P2Mのケーススタディとなる「あきらめの壁をぶち破った人々」
2004/12/04(Sat) Category : 会社・改革
【意識改革をプロセス化できるのか?】-中尾回答2
■4、P2Mのケーススタディとなる「あきらめの壁をぶち破った人々」
そして、『FTPプロジェクト』を遂行する過程(プロセス)そのものが、取りも直さず意識改革の過程となります。この議論と試行錯誤の過程において、「ありのままの姿」と「あるべき姿」のギャップを認識し、メンバーにも徐々にあるべき姿が「可視化」されてきます。
そして、カットオーバー半年前に島津が力を入れたのは、意識改革のための布石打ちです。それが、メルマガなどによる啓蒙活動であり、ビジュアルなプレゼンであり、マニュアルの作成です。ビジョン(イメージ)を共有させ、同時にそのビジョンに向かうことの意義を「説明」しているわけです。これを徹底して、絨毯爆撃のような形で全国行脚しています。
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最後には、建て直しのおまけ(と言っても最重要部分)までつきますが、こうしてみると、『あきらめの壁をぶち破った人々』は、「仕組みづくり」「ひとづくり=教育」「企業づくり」というP2Mのエッセンスを実現している好事例であると思われます。
『プロローグ―風土改善』とし、『エピローグ―組織改革』とつけたのには意味があります。風土改革は目的にはならないよ、真っ当な組織に変わると結果として風土も変わるんだよ、というメッセージです。ですから、エピローグの中に『風土が変わり始めた』という節があります。)
つまり、仕組みを作る過程で人づくりを行い、そして新たな風土で企業自体が変わり始めたわけです。
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WEBで副読本『P2Mによる企業イノベーション』をちらと拝見させていただきましたが、その中にカルロス・ゴーン氏の言葉として、
「経営者のやるべきことのなかで最も重要なことは、従業員のやる気を起こさせることだ。」(カルロス・ゴーン経営を語る/日本経済新聞社)とありました。
そして、リーダーシップの中身として、なすべきことを次のように書いてありました。
①なぜ変革すべきなのか、我々はどこに向かっていこうとしているのかという変革ビジョンを明確にする。
②変革ビジョンを実現するためのシナリオを描き、どのようなプロジェクトを優先して実施すべきであるのかという変革シナリオを明確にする。
③複数のプロジェクトを企業変革というひとつの目的のもとに効果的に統合していく運営体制を構築する。
④企業の変革に影響を受ける従業員などのステークホルダーの変革への意欲を引きだし、コミットメントを確立する。
実に、これらのことを『あきらめの壁をぶち破った人々』では、全て実施していることが分かります。
なお、③については、そのような体制を持っている企業は、大企業においても極めて稀だと思います。島津も、「環境の変化をウォッチし、その変化に合わせて仕組みを変えていく機能」を組織にビルトインしたいと考え続けていました。そして、将来的にはCIOにつながる全社組織を作る事を踏まえた上で、第一歩として『IT戦略G』を設置します。
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ところで、この流れは、システム部隊のアウトソーシング化という大命題が、『FTPプロジェクト』というきっかけを得て具体化に向かったわけです。
同様に、組織横断的な文書管理システムの導入は、全社のSOPを統一的に扱うことのできるセクションが必要だとの認識を全員に与えました。それまでも"理念的に必要"性は言われ続けていたのですが、そういうセクションを作ろうという動きにはなりませんでした。それが、"ないと困る"現実問題として顕在化したわけです。
ここで思うことは、人は理念や理屈では動かないということです。
人が動くのは、肌身に感じて困った時です。
そして、その困る状況を作り出すのは、新たに立ち現れてくる現実(この場合、文書管理システム)です。
つまり、「あるべき姿」の一部が具体化されると他の「ありのままの姿」の部分も困った状況に陥り、皆が困ったタイミングで次の組織改革を行うとやりやすくなり、かくして組織改革が連鎖する、というのが私の考えです。
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また、一部を具体化するだけでも3年ほどはかかります。
日常を繰り返す中で人間の意識が変化するには相応の時間の経過が必要だからです。
組織変革の本質が意識改革にあるのであれば、仕組みの変化を急いだところで人の意識が付いてこないとすれば、何の意味もありません。
組織の発展段階を見ながら手を打つ必要があると思われます。
一方、3年あれば技術は進化します。
