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第3部-5、妻の存在不安

2009/05/29(Fri) Category : 仮面の家
第3部 りょう先生が選んだ「生きる方法」

■5、妻の存在不安-------------------------------

『私は13年、ずっと我慢してきた』と姑に怒ったあけみさん。
『結婚すべきではない』とまで書いたあけみさん。
あけみさんという女性にとって、結婚生活は幸せどころか新婚当初から忍耐地獄だったことが伺われます。にもかかわらず、離婚しませんでした。なぜでしょうか?


3、枠の一部となった妻」で見たように、親から愛情をもらっていない子どもは親から愛情を得るチャンスがほしいため、同居、近居、出戻りをすることが私の体験から感じていることです(もちろん、本人は無意識です)。

同様なことは、妻となるあけみさんにも言えたのではないかと思います。それは、あけみさんが『歩いて15分ほどの距離に住んでいる83歳になる自分の母親にも毎日、食事を運んだりしていた』ことから伺われます。

結婚後も、『毎日』実家の母に食事を運ぶ―このことの“異常さ”がわかるでしょうか。毎日毎日、実母のことが念頭にあるわけで、現家族のことに集中できていないということですね。りょう先生が母親を背負い続けているように、あけみさんもまた実母とへその緒がつながったままであることが分かります。


『兄姉5人の末っ子』で『何の取り柄もないボーッとした青春を送っておりました』と述べていることも、これまで私が体験してきた人々を思い起こさせました。
“ボーッ”と見える人は、内側にエネルギーを使っている人です。
親子関係の理不尽など何らかの謎解きのために脳が内向きに働いていたり、親の受け皿として心なき操り人形のように生きていたり…。末っ子ですから、禁止令でがんじがらめにされ何もしてはいけないペット(愛玩動物)やぬいぐるみ(愛玩物)として存在させられていたかもしれません。

いずれにせよ、親に気持ちを受け止めてもらっていないため、ボーッとした裏にあるのは自己の存在についての無意識の問いなのです。



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私には次のように思えます。

1,二人とも、存在不安があった
2,二人とも、源家族の中で受け皿役だった
3,二人とも、「親の子」のままであった
4,二人とも、自分の感情を抑圧し背骨がない
5,二人とも、心のコップは一杯

このような共通点があるからこそ、結婚に至るわけです。いわば、自律できない子供同士の結婚でした。
家族カウンセリングをしていて実感するのは、配偶者は自分の鏡。そして、配偶者の親族も自分の親族の鏡ということです。全く正反対のように見えて、世代間連鎖の本質は同じであったりします。そういう意味で、似たもの同士が結婚すると言えるでしょう。

背骨がないあけみさんにとって、枠を押し付けられることはむしろウエルカムなのです。そして、受け皿になることには源家族の中で長年にわたって訓練されているので慣れています。

また、ボーッとしていた子ども時代の感情など見たくありません。その実、孤独や寂しさを感じていたなど知りたくないという無意識が働いています。自分が愛されていなかったということを直視するのはとても辛いことですから。自分の中にある存在不安にはかすりたくもないのです。

そういう人は、自分の内面を直視したくないために外に意識を向けようとします。仕事、趣味、ボランティア、地域活動などにのめり込んでいくのです。
あけみさんもそうでした。『PTAにも積極的に参加して、二男が中学生の時は副会長までやっている。』『数年前から地域のママさんコーラスグループに入り、アルトを担当した』『月に八回くらい会っていたという。りょう先生の家でアルトの音あわせをすることもあった』

毎日義父母の面倒と実母の面倒を見、PTAもやり、週2回サークルもやり…さらに、りょう先生が自宅で卒業生に英語を教えたり、作文の会を開いたり、正月にも多くの生徒や卒業生が来たりするときのすべての面倒も見ているのです…すごいですね。

