自分との闘い方、背骨の作り方
母親がインナーペアレンツに支配されている間は、わが子の問題は切り離して考えている。
が、カウンセリングの中で親の本性に気づいたとき、
その母親の中で天変地異が起こり、これまでの自分を崩壊させる大地殻変動と共に、強固な岩盤に抑え込まれていたインナーチャイルドが噴出してくる。
そのインナーチャイルドを受け止めたときに、
わが子の気持ちがスッと入ってくる。
そして、わが子がこれまで自分に何を訴えていたのかがわかり、
自分が我が子に何をしてきたのかがわかるのだ。
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さて、そこに辿り着くまでも「寝た子を起こすな」とインナーペアレンツが邪魔をするので大変だが、本当の大変さはここからである。
1,親が変化したことを察知した我が子達が、気持ちをぶつけ始める。
2,自分の中の“○○ちゃん”(インナーチャイルド)が、私と向き合え!と迫ってくる。
3,インナーペアレンツの逆襲と存在不安のゲームに翻弄される
4,夫も子ども
5,親族の波状攻撃が始まる
仮に夫と2人の子どもの4人家族だとすると、インナーチャイルドを含めた4人の子どもが“自分”に襲いかかってくるのだ。しかも、それぞれが容赦なく。
我が子達は、これまでの鬱憤を晴らすように気持ちをぶつけてくる。また、これまで得られなかった愛を奪い合うように兄弟間で母親の取り合いも始まる。
我が子達の気持ちがわかってしまった“自分”は、何とか受け止めようとは思うのだが、「心のコップ」は“○○ちゃん”(インナーチャイルド)であふれかえっていて受け止めるどころではない。
何しろ、“○○ちゃん”はやっと暗い岩盤の底から出てきたのだ。「うるせぇ!黙ってろ!長いこと我慢してたんだ!今は私と向き合え!」と我が子達を蹴散らそうとする。
さらに、出てきた“○○ちゃん”を再び押し込めるかのようにインナーペアレンツは逆襲をしかけ、その上存在不安が仕掛けるゲームに操られたりしている……。
頼りたい夫はもとより共依存。怒りと絶望の対象になりこそすれ、背骨がない相手に頼ることはできない。どころか、変化を望まない夫は陰に陽に足を引っ張る。
さらにさらに、自分の変化を敏感に察知した親族が直接に間接に刺客を放ってくる。足抜けしようとする人間に追っ手が放たれるのはサティアンの常。あの手この手の波状攻撃で神経もビリビリへろへろ。
どうよ、これ。
内に七人の敵。外に七人の敵。四面楚歌。
パニックになり、こんなに大変ならもう死んでしまいたい!―そういう衝動さえ湧いてくる。
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勝ち残る方法は、個別撃破。一挙に相手にしないこと。
先ずはゴールを見据えよう。
ゴールは自律-自分の背骨を持つこと。
そのためには、サナギの時期を経なければならない。つまり、外からの情報を遮断して繭にこもる必要がある。これは鉄則。そこで、順番はそれぞれの抱える事情によって異なるが、おおよそ次のようになる。
1,親族との音信を断つ
2,これまで所属していた活動、団体、友人関係を見直す
3,インナーペアレンツの弱体化
4,自分が安心できる空間(部屋)を確保
全ては自分が安心できる場を持つためのステップである。
親族に翻弄される時間は無駄。
同様に、親への怒りを代償行為として他にぶつけている時間も、インナーチャイルドを見捨てていることになる。これまで行ってきた諸活動の殆どは代償行為であることが見えてくるはずだ。見えた段階で卒業していこう。
また、「親と自分」の関係が「人と自分」の関係にスライドするので、これまでの人間関係は共依存であることが多い。その目で観察してみよう。
インナーペアレンツは体の隅々にまでしみこんでいるので、いろいろな方法で弱体化する必要がある。
・親から贈られたモノは破壊するか捨ててしまおう(心に安心を与える)。
・親に仕込まれたルール、マナー、躾の類をぶち破ってみよう(自分に許可を与える)。
・禁止令によって考えても見なかったことややりたくてできなかったことをやってみよう(インナーチャイルドの強化)。
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さて、4だが…
ある方は、母一人でアパートを借りられた。
ある方は、家の中に自分の部屋を作った。
ある方は、夫がアパートを借りた。
ある方は、コーナーに机を置いてそこを拠点とした。
ある方は、居間を自分の部屋とした。
例えば最後のやり方は、テレビやゲームなど、子どもが張り付くものを思い切って子ども部屋に置いたのである。
心配? いりません。ストッパー(制限)のかかっていた子どもは最初は暴走するが、必ず落ち着きます(落ち着く度合いはストレスの度合いによって異なります)。
そして、上記いずれの場合も、子どもにきちんと話しをすること。子どものキャパシティは大人のように小さくはない。柔軟でかつしっかりと理解する。
インナーチャイルドの話しもちゃんと理解するし、たとえば「お母さんは今イライラしてるから部屋で暴れてくるから」と言って部屋にこもって、喚いて叫んでドタンバタンしても、子どもは動じないでいてくれる。
また、その姿を見せることが、わが子に家の中で感情を見せてもよいという許可を与えることにもなる。
だから、大人がつまらない常識を教え込まず、ドライバーや禁止令で子どもをがんじがらめにせず、子どもの大きなキャパシティのまま大人になることができれば、どんなに素敵な社会ができるだろうかとつくづく思う。現代社会は、大人になるにつれて、人間が小さく小さく劣化していく社会になってしまっている。
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そして、自分が誰にも邪魔されずにインナーチャイルドと向き合う時間をきちんと持つように、我が子達一人一人とそれぞれきちんと向き合う時間を作ること。
できれば細切れではなく、半日、1日単位で、今日は誰、明日は誰、という具合に自分を子どもに提供するつもりで子どもの思いに沿うといい。母親がきちんと自分と向き合ってくれることがわかれば、子どもは落ち着いてくる。
また、子どもも自分も荒れたときに、「皿を割ろうか!」と一緒に皿を割る方もいる。
また、インナーチャイルドの“○○ちゃん”になって子どもと遊ぶ方もいる。
尚、インナーチャイルドが抑えきれないくらい噴出してくる時期がある。その時は、可能であれば夫が育児をやり、自分は母親をおりて子どもになってしまうというケースもある。
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それともう一つ。
自分のこれまでの枠組みが崩壊し、言わばゼロから作り直すわけだから、自分の中から基準が消え不安と混乱に陥る。
その時に必要になるのが「自律のモデル」だ。
サナギになって自分なりの背骨を作っていくわけだが、そこで必要なことは理屈ではなく身近に自律のモデルを感じることだ。
共依存が蔓延した現代社会でもっとも大変なのは、この自律モデルを見つけることなのである。
【インナーペアレンツvsインナーチャイルド】