子育て心理学:第5部 3)「親の背を見て子は育つ」メカニズム
第5部-子どもに「何を」育てるのか?(自我形成編)
■3)「親の背を見て子は育つ」メカニズム
ところで、このような知識を理解した上でわざわざ不健全に子を育てようと思っている親はいないでしょう。でも、やってしまっているのですね…。どのようにして、それがなされているのでしょう。
【事例:自分のことが自分でできない子】--------------------
親が「自分で着替えなさい」と口で言いつつ、手早くできない子供を見て、風邪を引かれても困るなぁなどと心配しながら、結局「ぐずぐずしてるんだから、もう…」と文句を言い言い親が手を貸して着替えさせたとします。
そのとき子どもは何をどう学ぶのでしょうか。
(Thinking Time …)
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ヒントは、第2部7)で出てきた「指示」と「禁止令」です。
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はい、いかがだったでしょうか。
親が“言っていること”は、「自分で着替えなさい」です。
→親は、こういう時にこう言うんだな、ということを子どもは頭で学びます。
しかし、親が“やっていること”は、言っていることと正反対ですよね。
→すると子どもは、親は口でああ言っているが、(着替えるということはお母さんがすることだから)自分でやっちゃいけないんだ、ということを身体で学びます。
“言っていること”と“やっていること”が違う場合、人はやっていることから学びます。そして、身体で覚えたことが“身につく”のです。
以前学んだとおり、
口頭で示すことを「指示」
行動で示すことを「禁止令」
と言いますが、この事例の場合は次のような禁止令が含まれています。
・自分で着替えてはいけない
・自分のことを自分でできるようになってはいけない
・大人になってはいけない
禁止令は、上記のように言っていることと矛盾した命令を含むものが多いものです。そのため、納得できずに反抗心が芽生えたり、長いものに巻かれろで従順になったり依存したり、あるいは何か変に感じる自分が悪いと自責の念を持ったり―そういう複雑な性格を形成していきます。そのようにして形成された部分を次のように呼びます。
・AC(Adapted Child) 抑制的な(適応した)子供
はい、前項で出てきましたね。
ここで、前項で見たPの2つの側面をもう一度見てみましょう。CPを例に挙げます。
CP(+)―安全・規律・善悪・正邪・道徳・伝統
CP(-)―権威・厳格・懲罰・非難・批判・説教・封建
こうしてみるとCPマイナスの側面―それは、行動や態度で現れるものと言えそうです。たとえば、親の意識では「正邪」を教えるつもりが批判や懲罰的態度で子どもに接していたり、親の意識では「道徳」を教えるつもりが非難や説教をしていたり…。
つまり、親の言っていること(意識)と、やっていること(行動、態度)が違う場合は、子どもは親のやっていることから学ぶということなのです。だから、「親の背を見て子は育つ」のですね。
これが分かれば、親はただまっすぐに世の中に立って生きていればよい。そうすれば、その背中から子どもは学ぶということが分かると思います。自分がまっすぐな存在(Being)であれば、ことさらに子どもに対してあれこれ躾をする(Doing)ことはないのです。
・自分の手を描き忘れる子―自分のことが自分でできない子
・親の振り見て子は育つ
・人はどのように育つのか
・環境としての親