子育て心理学:第2部 8)自己イメージが促す「自動思考」
第2部-人は「どのように」育っていくのか?(人生脚本編)
■8)自己イメージが促す「自動思考」
(*自分で思う自己イメージのことを「自己概念」と言いますが、言葉が難しいので、学術用語を使うとき以外は“自己イメージ”で通します)
さて、Bちゃんは親から言われたことをやろうとします。しかし、自分が認められていない空しい気持ちの中で押しつけられたままに行いますから、うまくいきません。「やっぱりダメ」な結果が待っていることになります。
すると、「感受性に乏しい」「鈍感だ」「人が苦手だ」「嫌われ者だ」「自己表現が下手だ」という自己イメージがますます強化され、さらに「何をやってもダメだ」という自己イメージが付け加わっていくことになります。
場合によっては、次々に与えられる課題に疲れ果てて、学習性無力症から無気力になっていくかも知れません。こうして、三無主義に陥らせたくないという親の意図とは裏腹に、無気力・無関心・無感動になっていくのです。
ところで、このように行動と結果の反復学習を繰り返す内に、やる前から悪い結果を予想するなどの考え方の癖ができてきますが、自分が身につけた考え方の癖を「自動思考」と言います。下にあるものが自動思考の例です。
★自動思考-------------------------------------------

【レッテル貼り】
「私はダメな人間だ」
事柄の分析に向かうのではなく、自分自身にレッテルを貼る
【自己関連付け】
「自分に原因がある」
複数の要因分析に向かうのではなく、自分こそが原因であると考える
【選択的抽出】
「失敗したのは、○○だったせいだ」
複雑な状況の特定の側面に注目して、他を無視する
【過度の一般化】
「何をやっても失敗しそうだ」
特定の出来事を、自分についての一般的傾向として考える
【占い】
「どうせこの仕事では成功できない」
将来を否定的に予測し、それを確立された事実のように受け止める
【破局視】
「この仕事で成功できなければ、私はおしまいだ」
将来を否定的に予測し、それが耐えられない破局のように見なす
【読心】
「上司や同僚は私を無能だと思っている」
周囲の反応が気になり、それを否定的に予測する
【二分割思考】
「この仕事は自分に向いていない」
あれかこれか、一か八か、0か100か思考。完ぺき主義
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たとえば、「自己表現が下手だ」という自己イメージを持っている場合、何か失敗したときに冷静に事柄の分析をするのではなく、自分が表現するのが下手だったから失敗したのだ、とすべての原因を「自己表現が下手」であることに帰結させようとするとき、そこには「レッテル貼り」や「自己関連づけ」の自動思考が働いています。
また、「私は嫌われ者だ」という自己イメージを持っている場合、友人などが立ち話をしているのを見たりして、きっと自分のことを悪く言っているに違いないと勝手に「読心」してしまうのも自動思考です。
このように、自己概念は、自分の自己イメージに合うように事実を解釈して受け入れることにより、自己イメージを強化していきます。これを、「自己概念の循環効果」と言います。
自己概念は、難しく言えば「自分の思考や行動を規定する枠組み」の役割を果たしているので、その枠組みで捉えることのできる事実だけを見ようとしたり、あるいは、事実をその枠組みに照らして解釈したりするわけです。言い換えれば、『自己概念は、それに合うものしか受け入れないという選択効果を持つ』とも言えます。
こうして、親から強化され「自分の枠組み」となった自己概念は、今度はそれ自体で自己イメージを強化していくことになります。
★自己概念
★自己概念の循環効果
★自動思考
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