見えないからブラックホール
母は好き。
父は身勝手。
母はかわいそうな人。
父は専制君主。独裁者。
母はかしづく人。
父は家では何もしない人。
母は働き者。
父は無骨。
母は社交家でいい人。
…どれほど見てきただろうか…。
ブラックホールは、見えないからこそブラックホールという。
夫婦となるからには、必ず共通土俵がある。
これらの夫婦の場合、「存在不安」という土俵だ。
男性が社会に出、女性が内を守るという現代社会の構造上、
男性は仕事の面で存在不安を解消し、
女性は内側を支配することで解消しようとすることが多い。
男性は自己完結するが、
女性は支配の手を家庭内で伸ばし続ける
もとより親の愛に飢えた二人であるから親にはなれないのだが、家庭内であれこれ動いている母親は、自己完結している父親に比べると親らしく見えてしまうのだ。
さらに、その実ディスカウントされていることの「怒り」がはけ口を求めて、ことさらに父への憎しみをかき立てたりする。その裏でブラックホールが口を開けて笑っていることも知らずに。
自分は愛されて育ったと思いたい
自分は幸せな子ども時代を送ったと思いたい
母親はそんな人ではないと思いたい
母親から本当の愛をもらっていないことを感じている無意識は、母親から愛を得るチャンスを失うことを恐れて、自分を誤魔化し自分を母親につなぎ止め続けようとする。
辻褄が合わないことには目をつぶる。
いつか感じた違和感は気のせいにする。
本性に直面化してしまった事実は記憶から消す。
やがて子どもは心身の病を得るが、その背景に母親がいるとは露も思わない。その内、エネルギーが吸い取られて衰弱していくか、心が乗っ取られていく。
(参考)心の乗っ取られ方 5タイプ
自分一人ならば、どのような道を歩もうといいだろう。
しかし、わが子が苦しんでいるならば、あなたは母親と対決しなければならない。
それは、母親の本性を目をそらさずに見るという、とても辛い対決だ。
未練を断ち切る自分自身との対決だ。
しかし、その対決を乗り越えた暁には、あなたはブラックホールをも包み込む光の存在となるだろう。
…ということを思いつつ、夜中カウンセリングから帰ったら、寝る前の娘が言った。
「パパ、昨日『デスノート』見て泣いてたでしょ」
グッ…いきなり、切り込んで来やがって…。
妻と娘は映画館で見ていたので、後ろでペチャクチャやりながら見ていたが、私はエルの言葉と死に様に密かに泣いていた。
「僕は両親を知らないけど、あなたは父親でした」
泣けた。
親があっても親はブラックホール。
与えるどころか奪っていくばかり。
エルがかぶるのだ…。
もしかして、使命に(自己完結で)生きた父に認めてもらわんがために、父の求めた正義を暴走させてしまったライト。そのライトとの対決のために、ライト以上に「父」と深いストロークの交換をしたエル。
ライトはエルに嫉妬したのではないか。
そして、キラ特捜チームに入り、エルを打ち負かすことによって父に認めてもらおうとしたのではないか。
さらには、エルを信頼する父をも殺して、全世界の人間から認めてもらうことで、得られなかった父からの愛をも乗り越えようとしたのではないか…
もしかすると、ストローク飢餓のライトが仕掛けたゲーム―。
…ともあれ、
「父」に最敬礼して認められて満足して旅立ったエル。
父に認めてもらおうともがき父の腕の中で死んだライト。
この皮肉にもいろいろと思いが湧いていた…。
私が固まっていたのを、娘は後ろから見ていたのね~。
…ともあれ、親から得られなくとも、親への頸木から自己を解放すれば、愛ある人たちと出逢うことはできるのです。