狂気を掬う松井冬子の絵
彼はそう言った。
松井冬子の絵である。
ある社会学者は、松井冬子の絵をジェンダーの視点から捉えていたが、その枠組みにとどまらないだろう。
親に虐げられし者達は多い
狂気の境目にいる人達は多い
ギリギリの日常を送っている人は多い
腹蔵なくものを言えない全ての人々にとって
腹蔵(腹の中にしまってあるもの)を見せつける絵に
やってくれたカタルシスを感じるかもしれない
松井冬子は言う。
「目の前の絵が狂気を見せてくれているので、自分がしなくてすむ」と―
自分の絵は、それを見ることにより「あ、自分が助かった」と思える“厄払いの絵”でもあると―
松井冬子 32歳