パワハラ被害者-重度うつからの生還
バリバリのキャリアウーマンだった
小さなオフィス、社歴22年、全ては自分が把握していた
会社に行くことが生活の基軸だった
仕事があるからこそ、生きる時間にメリハリがあった
お酒もガンガン飲み、テニスも負けん気だった
時間を金で買った。糸目をつけず適当に総菜を選んだ
DINKS(Double Income No Kids 共働き子供なし)
気に入らなければ離婚してもよし-自立している自分に怖いものはなかった
泣き言を言う人間は軽蔑した-ならば、あなたが強くなればいいだけのこと
主婦はイヤだった-かごの鳥にはなりたくない
根拠なき自信にあふれた私は輝いていた
私は私の人生の支配だった
【起】------------------------------------------------------
何度目かの上司が替わった
いつしかお酒をいくら飲んでも酔えなくなり、全く眠れなくなった。
集中できない。当たり前のことが当たり前にできない。
夫が気づいたときには、顔の表情がなくなっていた。
ボロボロになって退職。半年間寝たきりとなった。
這ってトイレに行くのがやっと。起き上がることができなかった。
何とか歩けるようになり、半年間カウンセリングのためだけ外出した。
日常生活は、歯を磨くのさえおっくうだった。
退職後1年-ようやく日常に復帰できそうなところに漕ぎつけた
カウンセラーにもう大丈夫といわれた-“普通”に戻れる
喜びが戻りそうになったとき、怒りが吹き出してきた…
【承】------------------------------------------------------
私が積み上げてきた全てを無にした破壊者!
全てを奪った魂の吸血鬼!人の心を持たない最低野郎!
奴さえいなければ、今も会社に行っているはずなのに…
絶対に許せない! 奴が憎い! 奴を殺したい! 早く死ね!
納得いかない。なぜ私なのか? 罰が当たるようなことを私がしたか?
今まで頑張ってきたのは何だったのか? 気が狂いそうだ…
普通のことが当たり前にできない。私を元に戻せ!
何もかもが億劫。ただ時間だけが過ぎていく。生き地獄…
何かしそうで怖い。私がこんなに人を憎むなんて。
全ての努力は無意味。一寸先は闇。夢も希望もない。将来が見えない。
私は治るのか? 自分がどんどんダメになっていく…不安
こんな自分は生きている資格がない。自分に疲れた。死にたい。
「助けてください」
【転】------------------------------------------------------
起きることのできない憂鬱な朝を迎え、理不尽さへの怒り、奴への恨み辛み復讐心、会社を辞めた後悔、 生きる基盤を失った不安、努力が報われない無力感、将来が見えない絶望、 何故自分がこんな目に遭うのかという嘆き、どうしても納得できない憤り、 怨嗟、怨念…そして、これを繰り返す日々から離脱できない事への不安、恐怖、 スタートできない自分への苛立ち…ありとあらゆる負の感情が押し寄せては、毎日毎日グルグルと狐に化かされたように同じところを回り続けた。
そして、新たに助けを求めたカウンセラーに毎日毎日メールを送り続けた。電話もした。吐いて、吐いて、吐き出し続けた。
カウンセラーから見ると3ヶ月毎にほんの少しづつ変化が現れているらしかった。が、私は出口のないトンネルの中にいた…
1年を過ぎる頃…少しづつ外に出られるようになった。身近にもサポーターがいた。
そして、1年半がたつ頃、友人達との交流を機に急浮上していった。
【結】------------------------------------------------------
私は目の手術をしたのだろうか…そう思えるくらい、全てが鮮明(クリア)に見える。
自然が美しい。この世はこんなに美しかったのか。
時間を金で買っていたとき、一つ一つをきちんと見ていなかった
今、時間に追われずにあれこれ考えながらゆっくり選んでいることが幸せ
お金がなければ老後は安泰ではないと思いこんでいた。
が、米さえあればいい。いざとなれば野菜は作ればいい。
自分で料理することが楽しい。食べ物がおいしいことが幸せ。
飲めばお酒もまだ強いのかもしれないが、飲みたいと思わなくなった。
寝る時間さえ惜しんで努力していたのは何だったのか。
眠れることがこんなに幸せなのに。
そして、起きて外の空気に当たり、季節の移ろいを感じることができる幸せ。
今までの私は不感症だったのか。五感が喜びを感じている。
何より変わったのは、人間を見る目。
肩書きや地位、評判で見なくなった。これまで私は自分の目で見ていなかった。私の目はただの節穴だった。今は、私の目で見ている。
主婦が大切なことも知った。
夫が支えてくれたことも知った。
仲間が大事なことも知った。
地域が要であることも知った。
人が怖くなくなった。
そして、
心で生きることが人生なのだと知った。
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時間を金で買う…なんて、馬鹿なことを私はしていたんだろう。
人生は時の流れ。人生を金で買うことはできない。
なぜなら、
時間は心で味わうもの。
心で味わうのが人生だから。
気づけてよかった。
世界が違う。
嬉しい。
心から嬉しい。
生きている喜びが身体の底から湧いてくる。
気持ちにゆとりがある。
思いやりを忘れずに、のんびり、ゆっくり一日を丁寧に生きていきたい。
ありがとう。
【後】------------------------------------------------------
「それで、“奴”に対してはどう思っているの?」
「彼に対する恨みが消えた訳じゃありません。でも、彼が不幸の中を生きているってわかったんです」
「彼が不幸の中を生きている…前は、奴だけのうのうと生きているのが許せないって言ってたよね」
「えぇ(笑)、私の幸せの価値観が今と昔では全く変わったんだと思います。昔は働いて金を稼ぎ、流行りの事をするのが幸せでした。今はストレスのたまらない時間を過ごすのが幸せ。気の合う人と楽しい時間を過ごす事、いつも笑っている事が幸せです。なので、私の幸せの定義からいくと奴は幸せではないので、それでいいのだという感じです」
「にしても、愉快、痛快だねぇ…。バリバリやっているつもりのキャリアピープルに聞かせたいね」
「でも、聞かないと思います。負け犬の遠吠えだって。以前の私だったら、そうしてましたから(^^)」
「私も寒い●●で頑張りますので、先生も沢山の人を助けてあげて下さいね。次回は是非お酒を飲みましょう」
-そうして、元気になった私を見てほしいと会いに来たその女性は、軽やかに去っていった。
【メッセージ】
『私の体験を読まれて誰かが救われれば、とても嬉しいです』
『私みたいな特別な才能がなくても、立ち直れるという事。
これは経験した私がいうのだから自信を持って言えます。
これこそ根拠のある自信ですね(^^)。
だから貴方も絶対大丈夫!! 』