「心のコップ」のメカニズム
自分の中に感情が湧いてくる「心のコップ」があるとします。それは人の気持ちを受け止めるコップでもあります。
●不眠
気持ちを出すことができず、そのコップに溜まっていくとだんだん息苦しくなり、溜まっている感情が外に出せと騒ぎ立てますから眠れなくなってきます。
気持ちを吐き出すと、よく眠れるという体験は多くの人が持っているでしょう。
●身体反応
そのうち、感情を吐き出す代わりに嘔吐したり下痢したり、じんま疹が出たりアトピーになったり、ひどい咳が出たり喘息になったり、あるいはチック症状が出てきたりと、体が代償行為をするようになります。
自分の気持ちに気づき、自分の人生を歩き始めて原因不明のじんま疹が治った方がいます。
●凝る
筋肉は感情を抑え込む働きがあります。感情を抑え込むために常に緊張しているので、首、肩、背中がバリバリ凝ります。慢性的に抑え込んでいると、疲労から常に全身がだるいということもあります。
感情を吐き出した翌朝、長年にわたって患わされ、どんな治療でも刃が立たなかった背中の凝りがなくなっていた方がいます。
●体型変化
筋肉の鎧で硬い体になるか、水太りします。前者は大きな怒りを抑え込んでいる人、後者は受け皿として生きている人に多いようです。
気持ちを受け止めてもらうと体が柔らかくなり、体つきもほっそりしてきます。
●集中力の欠如、注意散漫、気力低下
常に出てこようとする感情と内側で闘っているわけですから、外のことに対する集中力も続かず、注意も働かなくなっていきます。感情をあふれさせないよう抑えることにエネルギーを消費してしまいますので気力も萎えてきます。
●イライラ
心のコップに余裕がなくなってくると、ふとしたことで溜め込んでいる感情が出てきそうになってイライラします。
イライラするのは、溜まっている感情が一斉に出てこようとして感情の特定ができないため、その感情を表現できないことにあるようです。
●癇癪・ヒステリー
上記より、さらに心のコップが一杯になった状態です。
余裕があるときには受け止められる言動でも、心の余裕がないときには受け止められずにパンと弾き返してしまいます。この時、出たがっている怒りが同時に爆発します。
怒りっぽい人、癇癪持ち、ヒステリー―そういう“性格”があるわけではありません。その人の心コップは一杯であることを表しているのです。ですから、吐き出してしまえば、その人本来の性格が表れてきます。
●キレる
さらに、表面張力で何とかこぼれないくらいのギリギリ状態で過ごすようになると、もはやヒリヒリした緊張状態の中で平静を保つことが難しくなります。
そこに何か一滴ポツンと落ちてくるとこれまで溜まっていた感情も一挙にあふれ出ますので理性では止められません。それがキレたという状態です。
実際、「頭でプツンと音がした」とか、「頭が真っ白になった」と聞いたことがありますが、心のダムが決壊して感情の津波に襲われたと言ってもいいでしょう。津波を抑えられる人間はいません。
●対人トラブル
人は誰でも感情を持っています。すると、相手の感情に共鳴して溜め込んでいた自分の感情が抑えられなくなったり、過剰反応したりするため人間関係のトラブルも増え、仕事が続かず転職を繰り返したり、トラブルメーカーになったりします。
●人嫌い・引きこもり・対人恐怖
人間関係は、気持ちの受け止め合いがその基本ですが、心のコップが満杯では、人の気持ちを受け止める余裕はありません。そのため、人が煩わしく人を避けるようになります。
“人嫌い”という性格があるわけではありません。心のコップの状態がその人を人から遠ざけているのです。心のコップが満杯になればなるほど、人と接することができなくなり、引きこもっていきます。
●活字中毒
会話は感情が交じるためにメールやチャットの方に走りがちになります。
また、閉塞状況の中でパンパンになっている自分を救うために、本の世界に救いの道を見出そうとする場合があります。
もはや感情丸ごとは心のコップに入らないために、感情を言葉で解体し細かくして押し込めようとでもしているかのような苦しい作業をしている場合もあります。この苦しさ…。
●アニメ、コミック、ゲーム、テレビ、パチンコ三昧
ともかくクールダウンをしなければヒートアップした頭がどうにもならない状態で寝ることもできません。
単純作業で脳のごく一部を動かすことにより、他の脳の機能を強制的にリラックスさせるわけです。活字は重たくて読めません。
アニメもコミックもゲームも、ジグソーパズルや縫い物や編み物などと同様にパターン化していて、強制的なリラックス効果があるわけです。
編み物を一定時間したらなんだかスッキリしたという方もいらっしゃるでしょう。ゲームに長時間かかりきりになればなるほど、ストレスを溜め込んでいるというサインでもあります。
●体が動かない
心が重たいため行動ができません。何事も面倒くさく億劫になります。何かやろうとしてもインナーチャイルド(溜め込んだ感情達)が、こっちが先と足を引っ張るので、動く気になれません。そこまで感情が爆発しかかっているのです。
●感覚鈍麻、健忘
集中力の低下、注意力散漫などの状態がさらに進んだ状態です。外側の現実よりも内的現実の方が危機的状況にあるので、外側に対する感覚は鈍くなっています。
まるで夢遊病のように、ボーッとした現実をさまよいます。
●五感喪失
臭いも感じない、味も分からない、距離感がつかめないため電柱にぶつかり、階段を踏み外す。皮膚感覚が鈍っていて火傷に気づかない。音が曇る、風景に奥行きがない…等々。破裂せんばかりの感情に蓋をするために全エネルギーを使い、五感に回っていないかのような状態です。
●感覚遮断
最近、痛みを感じない子供が増えているようですが、押し付けられてばかりいて感情を吐き出せない状況にあると、感情を感じることが苦しいので感情を感じる回路を切断したかのような状態になります。
自分は感じていないのですが、心のコップに気持ちは湧いており溜まっていますので、気づかないままに爆発限界にまで達していき、息苦しくなります。
●乖離(乖離性同一性障害)
ついに抑え込んでいた人格が現れたりします。
ある方は、幼少時の少女(インナーチャイルド)が現れました。ある方は、怒れる自分が現れました。いずれも、現れている間の本人の記憶はありません。
*日常の中でまま見られることから病的に見えることまで、およそ全てのことが、心のコップの状態からきていることが分かると思います。つまりは、健常者と心の病を持っている方との間になんらの差はないと言うことです。
あるのはただ、「心のコップ」の状態の差だけ。
その差をもたらしているのは、気持ちを受け止める環境があるかないかということのみです。その人の側から言えば、受け止められ体験があるかないかと言うこと。気持ちは人に受け止めてもらわなければなりませんから、それはその人のせいではないと言うこと-つまりは、その人をその状況に追い込んでいる環境を探る必要があります。
そして、もし皆の「心のコップ」に余裕があれば、そこにあるのは「個性」だけなのです。
一人一人が個性を発揮して生きられる時代が来れば、どんなにか素晴らしいことでしょう。
それは、決して難しいことではありません。
とてもシンプル。
気持ちを溜め込まず、気持ちを表現して生きることです。
気持ちを大事に生きていきましょう!
感情エントロピー
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