子育て心理学:第5部 6)家族が癒着する「家族カプセル」の構造
2010/01/28(Thu) Category : 心理学
【子育て心理学】
第5部-子どもに「何を」育てるのか?(自我形成編)
■6)家族が癒着する「家族カプセル」の構造
前項で見ましたように、母子カプセルの病理は父親も含めた家族の病理であることが分かります。ではなぜ、こんなにも家族の病理が蔓延してきたのでしょうか。
その一つに、家族が地域社会から切り離され、核家族として人工空間の中に隔離されてきた状況があります。隔離された「家族」という空間の中では、子に対する親の影響は圧倒的に大きくなります。なぜなら、子どもが自分の親を他の親と比較して相対化できなくなるし、何より社会性を育てる子どもの縦社会が消失するからです。
『かつての家(建物)には地域とつながる「縁側」という機能もあった。家の土手っ腹が地域に向かって解放されていた。垣根の間から垣間見てどういう人がいるのか興味を持ち、「袖すりあうも他生の縁」がきっかけで少し話して、そのうち縁側から上がり込んだり、勝手口で話し込んだりする関係になっていく。
今や、そのような「縁作り」の機能が家からも道路からも地域からも失われ、人は「家の中の個室」と「会社の中の個室」の間を行き来する存在になりつつある。』
【密室(価値閉塞空間)の中に事件の種が蒔かれる】
完全な親などどこにもいませんから、家庭という車のハンドルの切り間違いもあるでしょう。しかし、かつては少々ハンドルを切り間違えても地域という是正クッションがありました。地域に支えられて、家庭という車は親が少々ハンドルを切り間違えてもまっすぐに走ることができたのです。
しかし、今や車のハンドルから遊びがなくなり、ちょっと切り間違えると、そのままその方向に向かって車は暴走しクラッシュする―そういう状況になっています。
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この隔離された家族のことを、私は「あなたの子どもを加害者にしないために」(2005)の中で「家族カプセル」と呼びました。それは、次のような構造を持つ家庭です。
①夫婦が共依存関係にある
②子どもが生まれると、その養育を巡って相互のデメリットが増幅して認識されることにより共依存関係は強化される。
③共依存関係を維持するために、子どもを巻き込んだカープマンの三角形ドラマが繰り返される。
④そのドラマの中で絶えず子どもは「成長するな」という禁止令を受けるため、自我の発達が抑制される。
⑤自我形成できない子どもは、成長できない苦しみの中で、自閉、引きこもり、あるいは家庭内暴力などの症状(情緒的遮断行為)を見せ始める。
⑥親は情緒的遮断をなんとか解除しようと介入することにより対立は深刻になっていく(エスカレーション)。
⑦エスカレーションによるストレスが臨界を越え、何らかの形で感情爆発(事件)が起こる。
⑧背景に、家族と地域との関係の希薄化がある
例えば下記の事件がその事例と言えるでしょう。
・「カープマンの三角形のドラマ」と「母子カプセル」
母子カプセルが母子癒着の構造とすれば、家族カプセルは父母子癒着の構造と言えます。
→その様々な事例は「家族自我像」へ
・パワハラの4タイプ(3)-「職場カプセル」型上司のやり方
第5部-子どもに「何を」育てるのか?(自我形成編)
■6)家族が癒着する「家族カプセル」の構造
前項で見ましたように、母子カプセルの病理は父親も含めた家族の病理であることが分かります。ではなぜ、こんなにも家族の病理が蔓延してきたのでしょうか。
その一つに、家族が地域社会から切り離され、核家族として人工空間の中に隔離されてきた状況があります。隔離された「家族」という空間の中では、子に対する親の影響は圧倒的に大きくなります。なぜなら、子どもが自分の親を他の親と比較して相対化できなくなるし、何より社会性を育てる子どもの縦社会が消失するからです。
『かつての家(建物)には地域とつながる「縁側」という機能もあった。家の土手っ腹が地域に向かって解放されていた。垣根の間から垣間見てどういう人がいるのか興味を持ち、「袖すりあうも他生の縁」がきっかけで少し話して、そのうち縁側から上がり込んだり、勝手口で話し込んだりする関係になっていく。
今や、そのような「縁作り」の機能が家からも道路からも地域からも失われ、人は「家の中の個室」と「会社の中の個室」の間を行き来する存在になりつつある。』
【密室(価値閉塞空間)の中に事件の種が蒔かれる】
完全な親などどこにもいませんから、家庭という車のハンドルの切り間違いもあるでしょう。しかし、かつては少々ハンドルを切り間違えても地域という是正クッションがありました。地域に支えられて、家庭という車は親が少々ハンドルを切り間違えてもまっすぐに走ることができたのです。
しかし、今や車のハンドルから遊びがなくなり、ちょっと切り間違えると、そのままその方向に向かって車は暴走しクラッシュする―そういう状況になっています。
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この隔離された家族のことを、私は「あなたの子どもを加害者にしないために」(2005)の中で「家族カプセル」と呼びました。それは、次のような構造を持つ家庭です。
①夫婦が共依存関係にある
②子どもが生まれると、その養育を巡って相互のデメリットが増幅して認識されることにより共依存関係は強化される。
③共依存関係を維持するために、子どもを巻き込んだカープマンの三角形ドラマが繰り返される。
④そのドラマの中で絶えず子どもは「成長するな」という禁止令を受けるため、自我の発達が抑制される。
⑤自我形成できない子どもは、成長できない苦しみの中で、自閉、引きこもり、あるいは家庭内暴力などの症状(情緒的遮断行為)を見せ始める。
⑥親は情緒的遮断をなんとか解除しようと介入することにより対立は深刻になっていく(エスカレーション)。
⑦エスカレーションによるストレスが臨界を越え、何らかの形で感情爆発(事件)が起こる。
⑧背景に、家族と地域との関係の希薄化がある
例えば下記の事件がその事例と言えるでしょう。
・「カープマンの三角形のドラマ」と「母子カプセル」
母子カプセルが母子癒着の構造とすれば、家族カプセルは父母子癒着の構造と言えます。
→その様々な事例は「家族自我像」へ
・パワハラの4タイプ(3)-「職場カプセル」型上司のやり方