心理的ダメージからの回復過程9段階及び第二の誕生
■<心理解説5>心理的ダメージからの回復過程
そして、佐藤さんは「パワハラ退職:ダメージからどのように立ち直るか」に書かれている過程を経て立ち直って行かれました。
それをさらに、次のように区分してみました(全9段階)。
■第1段階 【衝撃(パニック)】
虚を突かれて自分に何が起こっているのかわからない状態。体験の刃(やいば)がグッサリと突き刺さっているにもかかわらず、それを自覚できない状況です。混乱、錯乱し、正常な判断は出来ません。
■第2段階 【否認(防衛的逃避)】
現実を否認します。退職が嘘であって欲しいとか、目が覚めたら1年前であって欲しいとか、奴さえ来なければ、親がこの親でなかったらなど、「もし~だったら」「目が覚めたら~」と現実を否認し、現実から逃避する段階です。記憶を失うこともあります。
■第3段階 【激情(怒り)】
現実を認めざるをえなくなると、改めて 「なぜ自分がこんな目にあわなければならないのか」「自分が何か悪いことをしたのか」という感情が沸騰し、理不尽さへの怒り、恨み、憎しみで自分が振り回されます。持って行き場のない怒りは社会憎悪(不特定多数)へと転化することもあります。
■第4段階 【比較(不安)】
あきらめきれない現状の中で、過去の自分と現在の自分の比較、あるはずだった未来とぶち壊された現実の比較、他者と自分の比較、生き続けることと死ぬことの比較…あらゆる比較がなされ、何もやる気にならない憂鬱気分と周囲へのねたみ、孤立感とともに自分がこの世で最大の不幸を背負っているように思います。
■第5段階 【虚無(自殺衝動)】
心にポッカリ空いた空洞、これまでの全ての努力を無にされた虚無、自分が生きる枠組みを喪失した恐怖、人の社会への不信、新たな努力をすることへの虚しさと徒労―たった一人という痛切な孤独感の中で、もう生きていたくないと自殺衝動が湧いてきます。
■第6段階 【グリーフワーク 】
心の気嵐が過ぎ、蒸気が再結晶化して露になって落ちてくるように、涙にまみれる時期です。上記の全ての思い、そして、これまでの自分の頑張りに対する労りも含めた嘆き悲しみです。
■第7段階 【受容(安息)】
自分の身に起こった現実を受け入れる段階です。抑え込んでいた感情を全てを吐き出しきったとき、心は落ち着きを取り戻します。
上記の過程を経験する中で、気持ちを表現することが自分の背骨を作っていきます。それまでは気持ちを抑えて生きていたため、たとえどんなに成功していようと理論武装していようと本当の安息を得ることはできませんでした。自分と自分の感情の間に信頼関係がない(自己一致していない)からです。
しかし、自分の生きてきた枠組みが破壊し尽くされて初めて“感情”が爆発的に出てきたのです。自分を守ると思いこんでいた枠組みは自分を監獄に押し込めているものでした。つまり、自分が自分を抑え込み、外部から破壊されて初めて自分を出すことができたとも言えます(そういう意味で、出来事に感謝する人も出てきます)。
荒ぶる感情は、自分を縛ってきた自分に対する怒りと言うこともできます。IC(インナーチャイルド)が、「よくもずっと自分を見捨ててきたな」と自分に怒っているのです。その感情を自分で受け止めきったとき、自分と自分の感情との間に信頼関係が結ばれ、背骨ができ、自分の足で立ち上がることができるのです。そして、本当の安息の中に身を置くことができます。
(↑このことは、気持ちのままに生きている人には、宗教も、宇宙論も、成功哲学も、地位も名誉も財産も理屈も蘊蓄も……何もいらないことを示しています。)
-----------------------------------------------------
この苦しい過程を乗り越えて第7段階に至った人は、もう思いのままに生きていけます。ここはさらなるステップを示します。
■第8段階 【連鎖の認識(人生脚本の書き換え)】
第7段階を経て自律に至った人は、自分と向き合うことができるでしょう。ここで世代間連鎖の問題に目を向けることができれば、自分がこの出来事に至った人生脚本に気づくでしょう。気づけば、それを自分の手で書き換えることができます。
また、連鎖に気づけば自分のなすべきことがわかるはずです。自信を持って新たな脚本を描くことができるでしょう。
■第9段階 【誕生(オンリーワンの人生への旅立ち)】
産みの苦しみを経て、新たな自分の誕生です。
時代>社会>地域>家系>親という四重、五重の子宮からあなたは生まれ出で解放されました。そこにいるのは、二本の足で立つあるがままの自分です。この世に生まれたときの自分に立ち戻ったのです。どこへ歩いていくのも自由。止められる人はいません。
自分オリジナルの人生が、今、スタートします。
・マオリッツオ・カヴァーロのたどった「負の過程」