山崎豊子さんを突き動かした不条理への怒り
2010/01/20(Wed) Category : 人物
不条理と闘う、
社会と闘う、
国と闘う―
私の相談者の方々も不条理と闘っている。
数々の小説がドラマ化された大作家 山崎豊子さんを突き動かす原動力も不条理に対する怒りだったことを18日の新聞記事で知った。
・「白い巨塔」―医学界の腐敗:医療過誤裁判
・「華麗なる一族」―銀行合併
・「不毛地帯」―政治:ロッキード事件
・「沈まぬ太陽」―日本航空の問題:日航ジャンボ機墜落事故
・「運命の人」―権力とジャーナリズム:沖縄密約問題
・「二つの祖国」―日米:戦時中の在米日系人たちの悲劇
・「大地の子」―日中:中国残留孤児の波乱万丈の半生
学徒動員で『(軍需工場に動員中)さぼってバルザックの小説を読んでいるのを見つかって、将校に平手打ちを食いました。そのとき私の書く方向がはっきりと決まったのです』
『バルザックの「谷間の百合」を読んでいるだけで、気を失うほどぶん殴られて……。もし神様が一つ願いをかなえてくれるなら、私の青春時代を返して欲しいと伝えたい』―神にも要求をつきつける、この不条理への激しい怒りが、山崎豊子さんという一人の女学生の腹をくくらせ本気にさせた。
山崎さんのうちに秘めた強い怒りと迫力は、茨木のり子さんを思い出させる。
・わたしが一番きれいだったとき―母に捧げるレクイエム
また、平山画伯の書かれた静謐の裏の不動明王そのものの姿を見る思いがする。
『尊敬していた作家は、戦前から軍の問題を描いていた石川達三さんでした。私には青春を奪った横暴な国家というものを許さん、という思いがしみこんでいます』
『あの時、死んだ彼女が生きていたら、今、いくつでどうしているだろうと。私には、若くして死んでいった人間たちへの責任があります』
―この思いを胸に、山崎さんは『ペンの先から血がにじむような思いで』小説を書かれていった。それが、数々の組織犯罪を暴き出していくことになったのである。
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折しも届いた「産業カウンセリング」1月号には、映画「沈まぬ太陽」の若松監督へのインタビューが掲載されていた。
監督が山崎さんと初めてお会いしたとき、『この作品を映像化するまで死ねない』と仰っていたそうだ。
若松監督もまた、『自分の思いに正直に生きる』という『恩地にすごくあこがれた』。そして、『これはいまやらなければならない』と思ったという。
若松監督からのメッセージ。
『自分に嘘をつかない生き方をしている人間がたくさんいれば、もっといい世の中になる』
山崎豊子さんからのメッセージ(「沈まぬ太陽」のサイトより)。
『主人公・恩地元は、不条理を糾したゆえに周囲から徹底的に疎まれるという状況の中、不屈の精神で立ち向かう清冽な企業人です。寂寞とした希望の見えない現代において、映画「沈まぬ太陽」が荘厳な光として輝き、明日を約束してくれることを、切に切に祈ります』
御年85歳になり、全身の筋肉が痛む原因不明の難病にかかって車いすで生活されている山崎さんの鬼気迫る思い。山崎さんは、この寂寞とした社会に希望を残したかったのだろう。
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坂本龍馬を突き動かしていたのも、社会の不条理への怒りだった。
私を組織改革へと突き動かしたのも、会社の不条理への怒りだった。
いずれも、人を道具とすることへの怒りである。
軍国主義の話になると涙があふれるという山崎さんの心は、まだ癒えていない。全身の筋肉で怒りと哀しみを抑え込んで生きてこられたのではないだろうか。その癒えない悲しみと怒りが、山崎さんの体を蝕んでいる気がする。もう、山崎さんが『若くして死んでいった人間たちへの責任』を背負う必要はないのだ。もう十分に頑張られた。ご本人はまだまだ取り組みたいことがあるようだが、それはそれとして、心安らかになれる日が多からんことを心からお祈りしている。
・坂本龍馬の思い
・人が守るべきものを示した「沈まぬ太陽」
・「沈まぬ太陽」に見る自律への魂の成長の物語
