子育て心理学:第2部 5)子どもを否定する親の「条件付き愛情」
第2部-人は「どのように」育っていくのか?(人生脚本編)
■5)子どもを否定する親の「条件付き愛情」
さて、自分でも「感受性に乏しい」「鈍感だ」「人が苦手だ」「嫌われ者だ」「自己表現が下手だ」などと思うようになったBちゃん。その自己イメージが、ますますBちゃんを引っ込み思案にさせます。放っておけば「無気力」「無関心」「無感動」という「三無主義」に陥りそうで親は何とかしたいと思う気持ちが出てきます。
お父さんは、歯がゆい思いで言います。
「やればできるんだから、最初からあきらめていないで努力しろ」
お母さんも、つい愚痴のように口をついて出てしまいます。
「おまえが、もっと積極的ならいいのにねぇ」
これはBちゃんにどう伝わるでしょうか。
ちょっと言い換えてみましょう。
お父さんの言葉は次のように言い換えることができます。
①「~ができれば、認める」
②「努力しなければ認めない」
お母さんの言葉は次のように言い換えることができます。
③「お前の性格が積極的であれば、認める」
④「お前の性格が積極的でないから、認めない」
これは次のように分類することができます。
①条件付き行動の肯定
②条件付き行動の否定
③条件付き性格の肯定
④条件付き性格の否定
条件付きで、性格や行動を肯定や否定したりしていますね。
さらにまとめると、次のようになります。
①③-~という条件を満たせば、あなたはOK。
②④-~という条件を満たさないから、あなたはnot OK。
つまり、子どもの性格や行動を、親の都合で認めたり否定したりしているのです。そして、条件付肯定であれ否定であれ、伝わることは、
「ありのままのあなたはダメ」
ということなのです。
「条件付き愛情」ということが言われることがありますが、上記を見ておわかりの通り、条件がついた時点で「ありのままのその人」は否定されています。ですから、「条件付き愛情」なんて、こんな矛盾した言葉はありません。
愛情は、無条件なのです。
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「人の認め方」(愛情の与え方)について図示してみましょう。

上手を見ておわかりの通り、
無条件に肯定されてはじめてその人はあるがままでいられます(Be)。
無条件否定は、言うまでもなくその人の存在を無視、もしくは否定することです。なきもの(Nothing)にされるわけです。
条件付きで人を認める場合は、それが肯定であれ否定であれ、そこに条件をつけた人の価値観が入り込んできます。ですから、必ず「支配と服従」の関係となり、対等な人間関係は成立しません。支配する側は常に何かを働きかけ(Do)ようとし、服従する側は常に何かをしなければ(Do)と追い立てられることになります。
つまり、条件がついた時点で、人はあるがままの自分(Be)ではいられず、自分以外の価値観に侵入(Do)されるということ。
この“条件”は間違った形でしつけや教育、訓練に用いられることが多く、その場合、人(Be)と人(Be)とが協力して何かを行う(Do)という共生社会ではなく、人(Be)を自分の思う方向に鋳型成形するために働きかける(Do)という統制社会へと向かいやすいのです。
この場合、支配と服従に不満を持つ人々の逸脱を防ぐために、必ず最下層(Nothing)が置かれることになります。スケープゴートを作ることによって言うことを聞かなければああなるよ、と見せしめにするわけですね。このとこについて、次回触れます。
★条件付き愛情
★三無主義