子育て心理学:第1部 8)私のカウンセリング手法
■8)私のカウンセリング手法
前々項でも書きましたが、フォン・ベルタランフィ(理論生物学者)の「一般システム理論」が画期的なところは、それまですべての現象を「個」に還元しなければ記述(理解、議論)できなかったのを、「系」(集合体)のまま記述できるようにしたことです。
しかも、それまでは観察者の影響力を排除した実験室のような似非“客観性”の記述しかできなかったことを、観察者や集合体相互の関係性の影響も含めた記述を可能にしたことにあると思います。
そのため、これまでは現時点を切り取る3次元のニュートン座標の上にしか文明(学問も含めたもろもろ)が展開できなかったのが、今は現時点に至るまでの過去と、そのままではどうなるのかという将来予測も含めて、関係性を持つ集団丸ごとを扱える、いわば4次元の座標を提示したと言えると思います。
------------------------------------------------
4次元というとわかりにくいかもしれませんが、たとえば世代間連鎖をたどって過去を振り返ると、祖父母-両親-自分たち-子どもの関係が、まるでオセロのように一挙にリバースしたりします。気づきによって、現時点の目の前の悩みや問題が解消されるだけではなく、過去の出来事の意味まで変わってしまうのです。つまり、過去を変えることもできるし、そして過去の自分を救うこともできるのです。
さらに、人生脚本を書き換えることによって、あなたはそれまでの人生の舞台からおり、新たな舞台を自ら創ることになります。現象的には、それまでの登場人物は去り、自律した人々との新たな出逢いとワクワクする展開が起こります。つまり、自分の未来を変えることができるのです。
しかも、そのときには五感も思考も自分のものとなり、感情をストレートに自分のものとして感じることができるようになっているでしょう。すべてが新鮮ですべてが自由です。人とのつながりが喜びに変わっていくでしょう。
------------------------------------------------
以上が、私が行っているカウンセリングです。
いわば、「今、ここ」での認識が変わることにより、自分の過去も未来も変えることができる。あるいは、過去のとらえ方が変わることにより今のあなたのあり方が変わり、未来を変える。そういうカウンセリングです。
が、そこに至る道は半端ではありません。ある相談者の方が私の手法を「究極の自然分娩」と言われましたが、その通りかも知れません。他のカウンセリング手法や心理療法と異なり、自分と闘って苦しんで出産するのは本人。私は見守る役です。
具体的には、その人の人生の物語を聴くことによる世代間連鎖及び人生脚本への気づきからスタートし、IP(ドライバーや禁止令)を弱めるためのサジェスチョン、感情の吐き出し(ICの救済)、IPの操り人形からの離脱、自分とICの統合、FC(フリーチャイルド)としての新たな誕生へと進んでいきます。
------------------------------------------------
そして、この間に家族の関係性がどんどん変化していくのです(一人が変われば、全体が変化せざるを得ません)。子どもは鏡ですから、母親が自分と向き合うことを決意した翌日から変わり始めます。
妻子が変われば、夫も変化し始めます。しかし、その夫がどう変わるのかは、夫とその親との問題です。夫とその親との問題には、妻といえど立ち入ることはできないのです(人の問題に立ち入ることは、その人の成長を妨げることになります)。そして、その問題に夫が向き合うのかどうかは、夫の決断なのです。
さらに、その夫との生活を今後どのようにしていくのかは、自律に至った妻が判断していくことになります。
------------------------------------------------
心身の症状や問題行動を起こす人は弱い人ではありません。最も強いプレッシャーをかけられている人です。あるいは、すべてのしわ寄せが来ている人。その人がいるおかげで、他の人は自分の問題に直面化せずにすんでいる構造がそこにはあります。
家族の中では、子どもがその役割を背負います。ですから、その子どもがもう支えきれなくなって心身の症状や問題行動を起こしたときに、次に逃げ場を失って相談に来られるのが多くの場合、母親ということになります。
父親の場合は、結婚自体が逃げ場になっているだけではなく会社という逃げ場、親族という逃げ場もありますので、なかなか自分と向き合おうとはしません(まぁ、どのような人も逃げ続けられるうちは逃げ続けようとします)。
逃げ続けようとする親や夫を自分と向き合うカウンセリングに来させようとするのは無理があります(何事も、無理があれば失敗します)。まして、妻自身が自律できていない「同じ穴の狢」が言っている間は聴く耳を持たないでしょう。
“人(親、夫、子ども等)”を変えようと思っている間は、共依存から抜けることはできません。まず、自分自身が「自律モデル」になることです。そこではじめて、周囲の人は「自律モデル」に接することになります。そのモデルに接して変わり始める人もいるでしょう。しかし、変わろうとするのかしないのか、それはあくまでその人の人生の問題なのです。
自律するとは、その人の人生の問題を奪わないこと。ただ、灯台のように自律した姿を見せて、自らは活き活きと楽しく人とつながって、個性全開の人生を送ること―それが、自律です。