよ。コピーとるだけでどれだけ時間かかっているのよ!私が口頭ですませたわよ。次からちゃんとやってちょうだいね」
③
夫に話しをすると、
「そんな上司いくらでもいるよ。そんな奴にはハイハイって言っておけばいいんだよ」
④
課長が、「大事なお客様との会議があるんだけど、何かおいしいお菓子買ってきてもらえる? あなたのセンスに任せるわ。よろしくね」
会議終了後、部長が会議の首尾を聞きに来る。課長が、あまりうまくいかなかったんです、報告しつつ
「Aさんのお菓子にはやられたわ。あれだけ会議に合わないもの買ってくるんだもの」
「え、なにかいけませんでしたか?」
「口の中がパッサパッサで話しづらいのよ。次はもっとセンスの良いお菓子買ってきてね」
⑤
課長が気前よく部下におごってくれる飲み会の席上で、課長が、
「Aさん全然進んでいないよ」
「すみません、あんまり強くないもので」
「なんなのよ、もう~。仕事も遅いしお酒も飲めないなんて、何が楽しいの~」
⑥
たまたま部長と2人になったとき、何気なく課長とのことを話す。
「ふ~ん、なるほどねぇ。私から見ている限りそんなことは感じないけどねぇ…。まぁ、それとなく話してみるよ」
⑦
数日後、Aさんが休憩ついでに皆にお茶を入れようとすると課長だけが無視。一言「後で会議しつ来てくれる?」
⑧
「部長に言われて驚いたけど、あなたにパワハラしようだなんてちっとも思ってなかったの。でも、次の人事があるまでは異動できないと思うから、それまでは我慢してね。それに、このことが原因でキャリアに傷がつくのもイヤだし、お互いのためだから、あなたとは会話しないことに決めたから。」
⑨
そして、仕事を干されて一人だけ浮いたAさんは他の社員とも話しづらくなり、心身ともに蝕まれていき、うつになって退職することになりました。
さて、どうお感じになったでしょうか。
★パワハラ事例:パワハラ上司の心理と追い詰め方
1,鬱になって退職に追い込まれる経緯 (本項)
2,パワハラ上司(ハラッサー)の支配の方法
3,パワハラ上司の「雪隠詰め」の戦略
4,パワハラ上司の「雪隠詰め」のコミュニケーション術
5,ダブルバインド3点セットによるパワハラコミュニケーション
6,パワハラの4タイプ(1)-「恐怖支配」型上司のやり方
7,パワハラの4タイプ(2)-「張り子のトラ」型上司のやり方
8,パワハラの4タイプ(3)-「職場カプセル」型上司のやり方
9,パワハラの4タイプ(4)-「サイボーグ」型上司のやり方
10,パワハラ退職者の極めて深刻なダメージ
11,パワハラ退職:ダメージからどのように立ち直るか
*ご参考
・パワハラにおけるダブルバインド(二重拘束)の構造
・私がパワハラに耐えられた3つの理由
・パワハラからの離脱法