子育て心理学:第3部 2)親は、赤ちゃんの「安全基地」
第3部-家庭という「場の機能」(家族機能編)
■2)親は、赤ちゃんの「安全基地」
安心して眠れる場所である居場所。
いろいろと行動するときの拠点でもある居場所。
安心安全で、かつ活動拠点-この2つの意味を持たせて「安全基地」と呼びましょう。
ボウルビィは、母親が子どもの「安全基地」(Secure Base)であると提唱しました。また、「発達課題」(Developmental Task)を提唱したハヴィガーストは次のように言っています。
『乳児が離乳、歩行、言語の獲得などの「発達課題」を乗り切るためには、探索行動に出るための「安全基地」となる母親とのアタッチメントが必要条件である』
アタッチメント(attachment)とは、「愛着(情緒的な深い結びつき)」のこと。赤ちゃんは、自分の表現に応じてタイミングよく適切に反応してくれる大人に対してアタッチメント(愛着)を形成します。ハヴィガーストが言ったことは、要は次のようなことです。
「赤ちゃんが健全に成長するためには、安全基地が必要である」
なぜ、子どもの成長に「安全基地」が必要なのか?
安全基地の持つ機能について、下図を基に考えてみましょう。

①生まれたばかりの子どもは、常に親に守られています。親という安全基地が、常に自分と共に移動しているようなものです。この時に母親とのアタッチメントがしっかりと形成されていれば、どこへ連れて行かれようとも、安全基地が身近にあるため安心です。
②幼少期は、親にくっついて歩きます。いつでも戻ることのできる安全基地をそばに置きながら、外の様子を伺う状態です。
③例えば、子供が小さい頃、車で5分ほどのところに自然公園がありましたので、よく連れて行きました。 頻繁に行くので、馴染んでくると、もうゲートを入ると親をほったらかしにして(笑)駆け出していくようになりました。勝手知ったる庭のようなもの。存分に探索行動を始めます。親という安全基地があり、そして、公園全体が準安全基地になったのです。
④こうして子どもの活動範囲(フィールド)がだんだん広がっていきます。そのうち、地域社会全体が準安全基地となり、家を拠点に自由に探索行動を始めるようになるわけです。そして、一人で行動することに自信を得ていきます。こうして独り立ちしていくわけですね。
つまり、独り立ちの原点には、親が「安全基地」であることが必要なのです。
第2部で、Aちゃんは自分のあり方に気を使う必要はなく積極的に外と関わろうとし、Bちゃんは自分を表現しないことのためにエネルギーを使わざるを得なくなったことをみました。これは、生まれ持った性格というよりも親との関係が生み出した結果でしたね。
「積極的になれ」と言っても積極的になれるわけではありません。
「外に関心を向けろ」と言っても向けられません。
子どもが引っ込み思案になるのは、親である自分自身が子どもの安全基地になっていないからです。
ハヴィガーストが言うように、自分が安心できる安全基地があることが、探索行動に向かうための「必要条件」なのです。
★発達課題(Developmental Task)
発達課題とは、「人が健全な発達をとげるために成長過程で達成しておかなければならない課題」です。その課題を達成できなければ、その後の成長、成熟に支障が出てくるわけですね。その課題に直面化した際の危機(クライシス)でよく知られているのは、「青年期の危機=アイデンティティクライシス」と「中年期の危機=ゴーギャンコンプレックス」です。
私の場合は、上記2つの危機を次のように乗り越えました。
「青年の危機、中年の危機」
★母性的養育の剥奪(deprivation of maternal care)
新生児が愛情に満ちた養育環境に置かれていない場合―親の喪失、親からの虐待(養育放棄を含む)、親が不安定で常に心配しなければならない場合、親による支配を受けている場合等々―に、発達の遅れや病弱、心の病などさまざまな支障が出てきます。それを総称して、「母性的養育の剥奪」と言います。
第4部でスーザンの事例として出てきます。
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