子育て心理学:第4部 6)ブラックホール人間とは、ストローク飢餓のまま成長した姿
第4部-「心の食生活(生活習慣病)」に気をつけよう(ストローク編)
■6)ブラックホール人間とは、ストローク飢餓のまま成長した姿
「その人の存在を認める働きかけ」であるストローク。だから、『人はストロークを通じて、自分がどのような存在なのかを確認する』と言いました。
逆に言えば、ストロークがなければ自分がどのような存在かを理解することができないということです。それは、自分の存在に対する根源的な不安を招きます。前項のストローク・ゼロが人間にとってもっとも怖い状態なのです。
さて…そのストローク飢餓にある人が成長して親になったとしましょう。その人にとっては、自分を見つめてくる赤ちゃんは孤独という大海の中でわらをもつかむ存在となります。その我が子を、自分を認めさせる対象として終生そばに置いておきたいという思いから(無意識ですが)、子どもが自律できないように育てようとすることがあるのです。ここに親子間のあらゆる病理が生まれてくるわけです。
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それに対して子どもは、危険基地で見たように、逃げ出して距離を置いたり、反抗したり、自分の中に閉じこもったりします。しかし、どのような行動を取ってはいても、その底にあるのは自分の気持ちを親に分からせたい、自分の人生を奪った親に復讐したい、あるいは、親など無視し続けて生きていきたい―そういう思いです。
ところが、それが反抗であれ、復讐であれ、敬遠であれ、無視であれ、その思いの根底に「親」があるとき、親にとってそれらの行為のすべてが「わが子はまだ自分にとらわれている」ということを示すサインなのです。つまり、それらの行為もすべて親のエネルギー源になっているのです。
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信じられないかも知れませんね。
でも、思い出してみてください。究極の飢餓にある人は、木の皮であろうが、段ボールであろうが、さらには人の肉であろうが、何でも食べようとしますね。そこに善悪も倫理もありません。すさまじい飢えの前にそんなものは吹き飛んでいます。私が「餓鬼」と呼ぶのも、ストローク飢餓が高じるとモラルなど吹き飛んでしまうからです。
餓鬼になってしまうと口に入るものはもはや何でもいいのです。その感情エネルギー(食べ物)の質は問いません。エネルギーを摂取できればいいのです。つまり、軽蔑、誹謗、中傷、罵倒、怒り、嫉妬、妬み、憎しみ……自分に向けられるありとあらゆる感情のすべてが「食べ物」になってしまうのです。それが自分に向かってくるものであれば何であれ吸い込んでいく―そう、ブラックホールとなっていくのです。
そして、マイナスのストロークを得るために何でも仕掛け、感情エネルギーを噴出させようとします。家庭内や親族間のトラブルのすべてが“エサ”なのです。そのとき“人”は、餓鬼にとって感情エネルギーを出させるための“材料”でしかありません。これが人を呑み込んでいくブラックホールの本質です。
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いかがでしょうか。
どうあがいても、勝ち目はありません。
相手は、カオナシのように何でもかんでも飲み込んでいくだけ。感情のフィードバックはありません。せいぜい、カオナシのようにお金を使って我が子を逃げ出さないようにするくらいです。
カオナシと人間は、もはや棲んでいる世界が違うのです。
ブラックホールである親へのとらわれから抜けましょう。
その時初めて、あなたのエネルギーの漏出は止まります。
そして、そのエネルギーを自分のために使い、自分を立て直しましょう。ふと気づいたとき、強大に見えたブラックホールが、とてもちっぽけになっていることに気づくでしょう。それは、あなたが親へのエネルギー供給をやめ、自分のためにエネルギーを使ったからです。つまり、あなた自身がブラックホールを大きくし、自分を弱めていたと言うことです。それだけのエネルギーをあなたは持っています。そのエネルギーを自分に向けましょう。
相手にエネルギーを与え続けている間は、いわばアルコール依存症の人にお酒を与え続けているようなもの。正気に戻ることはありません。お酒が断たれようとするとき、相手はあの手この手を使ってものすごい抵抗をするでしょう。でも、心を鬼にしてエネルギーの供給をまず絶つことが、相手を正気に戻すための第一歩なのです。
そして、自律して二本の足で立つことができたとき、あなたはもはやブラックホールに呑み込まれることはありません。そのときあなたは、自分がそうしたいと思えば、恐れずに「親」に会いに行くこともできるのです。そして、その時始めて、親に「変わり得るチャンス」が訪れるのです。
【ブラックホール人間とは】
・ヘンゼルとグレーテル
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