「自律分散」こそが力を発揮することをかつて示した日本
2008/10/06(Mon) Category : 見方・考え方・価値観-パラダイム
【超早わかり!明治維新以降の日本近現代史④】
●スローガンが人を引っ張る----------------------------
「だけど、戦争に負けてその考え方が間違いだったと分かったんじゃないですか」
「うん。天皇が人間宣言し民主主義の憲法ができて、少なくとも天皇主権ではなくなった。ただ、中央集権のポリシーを体現した官僚組織は残ったままだ」
「でも、その官僚組織が戦後の日本を引っ張った面もありますよね」
緒方の問いに島津は苦笑いした。
「そういう見方が間違いを起こすんだ。日本を引っ張ったのは、戦前も戦後もスローガンだ。官僚組織も他の日本人と同じように引っ張られたに過ぎない」
●『列島改造』が経済成長を走らせた理由--------------------
「スローガン、と言いますと」
「スローガンというのは、向かうべき方向を明確に指し示すものだ。
戦前は『国家総力戦』がスローガンであり、死に向かって一直線に行進した。
戦後は『所得倍増』だ。安保という政治の季節が続いてジリジリしていた民衆は、この一言に飛びついた。何しろ国の目標が自分のためになるわけだから燃えるよね。俺の目標とボランティアの目標が合致したときのような感じだ。
全員が黄金の六〇年代のスタートを切って、日本という国全体が一つの目標に向かって自律分散的にいっせいに走り始めたわけだ。
そして、衣食足りた次に来たスローガンが『列島改造』だ。
これも働くことが便利さを生んで“傍楽”を実感させた。
それが七〇年代の経済成長を突っ走らせたんだ」
●自律分散こそが力を発揮する---------------------
「そうするとスローガンというのは、『FTP』のように目指す方向を示した略称と同じですね」緒方が言うと、島津は大きくうなずいた。
「その通り。FTPという合言葉をメンバー一人一人が自分のものにして動き始めた結果、システムを半年も前倒しで構築できたように、『所得倍増』や『列島改造』といった合言葉を日本人一人一人が自分のものにして動いた結果、驚異的な成長をなしとげた。
日本は、価値観を共有した自律分散的な動きが、もっとも組織効率を発揮することを国家レベルで証明して見せたんだよ」
「なんだか、とてつもない話ですね」
【以上、「あきらめの壁をぶち破った人々―日本発チェンジマネジメントの実際」より】
*全ての人が、解き放たれたように、自分のために生きた。人のためではなく、「所得倍増」という自分の目標に向かって。
そのスローガンは自分たちが望むものだった。だから、押し付けられたものとしてではなく、自分のこととして邁進し、それぞれの持ち場でそれぞれが頑張ったからこそ、60年代は輝いたのだ。
今、新たなスローガンを掲げるべき時に来ている。
国民は、経済成長ではなく調和を求めている。
「地球を貪り食う」ほどに貪欲に消費する経済ではなく「足を知る経済」。
新たなスローガンは、まず国の目標を「GDP」から「GNH」に変えるところから始めてはどうか。
地球を貪り食う(肉食編)
地球を貪り食う(魚食編)
★超早わかり!明治維新以降の日本近現代史
①「公」(空間概念)と「私」(時間概念)
②中央集権体制の作られ方
③「滅私奉公」という意識のインフラ整備
●スローガンが人を引っ張る----------------------------
「だけど、戦争に負けてその考え方が間違いだったと分かったんじゃないですか」
「うん。天皇が人間宣言し民主主義の憲法ができて、少なくとも天皇主権ではなくなった。ただ、中央集権のポリシーを体現した官僚組織は残ったままだ」
「でも、その官僚組織が戦後の日本を引っ張った面もありますよね」
緒方の問いに島津は苦笑いした。
「そういう見方が間違いを起こすんだ。日本を引っ張ったのは、戦前も戦後もスローガンだ。官僚組織も他の日本人と同じように引っ張られたに過ぎない」
●『列島改造』が経済成長を走らせた理由--------------------
「スローガン、と言いますと」
「スローガンというのは、向かうべき方向を明確に指し示すものだ。
戦前は『国家総力戦』がスローガンであり、死に向かって一直線に行進した。
戦後は『所得倍増』だ。安保という政治の季節が続いてジリジリしていた民衆は、この一言に飛びついた。何しろ国の目標が自分のためになるわけだから燃えるよね。俺の目標とボランティアの目標が合致したときのような感じだ。
全員が黄金の六〇年代のスタートを切って、日本という国全体が一つの目標に向かって自律分散的にいっせいに走り始めたわけだ。
そして、衣食足りた次に来たスローガンが『列島改造』だ。
これも働くことが便利さを生んで“傍楽”を実感させた。
それが七〇年代の経済成長を突っ走らせたんだ」
●自律分散こそが力を発揮する---------------------
「そうするとスローガンというのは、『FTP』のように目指す方向を示した略称と同じですね」緒方が言うと、島津は大きくうなずいた。
「その通り。FTPという合言葉をメンバー一人一人が自分のものにして動き始めた結果、システムを半年も前倒しで構築できたように、『所得倍増』や『列島改造』といった合言葉を日本人一人一人が自分のものにして動いた結果、驚異的な成長をなしとげた。
日本は、価値観を共有した自律分散的な動きが、もっとも組織効率を発揮することを国家レベルで証明して見せたんだよ」
「なんだか、とてつもない話ですね」
【以上、「あきらめの壁をぶち破った人々―日本発チェンジマネジメントの実際」より】
*全ての人が、解き放たれたように、自分のために生きた。人のためではなく、「所得倍増」という自分の目標に向かって。
そのスローガンは自分たちが望むものだった。だから、押し付けられたものとしてではなく、自分のこととして邁進し、それぞれの持ち場でそれぞれが頑張ったからこそ、60年代は輝いたのだ。
今、新たなスローガンを掲げるべき時に来ている。
国民は、経済成長ではなく調和を求めている。
「地球を貪り食う」ほどに貪欲に消費する経済ではなく「足を知る経済」。
新たなスローガンは、まず国の目標を「GDP」から「GNH」に変えるところから始めてはどうか。
地球を貪り食う(肉食編)
地球を貪り食う(魚食編)
★超早わかり!明治維新以降の日本近現代史
①「公」(空間概念)と「私」(時間概念)
②中央集権体制の作られ方
③「滅私奉公」という意識のインフラ整備