「あきらめの壁をぶち破った人々」に見るプロファイリングマネジメント
2004/12/03(Fri) Category : 会社・改革
【意識改革をプロセス化できるのか?】-中尾回答1
■3、「あきらめの壁をぶち破った人々」に見るプロファイリングマネジメント
P2Mを私なりに解釈しますと、効率をアップするための一部のビジネスプロセスの改革のようなプロジェクトではなく、自社のミッションを実行に移すためにどのような仕組(あるべき姿)が良いのかを見据えた、組織構造の変革を目指すプログラム(複数のプロジェクトを束ねたもの)と考えます。
さて、この観点から『あきらめの壁をぶち破った人々』を見てみます。
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舞台である製薬企業(東京製薬)の大命題は、「医薬開発のスピードアップ」です。戦う相手は日本企業だけではなく巨大資本で勢力を伸ばしている外資、そして、法規制への対応を迫るFDA(米国食品医薬品局)をはじめとする各国の規制当局です。
研究、開発、製造、営業-それぞれの領域で対応しなければならない事は山ほどあり、いずれも金のかかることばかり。どういう優先順位でどこから手をつけていくのか、という問題は非常に「複雑な問題」です。
先ず、この4領域のどこに金をかけるかが、その企業の生きていく場と発展段階を表すことになります。東京製薬では、開発本部の建て直しは全社共有の大問題となっていました。
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そこへ竹下部長が乗り込み、問題点の分析を行います。
しかし、整理はついたもののあまりにも膨大で、どこから手をつけてよいのか分かりません。つまり、この時点では個別の課題の分析はできたものの、開発本部として「あるべき姿」がどのようなものかは見えていないわけです。
次に、島津(PM)と緒方(ITC)が相次いで投入されます。
そして3ヶ月に亘って開発業務の業務分析を行います。
つまり、現実の「ありのままの姿」を把握します。
この時に、「あるべき姿」を洞察したのは緒方です。
ベンダーの提示するソリューションの中から、「これだ!」と「文書管理システム」に飛びつきます。これは、医薬全般の情報化を進めてきた緒方だからこそ、幾つかあるソリューションの中から選択することができたわけです。
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その後、島津も、その導入によって次の変化に向かうことが分かります。
① 対立していた組織(研究 vs 開発)の連携
② しかも、研究主導から開発主導への移行
③ PL権限の確立(研究所長、研究所のPL、本社のライン長の権限を越える)
つまり、ライン型組織からプロジェクト型組織へ、プロダクトアウトからマーケットインへと「仕組」と「意識」を大きく変える礎となるシステムであることが分かり、島津は「戦略の具現者」となる覚悟を決めます。なぜなら、研究優位のこの会社にあっては、各研究所及びそれを統括する研究本部の猛反発が予想されるからです。
つまり、このプロジェクトの本質は単なる一領域のBPRではなく、複数の本部にまたがって伝統を覆す「医薬開発体制の変革プロジェクト」になったわけです。
次に、医薬に強いITベンダーも交えて、一般社員には「なぜそのシステムを導入するのか」ということを"納得"させるための様々なセッション(危機感と希望を与えるプレゼン、アンケート、ヒアリング、業務分析、ワークショップ、統計解析等々)を行い、経営層には「システム作り」「ルール作り」「体制作り」の3点セットでシナリオを提示します。
以上の部分―本では『第0次プロジェクト』と読んでいるのが、「プロファイリングマネジメント」の部分です。
■3、「あきらめの壁をぶち破った人々」に見るプロファイリングマネジメント
P2Mを私なりに解釈しますと、効率をアップするための一部のビジネスプロセスの改革のようなプロジェクトではなく、自社のミッションを実行に移すためにどのような仕組(あるべき姿)が良いのかを見据えた、組織構造の変革を目指すプログラム(複数のプロジェクトを束ねたもの)と考えます。
さて、この観点から『あきらめの壁をぶち破った人々』を見てみます。
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舞台である製薬企業(東京製薬)の大命題は、「医薬開発のスピードアップ」です。戦う相手は日本企業だけではなく巨大資本で勢力を伸ばしている外資、そして、法規制への対応を迫るFDA(米国食品医薬品局)をはじめとする各国の規制当局です。
研究、開発、製造、営業-それぞれの領域で対応しなければならない事は山ほどあり、いずれも金のかかることばかり。どういう優先順位でどこから手をつけていくのか、という問題は非常に「複雑な問題」です。
先ず、この4領域のどこに金をかけるかが、その企業の生きていく場と発展段階を表すことになります。東京製薬では、開発本部の建て直しは全社共有の大問題となっていました。
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そこへ竹下部長が乗り込み、問題点の分析を行います。
しかし、整理はついたもののあまりにも膨大で、どこから手をつけてよいのか分かりません。つまり、この時点では個別の課題の分析はできたものの、開発本部として「あるべき姿」がどのようなものかは見えていないわけです。
次に、島津(PM)と緒方(ITC)が相次いで投入されます。
そして3ヶ月に亘って開発業務の業務分析を行います。
つまり、現実の「ありのままの姿」を把握します。
この時に、「あるべき姿」を洞察したのは緒方です。
ベンダーの提示するソリューションの中から、「これだ!」と「文書管理システム」に飛びつきます。これは、医薬全般の情報化を進めてきた緒方だからこそ、幾つかあるソリューションの中から選択することができたわけです。
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その後、島津も、その導入によって次の変化に向かうことが分かります。
① 対立していた組織(研究 vs 開発)の連携
② しかも、研究主導から開発主導への移行
③ PL権限の確立(研究所長、研究所のPL、本社のライン長の権限を越える)
つまり、ライン型組織からプロジェクト型組織へ、プロダクトアウトからマーケットインへと「仕組」と「意識」を大きく変える礎となるシステムであることが分かり、島津は「戦略の具現者」となる覚悟を決めます。なぜなら、研究優位のこの会社にあっては、各研究所及びそれを統括する研究本部の猛反発が予想されるからです。
つまり、このプロジェクトの本質は単なる一領域のBPRではなく、複数の本部にまたがって伝統を覆す「医薬開発体制の変革プロジェクト」になったわけです。
次に、医薬に強いITベンダーも交えて、一般社員には「なぜそのシステムを導入するのか」ということを"納得"させるための様々なセッション(危機感と希望を与えるプレゼン、アンケート、ヒアリング、業務分析、ワークショップ、統計解析等々)を行い、経営層には「システム作り」「ルール作り」「体制作り」の3点セットでシナリオを提示します。
以上の部分―本では『第0次プロジェクト』と読んでいるのが、「プロファイリングマネジメント」の部分です。