DV加害者は変われるのか?(1)―「論より実感」
という問いを行政の担当者の方から頂いた。
この2年間で数名に対して加害者教育プログラムを実施してきたが、再発の防止には至っていない。果たしてDVの加害者は変わることができるのだろうか?
それが、教育プログラムに実際に携わってこられた方の深い懸念である。
私の体験から言えば、次の4つが有効である。
1、被害体験(ロールプレイ)
2、被害者の生の声
3、仲間との支えあい(ピアカウンセリング)
4、自分との直面化(半生の棚卸し)
1の事例。
子供が小学校の頃、私は後ろから頭をスパンとはたいていた。ある時、小3くらいの娘からそれが嫌だと言われた。確かその時、妻に試しに後ろから後頭部をはたいてもらったと思う。
無防備だから物凄い衝撃と同時に、人間を侮辱されたような怒りがわくのを感じた。そうか、これは嫌だ―それから、やめた。
つまり、「論より実感」。
ロールプレイで主婦役をやったことがある。そこに現出したわずか5分の家族は、紛れもないホンモノの家族だった。なぜなら、主婦の気持ちを“実感”したからである。まさか自分が主夫の焦燥や孤独を感じるとは思わなかった。一度実感すると相手の気持ちに気づくようになり、配慮ができるようになる。
たとえば、子供の気持ちを感じたいのなら、床に体育館座りしてもらい、7,8m向こうから歩いてきてもらうだけでもいい。威圧感を感じると思う。それが傍らに立ったとき、何もしていないのにどれほどの威圧感となることか実感できる。
聞き方ロールプレイも有効だ。横顔に向かって話す、正面だが無表情に向かって話す、相槌を打ってもらって話す―この3つを3分づつ経験するだけでも、自分がどのような気持ちになるか実感できる。これに睨まれつつ話すことを加えれば、色々な思いが湧くだろう。深い反省につながるはずである。
<続く>