社会と闘う、
国と闘う―
私の相談者の方々も不条理と闘っている。
数々の小説がドラマ化された大作家 山崎豊子さんを突き動かす原動力も不条理に対する怒りだったことを18日の新聞記事で知った。
・「白い巨塔」―医学界の腐敗:医療過誤裁判
・「華麗なる一族」―銀行合併
・「不毛地帯」―政治:ロッキード事件
・「沈まぬ太陽」―日本航空の問題:日航ジャンボ機墜落事故
・「運命の人」―権力とジャーナリズム:沖縄密約問題
・「二つの祖国」―日米:戦時中の在米日系人たちの悲劇
・「大地の子」―日中:中国残留孤児の波乱万丈の半生
学徒動員で『(軍需工場に動員中)さぼってバルザックの小説を読んでいるのを見つかって、将校に平手打ちを食いました。そのとき私の書く方向がはっきりと決まったのです』
『バルザックの「谷間の百合」を読んでいるだけで、気を失うほどぶん殴られて……。もし神様が一つ願いをかなえてくれるなら、私の青春時代を返して欲しいと伝えたい』―神にも要求をつきつける、この不条理への激しい怒りが、山崎豊子さんという一人の女学生の腹をくくらせ本気にさせた。
山崎さんのうちに秘めた強い怒りと迫力は、茨木のり子さんを思い出させる。
・わたしが一番きれいだったとき―母に捧げるレクイエム
また、平山画伯の書かれた静謐の裏の不動明王そのものの姿を見る思いがする。
『尊敬していた作家は、戦前から軍の問題を描いていた石川達三さんでした。私には青春を奪った横暴な国家というものを許さん、という思いがしみこんでいます』
『あの時、死んだ彼女が生きていたら、今、いくつでどうしているだろうと。私には、若くして死んでいった人間たちへの責任があります』
―この思いを胸に、山崎さんは『ペンの先から血がにじむような思いで』小説を書かれていった。それが、数々の組織犯罪を暴き出していくことになったのである。
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折しも届いた「産業カウンセリング」1月号には、映画「沈まぬ太陽」の若松監督へのインタビューが掲載されていた。
監督が山崎さんと初めてお会いしたとき、『この作品を映像化するまで死ねない』と仰っていたそうだ。
若松監督もまた、『自分の思いに正直に生きる』という『恩地にすごくあこがれた』。そして、『これはいまやらなければならない』と思ったという。
若松監督からのメッセージ。
『自分に嘘をつかない生き方をしている人間がたくさんいれば、もっといい世の中になる』
山崎豊子さんからのメッセージ(「沈まぬ太陽」のサイトより)。
『主人公・恩地元は、不条理を糾したゆえに周囲から徹底的に疎まれるという状況の中、不屈の精神で立ち向かう清冽な企業人です。寂寞とした希望の見えない現代において、映画「沈まぬ太陽」が荘厳な光として輝き、明日を約束してくれることを、切に切に祈ります』
御年85歳になり、全身の筋肉が痛む原因不明の難病にかかって車いすで生活されている山崎さんの鬼気迫る思い。山崎さんは、この寂寞とした社会に希望を残したかったのだろう。
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坂本龍馬を突き動かしていたのも、社会の不条理への怒りだった。
私を組織改革へと突き動かしたのも、会社の不条理への怒りだった。
いずれも、人を道具とすることへの怒りである。
軍国主義の話になると涙があふれるという山崎さんの心は、まだ癒えていない。全身の筋肉で怒りと哀しみを抑え込んで生きてこられたのではないだろうか。その癒えない悲しみと怒りが、山崎さんの体を蝕んでいる気がする。もう、山崎さんが『若くして死んでいった人間たちへの責任』を背負う必要はないのだ。もう十分に頑張られた。ご本人はまだまだ取り組みたいことがあるようだが、それはそれとして、心安らかになれる日が多からんことを心からお祈りしている。
・坂本龍馬の思い
・人が守るべきものを示した「沈まぬ太陽」
・「沈まぬ太陽」に見る自律への魂の成長の物語
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