となると、最低でも3年を一つの単位と考えても良いのではないかと思っております。
(ありがとうございました)
■4、P2Mのケーススタディとなる「あきらめの壁をぶち破った人々」
そして、『FTPプロジェクト』を遂行する過程(プロセス)そのものが、取りも直さず意識改革の過程となります。この議論と試行錯誤の過程において、「ありのままの姿」と「あるべき姿」のギャップを認識し、メンバーにも徐々にあるべき姿が「可視化」されてきます。
そして、カットオーバー半年前に島津が力を入れたのは、意識改革のための布石打ちです。それが、メルマガなどによる啓蒙活動であり、ビジュアルなプレゼンであり、マニュアルの作成です。ビジョン(イメージ)を共有させ、同時にそのビジョンに向かうことの意義を「説明」しているわけです。これを徹底して、絨毯爆撃のような形で全国行脚しています。
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最後には、建て直しのおまけ(と言っても最重要部分)までつきますが、こうしてみると、『あきらめの壁をぶち破った人々』は、「仕組みづくり」「ひとづくり=教育」「企業づくり」というP2Mのエッセンスを実現している好事例であると思われます。
『プロローグ―風土改善』とし、『エピローグ―組織改革』とつけたのには意味があります。風土改革は目的にはならないよ、真っ当な組織に変わると結果として風土も変わるんだよ、というメッセージです。ですから、エピローグの中に『風土が変わり始めた』という節があります。)
つまり、仕組みを作る過程で人づくりを行い、そして新たな風土で企業自体が変わり始めたわけです。
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WEBで副読本『P2Mによる企業イノベーション』をちらと拝見させていただきましたが、その中にカルロス・ゴーン氏の言葉として、
「経営者のやるべきことのなかで最も重要なことは、従業員のやる気を起こさせることだ。」(カルロス・ゴーン経営を語る/日本経済新聞社)とありました。
そして、リーダーシップの中身として、なすべきことを次のように書いてありました。
①なぜ変革すべきなのか、我々はどこに向かっていこうとしているのかという変革ビジョンを明確にする。
②変革ビジョンを実現するためのシナリオを描き、どのようなプロジェクトを優先して実施すべきであるのかという変革シナリオを明確にする。
③複数のプロジェクトを企業変革というひとつの目的のもとに効果的に統合していく運営体制を構築する。
④企業の変革に影響を受ける従業員などのステークホルダーの変革への意欲を引きだし、コミットメントを確立する。
実に、これらのことを『あきらめの壁をぶち破った人々』では、全て実施していることが分かります。
なお、③については、そのような体制を持っている企業は、大企業においても極めて稀だと思います。島津も、「環境の変化をウォッチし、その変化に合わせて仕組みを変えていく機能」を組織にビルトインしたいと考え続けていました。そして、将来的にはCIOにつながる全社組織を作る事を踏まえた上で、第一歩として『IT戦略G』を設置します。
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ところで、この流れは、システム部隊のアウトソーシング化という大命題が、『FTPプロジェクト』というきっかけを得て具体化に向かったわけです。
同様に、組織横断的な文書管理システムの導入は、全社のSOPを統一的に扱うことのできるセクションが必要だとの認識を全員に与えました。それまでも"理念的に必要"性は言われ続けていたのですが、そういうセクションを作ろうという動きにはなりませんでした。それが、"ないと困る"現実問題として顕在化したわけです。
ここで思うことは、人は理念や理屈では動かないということです。
人が動くのは、肌身に感じて困った時です。
そして、その困る状況を作り出すのは、新たに立ち現れてくる現実(この場合、文書管理システム)です。
つまり、「あるべき姿」の一部が具体化されると他の「ありのままの姿」の部分も困った状況に陥り、皆が困ったタイミングで次の組織改革を行うとやりやすくなり、かくして組織改革が連鎖する、というのが私の考えです。
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また、一部を具体化するだけでも3年ほどはかかります。
日常を繰り返す中で人間の意識が変化するには相応の時間の経過が必要だからです。
組織変革の本質が意識改革にあるのであれば、仕組みの変化を急いだところで人の意識が付いてこないとすれば、何の意味もありません。
組織の発展段階を見ながら手を打つ必要があると思われます。
一方、3年あれば技術は進化します。
となると、最低でも3年を一つの単位と考えても良いのではないかと思っております。
(ありがとうございました)