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団塊世代-再就職詐欺に見るダブルバインドの構造

2008/02/05(Tue) Category : 社会事件簿
あなたは退職後間もない時期で、これからどうしようか半分途方に暮れているとする。
若者でも正社員になれない時代で再就職は難しいし、派遣仕事は自分のキャリアを活かせそうにもない。
と言って地域とつながりもなく、1日家にいると妻から迷惑顔をされる。
何より、時間をつぶせない…

さて、どうしたものか…と飽きずに新聞を隅から隅まで読んでいると…
「おっ、こういうのがあるのか!」

思わず目を引いたのは次のような小さな求人。

①正社員(幹部候補)
②環境関連事業
③仕事相手先 官公庁
④40歳~65歳
⑤年収300万円~450万円

①幹部候補だから「正社員」というのがくすぐる
②社会貢献欲を満足させる
③堅い仕事だ
④キャリアを活かせそうだ
⑤信憑性がある


ともあれ時間もあるし、一度面接に行ってみるか、と思った時点で既に片脚つっこんでいる。
とんとん拍子で面接は進み、2次面接は翌日だったりする。
落とし穴に向かって流されているのだが、久々のスピード感が“実社会”を感じさせて、もはや飲まれている。
 ↓
2次面接で『役員採用には互助会への入会が必要。入会金は1口70万円だ』と言われ、ちょっと違和感を感じるが、やっと(?)暗い日常から抜け出せそうだという衝動が目を曇らせている。むしろ、退職金があるので70万円で役員になれるのなら安いもの、と思ったりする。何しろ、会社時代になれなかった“役員”になれるのだ。
 ↓
お金を払って出社すると、ピカピカの社章と名刺を渡される。
「社章」と「名刺」-組織に従属する安心感が蘇る。自分の居場所があるという安心感だ。
その名刺には「取締役」と肩書きが印刷されている-自分が認められた喜びと使命感がわき起こる。
サラリーマン根性のしみこんだ人間は、たったこの2アイテムで、いとも簡単に心を虜にできるのだ。
 ↓
家族に意気揚々と胸を張って告げる。
「環境関連事業の取締役だぞ!」
濡れ落ち葉にならないかと気をもんでいた奥さんもホッと胸をなで下ろすと同時に祝福する。
 ↓
出社して、わずか3日後…
「実は、資金繰りが大変なんだ…」
と、会社の危機的状況を耳打ちされる。そうか、取締役だから打ち明けてくれたのだ-複雑に嬉しい。
そして、金策に走り回らされる。
 ↓
気づいてみれば、社内は恐怖政治だ。
殴られたり、土下座させられている社員もいる。
会社で「私語」は許されない。
退社時間も同時刻退社は許されず、時間差を設けて帰るように見張られている。
 ↓
会社に向かう足は重いが、今更家族に実態を話せない。
気づいてみると、3000万円近くを会社に奪われ、顔から表情がなくなって、家族に強制的に心療内科に連れて行かれた…


【*以上は、テレ朝「スーパーモーニング」で見た被害者の告発内容から想像したフィクションです】




「虚を突く」という言葉があるが、虚ろになって心許ない人間の心理を巧みに突いている。

マズローの欲求5段階説は、「生理>安全>所属>承認>自己実現」という段階を経て人の欲求は高次化していくと説く。

この三共システムという詐欺会社は、「生理>安全>所属>承認」欲求までを一見満たしてくれるのだ。「社章」と「名刺」という薄っぺらいたった2つのアイテムで…。自律のできていないサラリーマンほど、手玉に乗せやすい人種は居ないだろう。

同時に名刺に刷り込まれた「取締役」という肩書きが、「あなたは経営者として運命共同体だから逃げられないよ」という「逃げることを禁ずる第三次禁止令」になっている。出社直後に喜びを持って受け取った紙切れが、あなたの出口を塞ぐのだ。

その運命共同体の会社がつぶれそうなのだから、金策に走らざるを得ない。この状況自体が、「指示に従わないことを罰する第1次禁止令」だ。何が何でも金策しなければ会社がつぶれるという罰を受けるわけだから。

そして、少しでも違和感を感じようものなら、容赦ない威嚇や土下座が待っている。殴られるスケープゴートを目の前で見せつけることが、そのまま「異議申し立てを禁ずる第二次禁止令」なのだ。

かくして、ダブルバインド(二重拘束)は完成する。
いやはや…




ダブルバインドにあった人間は思考停止に陥っていき、「操り人形」とならざるを得ない。

社員全員が取締役で、かつ互いのことをよく知らないという奇妙な組織。鵜飼いには大変申し訳ないのだけれど、鵜と鵜症の関係によく似ている。
この会社の取締役とは、首に縄をつけられて逮捕者4名のためにえさを運んでくる「鵜」なのだ。


それにしても…
管理職が力を失い、組織が使いやすい「定コスト労働力」となって久しいが、ついに、取締役まで鵜に成り下がったかと、ある意味感慨深い。

会社が誰のものかという議論が起こり、「株主のもの」という潮流ができた結果、会社自体が株主の「道具」と化した。つまり、社長以下、そこで働く全ての人間が株主利益のための「道具」となったのである。

この三共システムという詐欺会社は、その本質を見せつけている。





新聞によれば、
『平成14年3月~18年5月、複数の架空の会社名で新聞に「幹部社員募集」などと求人広告を掲載。面接時、定年退職で再就職先を探していた千葉県船橋市の男性=当時(60)=ら4人に「役員採用には互助会への入会が必要。入会金は1口70万円だ」などとウソをつき、現金計490万円をだまし取っていたという。“採用後”は仕事らしい仕事もナシ。月給のほか、互助会会費の運用による配当金を支払うなどと約束をしていたが、実際は給与もほとんど支払われず、配当金もなかった』
2008年02月05日サンスポ


逮捕されたのは、田島瀧三郎(69)、中込順一(61)、古屋政昭(66)、名越龍正(63)。
田島容疑者はほとんど同じ手口で昭和63年と平成6年にも詐欺容疑で逮捕、有罪判決を受けているとのこと。まぁ、呆れるばかりだが、逮捕しても反省させる術もなく、ただ社会に解き放って再び被害者を増やしていく。しかも、その間にますます悪知恵をつけていく…この更生力のないシステムのあり方に問題もある。





いろいろなことを考えさせる事件だが、一つ言えること。

自分から逃げ続けようとする人は、罠に落ちる。

外に向かうのではなく、自分の内に向かえ。

定年退職は、自分とゆっくりと向き合う人生最大のチャンスが訪れたと知るべきである。



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