「滅私奉公」が国を滅ぼす
「滅私奉公」が国を滅ぼすことは歴史が既に証明しているが、ではなぜダメになるのかについて拙著「あきらめの壁をぶち破った人々」(日本経済新聞社)の中から引用したい。
この本は、自分の首をかけてまで組織改革をし、「会社を愛しているんですね」とまで言われたことのある会社員の物語である。…まるで「滅私奉公」の鑑?(--;)
違います。
と、以前も書いたが、私の中にあったのは、若者を飼い殺しにしていく会社に対する怒りだった。そして、その会社も自由競争・利潤追求という価値に踊らされている…。
以下を読めば、「自分さえよければ」という刹那的な考え方が、若者ではなく、「滅私奉公」の発想をする大人から来ていることが分かるだろう(大人もまた巻き込まれているのだが…)。
豊かで自由になったから、利己的で刹那的な文化が生まれたのではない。今の経済社会のシステムに「滅私奉公」で乗っかることが利己的で刹那的な文明を作り上げていることを理解してほしい。
そもそも、子供は健全だ。
それをスポイルしていくのは大人である。
競争も、利己主義も、個人主義も、自子主義も、考えずに組織に迎合することも、感情を出さないロボットになることも……次々と人間性を奪っていき、社会の歯車に組み込んでいこうとするのは、現代の経済至上社会なのだ。
ここを理解しなければ、すぐに「豊かで苦労を知らない」「軟弱」だの、「我慢が足りない」「鍛え方が足りない」だの、「利己的」「自己チュー」だの、という薄っぺらな批判となり、やれ「道徳」だの「ボランティア」だの「体罰」だのの押しつけの議論が大手をふるい、間違った方向に国を導いてしまう。
騙されてはいけない。
人間は本来、健全であることを知ろう。
間違った方向に行かないためには、来し方を知ることが大切。
私たちがどのように意識をすり込まれてきたのか、チョー簡単に維新以降の日本の歩みを振り返ってみたい。
以下、次のように綴っていく予定です。
★「生き直し」のために―すり込まれた価値を疑え
*「滅私奉公」が国を滅ぼす
①「公」(空間概念)と「私」(時間概念)
②中央集権体制の作られ方
③「滅私奉公」という意識のインフラ整備
④「自律分散」こそが力を発揮することをかつて示した日本
⑤経済戦争も国を焦土と化す
⑥新たな文明のキーワードは“私の自律”
⑦サラリーマンよ、家庭に帰ろう
【ご参考】
・坂本龍馬の思い
・効率至上主義が生んだ背骨なき「怒りの国」
・日本という「完全統制区域」
・心が亡くなる過労死大国
・奈良市職員の長期欠勤問題~人間のロボット化
・ワークライフバランス(6)-働き方の背景にあるもの
・自由からの逃走―(6)大義名分が人を滅ぼす