親から得られなかったストロークを他人から得ようとする餓え。その餓えを満たすと同時に、内側に潜む不安を見なくてすむように「社交」や「活動」で時間を構造化していくことに邁進する姿―私は、このりょう夫妻の生きる姿勢に強烈な存在不安を感じるのです。このような方を私も多々見て参りました。明るく社交的で友人も多く地域での評判も高い。しかし、その子どもたちはボロボロです。なぜでしょうか。

もうお分かりですね。そういうお母さん達が朝から晩まで忙しくしているのは、自分と向き合う時間をなくすためなのです。自分の気持ちを見たくない無意識が自分を動き回らせているわけで、言い換えると、自分が自分(の気持ち)を見捨てていますから、わが子の気持ちを受け止めることなどできません。そのため、心を見捨てられた子どもたちがボロボロになっていくわけです。



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戦争&企業戦争という社会システムの中で再生産されるのは兵隊ばかり。自律した大人ができにくくなっています。しかし、親は、子どもが問題を起こしたときに「親の子」であり続けるのか、「子の親」になるのかの選択を突きつけられます。

ここで、とても苦しく辛い思いをしますが、自分の存在不安から目を背けず、自分が愛情をもらっていないことを直視し、怒り、嘆き、不安、孤独の嵐を乗り越えれば、その人は自分を取り戻すことができ、「子の親」になることができます。

なぜなら、それら暴風雨のような感情を感じることが、自分が見捨ててきたIC(インナーチャイルド)を救い出すことに他ならないからです。自分が自分の気持ちを救い出したとき、わが子の気持ちも受け止めることができるようになるのです。

尚、ICが出てくるためには、退屈でも孤独でも、自分がゆったりとした一人の時間を持つことが大切です。それがレジャーであれ自己探求のための心理学の勉強であれ、常に意識を外に向けている人にICは出てきません。外に意識を向けている間は、ICを見捨てているのと同じなのです。「忙しい」=心を亡くす。その通りです。心はゆっくりと自分と向き合う時間の中でしか出てきません。



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閑話休題。
このように、わが子は親を自律へと導く存在なのです。
ですから、長男の生活ペースが変化したことは、あけみさんにとっては「親の子」から「子の親」に向かう自律のチャンスでした。

しかし、子どもをとるのか、祖父母をとるのか、選択を迫られたあけみさんは、そのどちらでもなく“里に帰る”ことを選択しました。背骨を持っていないため、「義源家族(りょう家)」という枠(子宮)から出るということは「源家族」の元(子宮)に返るしか選択肢はなかったのです。


そして、この時あけみさんは「伝家の宝刀」を抜きました。
普段はお飾りに過ぎない伝家の宝刀は、普段抜かないからこそ、ただ一度抜くときに威力を発揮することができるのです。
そして、祖父の土下座で鞘に納めた時、りょう家の権力構造が地殻変動しました。支配の世代交代が起こったのです。

それまで息子(りょう先生)が支えてきたために支配の座にいた姑。その姑の夫(舅)があけみさんに土下座したため、あけみさんが見えない支配の座につくことになりました…。






存在不安がある人の時間の構造化の仕方

【共依存の悲劇の事例】
川口中3女生徒父親刺殺事件-「子宮」の家





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責めないで!

そうなんです!

こちらにしてみればボーッとしてしまうのは親のせいだと薄々感じてるんです。
なのに親からも学校(職場その他)からも怒られるのはこっちなんです! すごく理不尽なんです。

でもこんな事を言ったら普通は甘えてると思われてかえって怒られますよね…。

親からしたら『私は一所懸命しつけしてるのにこの子はちっとも言う事を聞かない』って感じなんでしょうね。
周りからすると『いいお母さんなのに…』って事ですよね。なるほど。

ところで…、心理学の勉強と自分の心を見つめる事はまた別なんですね。あくまでもガイドという事でしょうか。
そっか~。難しいですね。

でも地図として活用させて頂きます。持って無いよりはるかにいいと思いますので。
ありがとうございます。

 
    
 
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