子育て心理学:第4部 8)ストロークの与え方―ほめ方・叱り方のコツ
第4部-「心の食生活(生活習慣病)」に気をつけよう(ストローク編)
■8)ストロークの与え方―ほめ方・叱り方のコツ
前項では、ストロークの与え方によって、与えられた人の人生の方向性までが変わってくることも分かりました。ストロークは重要であり、また怖いですね。ストロークの影響力が分かれば分かるほど、ではどのように与えたらいいのか、と悩んでしまいますね。そこで、基本的なコツを書いておきましょう。
★1.プラスかマイナスかは、受け手が決定する-----------------
「なでる、さする」=区分上ではプラスのストロークです。しかし、例えば男女間において、それが親愛の情を示すものか、セクハラなのか、それを決定するのは「受け手」なのです。
ストロークもコミュニケーション。すべてのコミュニケーションに言えることですが、コミュニケーションを成立させるには、相手に許可を得て、相手が取れるボールを投げることです。
★2.自分も相手も大切にする-------------------------------
気持ちの世界を深く知ることが人を成熟させていきます。ですから、自分が感じたことを相手に伝えることが、とてもよいフィードバックなのです。ただ、このとき次のことを念頭に置いておくといいでしょう。
自分を大切にするために自分の気持ちを相手に伝えます。「自分」が「自分の気持ち」で行動した時点で、「自分の気持ち」は満足するので気持ちは落ち着きます。
一方、相手を大切にするためにその気持ちを相手にごり押しすることはしません。その伝えた気持ちを相手がどう受け止めるのか、あるいは受け止めないのか、それは相手の問題だからです。つまり、気持ちを伝えた時点で、その気持ちは手放すわけですね。
このように自分にも相手にも我慢をさせない、自分も相手も大切にするコミュニケーションのあり方をアサーティブコミュニケーションといいます。
★3.タイミング:要求されて与えよう---------------------------
気持ちを伝えるだけではなく、相手にしてほしいことがある場合、それは「要求」という形になります。この要求においても、基本姿勢は上記に書いたアサーティブです。もっと強く、なんとかやってほしいということになると「交渉」になっていくわけですね。さて、要求については、次の心理的背景を念頭に置いておくと要求したりされたりがうまくいくかもしれません。
要求するとは、自分が相手にしてほしいことを相手に伝えると言うことです。
その結果、相手が動いてくれればとても嬉しいのです。それは、相手が自分を受け止めてくれたと言うことになるからですね。
たとえば、お茶を飲みたくないのに、聴かれもせずに「ほら、お茶を飲みなさい」と出されても嬉しくないわけです。むしろそこには、出した側の「私の存在を認めて」という承認欲求の押しつけがあり、自分は相手の存在を認めるための道具に使われているわけですからいやな思いになります。
逆に、「お茶が飲みたい」「リンゴが食べたいなぁ」という要求に応えて、お茶を入れてくれたり、リンゴをむいてくれたりされると嬉しいのです。これが「甘え」であり、その本質は「自分を受け止めてもらうこと」です。甘えとは、「自分が親に受け止めてもらっていることを確認する行為」です。確認できれば安心して自分の人生に踏み出していきます。
こんな些細なことでいいのです。
タイミングを間違えないように。
★4.行為のみにストロークを与える---------------------------
さて、褒めたり叱ったりする場合も、まずは上記に書いたとおりタイミングを失わないこと。行為があったそのときに、適切にフィードバックを返すことが大切です。
次に、いずれの時もそのやった行為に対してストロークを与えることです。
たとえば「そんなことをしたお前はダメだ」と、「行為+人格」をセットにしてストロークを与えると、その人の行為ではなくその人自身への評価になってしまいます。つまり、行動を変えるのではなく、その人自身を変えると言うことになってしまうのです。これでは、あるがままの自分ではいられなくなって、とても苦しい思いをします。
★5.ミックスストロークは褒めてない---------------------------
たとえば、「思ったよりも~」「案外~」「見かけによらず~」「~だけは~」という言い方で褒められたときに、どう感じるでしょうか。嬉しい半面、何か引っかかるところがあるのではないでしょうか。
それは、この枕詞の背景に相手に対するマイナスイメージが前提としてあるからです。だから、本質的には褒めていません(--;)。このようにプラスとマイナスがミックスしたストロークをミックスストロークと言います。
ストロークは、無条件肯定で与えましょう。
・自分も相手も自由にするアサーティブコミュニケーション
・DESC法で状況を見、アサーティブに表現する