精霊に守られた人―水木しげる伝
2010/08/05(Thu) Category : 人物
「ゲゲゲの女房」から朝が始まる感じだ。
さて、番組は漫画家となって以降の水木しげるが登場するが、「マンガ水木しげる伝」を読んで、水木氏は大いなる役目を持った人なのだなと思った。

印象に残ったのは次のような所。
<上:戦前編>
---------------------------------------------
頭の中で自問自答する癖があって4歳までしゃべれず、少々腐ったものでも食べたので、ついたあだ名はズイタ(何でも食べるあさましい者)。万物は食べられると思っていて、国旗の先についていた金の玉の金箔をすべてかじりとって食べた話し―冒頭部分から引き込まれていく。
とある時昆虫採集に行った山で、彼は小人に出逢う。実際彼は出逢ったんだろうなぁと思う。小学生の頃、夢中で読んだ「だれも知らない小さな国
」(佐藤さとる)を思い出した。自分がその山を歩いているような極めてリアルな臨場感があって、コロボックルに逢いたいと思ったものだ。
のんのんばぁから豊かなものをたくさんもらう一方で、今ならば目くじらものの過激な戦争ごっこに明け暮れる日々。子供の遊びは社会を現す鏡だなぁとつくづく思う。精霊の世界と醜悪なる戦争の世界が同居していた時代だ。
<中:戦中編>
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一兵卒が体験した最前線。いかに戦争というものが馬鹿馬鹿しいか、無駄死にか、無策か、がよ~くわかる。このような中で死ぬのは無念以外の何ものでもない!この漫画を読めば、戦争に幻想を抱くものはいなくなるだろう。
水木しげるの生命力は凄い。ズイタとしての肉体力も凄いが、襲撃の中ただひとり助かり、その後の空襲で左腕を失うも助かり、マラリアにたびたび襲われるも助かる。何度死んでいてもおかしくない。運で助かるレベルではない。神に守られている―私は、そう感じた。彼は、この漫画を描くために生かされたのだろうと思った。
以前、この人は体験を語り伝えるために生かされたのだと感じた人がいた。その方が生きているのも奇蹟としか言いようがなかった。
【2.26事件生き証人の語った戦争】
水木氏の左腕にはウジが湧き、やがて自然治癒していくのだが、その傷跡から『赤ん坊の匂い』がするという。『生命が底の方からわき上がってくる匂い』『それは天の香りだった』という。その匂いが、生きて内地に帰られるかもしれないという希望を紡いだ。凄いね…。
そして思った。
赤ちゃんというのは、人類にとっての“希望”なんだと。
<下:戦後編>
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ドラマ「ゲゲゲの女房」で描かれている時代。あのつげ義春が、食べられなくなって水木しげるの手伝いをしていたとは知らなかった。あの白土三平はああいう感じの人だったのね(^^)。
『たくさんかくことによって、よく大工さんが設計図からだんだん家ができあがってくるのを「見えてきた」というが…そのように“妖怪とは何か?”といった奇妙な問いが…なんだか“見えてくる”ような気がするのだった。ぼくはそれを“妖怪をタイホ”すると称し意味もなく?やたらと形にして増やしていくのが楽しみだった…』―この見えないものを形に表すときの“タイホ”という使い方の感覚が私と通じているようで嬉しかった。
私の場合、本人が知らずにやっている“ゲーム”を白日の下に暴くとき“タイホ”という。ゲームは、現行犯タイホでなければ暴けないからね。ゲームさせているのは、不安かIPか脚本だ。タイホされた瞬間に“正気”に戻るのは、それらがぶっとぶからだろう。不安やIPは本来それくらいのちっぽけなものなのだが、取り憑かれてしまうと本当の犯罪にまで至ってしまう。警察に逮捕される前に、カウンセラーなどにタイホされるようになるといいね。
もう一つよくあるのが、チャイルド(IC)が本人を“連行”してくるパターン。本人は、なぜ電話をかけたのか定かにわかっていなかったりする。けれど、話を聴いている内に、あぁチャイルドがかけさせたんだなぁとわかる。チャイルドは、自分ではどうにもならないから、と私の前まで本人を連れてきているのだ。私には、本人の手を引いて横で立っているチャイルドの姿が見える気がする。それがわかったとき、本人を操っている不安やIPを“タイホ”するのだ。
私もこのような日々を送っているので、水木氏の見えないものに導かれるような旅行や交流が面白かった。取り憑かれたりして大変なことも(^^;)。彼は「南方病」と言いつつ何度も南方に足を運んでいるが、古代出雲国の滅亡の経緯を描くようにと王が夢枕に立ったそうだから、縄文系なのかもしれないね。ということは、龍神様が守っていたのでしょうか…。
★巻末のインタビューも面白かった
【幸せ】----------------------------------
生まれてこの方睡眠時間9~10時間。恐らく彼は、寝ている間にあちらの世界で何かやってるんだろうなぁ、と思った。現実界がマンガに見えたのも無理はない。水木氏は、「胡蝶の夢」をやっていたのかもしれない。
兄弟は遅刻するのが怖いので朝飯食わずに学校に行くが、彼はおもむろに起き出して二人が残していったご飯も平らげて二時限目から登校した。だから、“習っていない”算数はいつも0点。「朝は寝床でグーグーグー」のゲゲゲの歌は、ご本人のことだったのね~(今朝の「ゲゲゲの女房」で、このエピソードが出ていましたね~^^)。
