子育て心理学:第5部 7)「家族自我像」を描いてみよう
第5部-子どもに「何を」育てるのか?(自我形成編)
■6)「家族自我像」を描いてみよう
家族システムを一つの有機体と見なすと、それぞれの家族に固有の“顔”(コミュニケーション・パターン)があることがわかります。その「家族固有の顔」の事を、私は「あなたの子どもを加害者にしないために」の中で「家族自我」と呼びました。家族自我像は、次の4点でシンプルに家族のあり方を表示することができます。
★家族自我像の書き方
1.自律性:個人内の自我状態-PACの形と色
2.独立性:個人間の自我境界-人物の枠線の有無
3.関係性:個人間をつなぐ線
4.ストローク:家の顔色(背景色)
下図はモデルとしてわかりやすく想定した事例です。説明用ですので、実態はもっと様々であることをご承知おきください。また、4の背景色は適当です(^^;)。それぞれの思いや好みがあると思いますので自由にどうぞ。

★健全な家族-----------------------------------------

1.自律性
P・A・Cが対等(の大きさ)であり、それぞれが境界を持ち、それらの自我状態の間にエネルギーの循環もあって輝いています。Cが輝いていることは、気持ち(C)で行動できることを示しており、自分の背骨をきちんと持っていると言うことですから、周囲に流されることはありません。
2.独立性
自我境界がはっきりしており、自我侵食や癒着がありません。
3.関係性
夫婦連合と世代間境界ができています。
4.ストローク
顔色(家庭内のストローク)も暖かいですね。
★「三角形ドラマ」の家族-----------------------------------

1.自律性
Cが抑圧されて闇の中。自分の気持ちで行動できませんから背骨ができません。その代わりに父親はCPが肥大し、母親はNPが肥大し、その役割に従って生きています。
2.独立性
夫婦二人でようやくCPとNPが揃います。二人で一人ですから、自我境界のない共依存夫婦です。外からは厳父に優母という理想的な組み合わせに見えたりします。
3.関係性
役割を果たすことでしか存在価値を示せない夫婦にとって、子どもは恰好の道具です。子どもにPとAを育てない(子のPとAは点線のまま)ことが、父にとってはCPを、母にとってはNPを発揮できるチャンスを与え続けることになります。父がCPで叱り(迫害者)、そこに母が割って入り(救援者)、子(犠牲者)を救うというカープマンの三角形のドラマが延々とくり広げられることになります。
4.ストローク
この事例は、一見迫害者である父親が支配しているように見えますが、父親を迫害者の位置にとどめ置くところに母親の介入の巧みさがあり、実質支配しているのは母親という想定。しかし、それがわかりにくいので肥大したNPのピンクを薄めた色にしています(CPが支配している場合もあります)。
【例】土浦両親・姉殺害事件
★夫婦一枚岩価値押しつけ家族---------------------------

1.自律性
上記と同じく夫婦ともに背骨なく、社会が押しつけてくる価値観に染まって生きています。それぞれの実家が世間体にうるさいため、冷静な判断をするAの部分にまでCPが影響を与えていて、ゆがんだ判断になっています。CPがAを“汚染”している状態です。
2.独立性
夫婦は価値が癒着しており、互いが分身となっていて独立していません。世間的には仲良し夫婦に見えたりします。
3.関係性
この夫婦にとっては自分たちの価値観を押しつけること=子育てですから、何の疑いもなく兵隊を訓練するように一方的に子どもに押しつけていきます。
4.ストローク
外からは恵まれているように見えても、中は役割ロボット同士。気持ちの交流のない冷たい家庭ですので青にしています。
【例】水戸両親鉄アレイ殺害事件
★ハラッサー&ハラッシー家族----------------------------

1.自律性
人を道具にするハラッサーと人の受け皿になるハラッシーの組み合わせ夫婦です。夫のAはCPに汚染され、妻のAは抑圧的で従順なACに汚染されています。受け皿としてのACですから、上向きの皿形の半月にしてあります。
2.独立性
「You’re not OK」と相手を責める夫、「I’m not OK」と自分を責める妻の組み合わせで、互いを必要としている共依存夫婦です。CPは責めるACを必要とし、逆にPが未成熟な妻はCPを必要としますので相性はピタリなのです(--;)。外からは夫唱婦随に見えたりします。
3.関係性
夫は受け皿たる妻が逃げ出さないように子を利用します。時に子を洗脳して妻を最下層に置きます。
4.ストローク
上記が役割ロボットなら、こちらは道具の世界。ハラッサーである夫自らが自分を道具にして生きている全員道具の世界です。子どもから見ると灰色ですね。
(*尚、昨日から公判が始まった秋葉原無差別殺傷事件の加藤智大被告の家庭は、上図の父親と母親が入れ替わった家庭だと思います。)
【例】加藤智大容疑者の心の闇
★母子カプセル家族-------------------------------------

1.自律性
夫は背骨なき大きな赤ちゃんでPとAが育っていません。妻はNPがAを汚染するほどに肥大し、ストローク飢餓にあるため身体を黒くしてブラックホールであることを示しています。
2.独立性
夫は妻にとっての子宮である家を支える道具として位置づけられ、赤ちゃんである夫は自分の居場所(子宮)を職場などに求めます。外からは、夫は仕事、妻は家庭と役割分担しているように見えます。
3.関係性
夫は疎外され、妻は子に手をかけることによって子の手足を奪い、母子癒着の構造ができあがっていきます。子は母親に癒着されブッラクホールに同化していきます。
4.ストローク
子どもは母親が“世界”となります。しかし、その世界の中でストロークをもらうことはできませんし、外と接することもできません。現実感なき現実を生きることになりますので、母子カプセルの外は霞がかかったような半透明です。自我をもてない子ども自身は、自分が「透明」になったように感じます。
【例】神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)を起こした少年Aの家庭
★衝動吐き出し家族-------------------------------------

1.自律性
夫婦ともに抑圧した怒りのマグマを抱えています。親の受け皿となり続けているACの心のコップがパンパンにふくれあがった状態ですので、互いに怒りをはき出すネタを日常的に探しているようなもので喧嘩の日々。あるいは、表面的に喧嘩を避け、自分たちは怒りをコントロールできているつもりでも、日常のすべての言葉や動作に怒りが含まれてピリピリしています。いわば、お酒を飲んでいるつもりがお酒に飲まれているように、怒りに呑まれて生きているのです。それに気づかないほどに怒りがAを汚染しています。
2.独立性
互いが怒りをはき出す理由と相手を必要としています。そのため、怒るきっかけを与えてくれる相手を無意識に選ぶのです。いわばハラッサー同士の結婚となります。
3.関係性
怒りをはき出し合うための結婚ですから、どのようなきっかけもすべて怒りにつながります。しかし、それは自分の親に対する怒りの代償行為であるため終わることはありません。
4.ストローク
すべてのストロークに怒りが含まれていますから、背景を赤にしました。子どもにとっては戦場―崩壊基地です。
さて、あなたのご家庭は?
また、あなたの源家族はどうだったでしょうか…