それが軍隊に入って毎日殴られても、その癖は直らなかったのだから筋金入り。ある種の「鈍感力」(タフさ)は人間ばなれしていると思う。
『寝たいときに寝て、食いたいときには起きて食う。これが幸福の基本形ですね』―水木氏が言うと、説得力おおありで、その通りと思った。
【死】----------------------------------
のんのんばぁに出逢った5歳から「死」に興味を持つようになった水木氏。
死んだらどうなるのかを知りたくて、弟を海に落とそうとした―驚いた。
おりしも彼の住んでいた港町には女郎屋があり、1週間に1~2人も自殺者が出た。その水死体を毎週見に行っていたという。死が日常にあった。
人生脚本ができる5年生の頃にのんのんばぁが亡くなっているから、水木氏にとってのんのんばぁの存在はとても大きかっただろう。見えない世界への水先案内人だった。
年表によれば、戦時色が濃くなっていく18歳の頃には、死への恐怖からゲーテに傾倒。聖書、ニーチェ、ショーペンハウエルをへて、哲学では間に合わなくなり、「大虚図説」「死体写真集」「ムンク画集」などの奇書ばかり眺めていたようだ。
5歳の頃に地獄絵図を眺め続けた頃から今に至るまで、水木氏は「死」と向き合い続けている。
「死の向こうにはいったい何があるのか?」
その興味が、水木氏の創作活動の原動力だった。
でも、既に十分向こうの世界と通じているように思うのだけれど。
完全版水木しげる伝 文庫 全3巻 完結セット (講談社漫画文庫)
さて、番組は漫画家となって以降の水木しげるが登場するが、「マンガ水木しげる伝」を読んで、水木氏は大いなる役目を持った人なのだなと思った。

印象に残ったのは次のような所。
<上:戦前編>
頭の中で自問自答する癖があって4歳までしゃべれず、少々腐ったものでも食べたので、ついたあだ名はズイタ(何でも食べるあさましい者)。万物は食べられると思っていて、国旗の先についていた金の玉の金箔をすべてかじりとって食べた話し―冒頭部分から引き込まれていく。
とある時昆虫採集に行った山で、彼は小人に出逢う。実際彼は出逢ったんだろうなぁと思う。小学生の頃、夢中で読んだ「だれも知らない小さな国
のんのんばぁから豊かなものをたくさんもらう一方で、今ならば目くじらものの過激な戦争ごっこに明け暮れる日々。子供の遊びは社会を現す鏡だなぁとつくづく思う。精霊の世界と醜悪なる戦争の世界が同居していた時代だ。
<中:戦中編>
一兵卒が体験した最前線。いかに戦争というものが馬鹿馬鹿しいか、無駄死にか、無策か、がよ~くわかる。このような中で死ぬのは無念以外の何ものでもない!この漫画を読めば、戦争に幻想を抱くものはいなくなるだろう。
水木しげるの生命力は凄い。ズイタとしての肉体力も凄いが、襲撃の中ただひとり助かり、その後の空襲で左腕を失うも助かり、マラリアにたびたび襲われるも助かる。何度死んでいてもおかしくない。運で助かるレベルではない。神に守られている―私は、そう感じた。彼は、この漫画を描くために生かされたのだろうと思った。
以前、この人は体験を語り伝えるために生かされたのだと感じた人がいた。その方が生きているのも奇蹟としか言いようがなかった。
【2.26事件生き証人の語った戦争】
水木氏の左腕にはウジが湧き、やがて自然治癒していくのだが、その傷跡から『赤ん坊の匂い』がするという。『生命が底の方からわき上がってくる匂い』『それは天の香りだった』という。その匂いが、生きて内地に帰られるかもしれないという希望を紡いだ。凄いね…。
そして思った。
赤ちゃんというのは、人類にとっての“希望”なんだと。
<下:戦後編>
ドラマ「ゲゲゲの女房」で描かれている時代。あのつげ義春が、食べられなくなって水木しげるの手伝いをしていたとは知らなかった。あの白土三平はああいう感じの人だったのね(^^)。
『たくさんかくことによって、よく大工さんが設計図からだんだん家ができあがってくるのを「見えてきた」というが…そのように“妖怪とは何か?”といった奇妙な問いが…なんだか“見えてくる”ような気がするのだった。ぼくはそれを“妖怪をタイホ”すると称し意味もなく?やたらと形にして増やしていくのが楽しみだった…』―この見えないものを形に表すときの“タイホ”という使い方の感覚が私と通じているようで嬉しかった。
私の場合、本人が知らずにやっている“ゲーム”を白日の下に暴くとき“タイホ”という。ゲームは、現行犯タイホでなければ暴けないからね。ゲームさせているのは、不安かIPか脚本だ。タイホされた瞬間に“正気”に戻るのは、それらがぶっとぶからだろう。不安やIPは本来それくらいのちっぽけなものなのだが、取り憑かれてしまうと本当の犯罪にまで至ってしまう。警察に逮捕される前に、カウンセラーなどにタイホされるようになるといいね。
もう一つよくあるのが、チャイルド(IC)が本人を“連行”してくるパターン。本人は、なぜ電話をかけたのか定かにわかっていなかったりする。けれど、話を聴いている内に、あぁチャイルドがかけさせたんだなぁとわかる。チャイルドは、自分ではどうにもならないから、と私の前まで本人を連れてきているのだ。私には、本人の手を引いて横で立っているチャイルドの姿が見える気がする。それがわかったとき、本人を操っている不安やIPを“タイホ”するのだ。
私もこのような日々を送っているので、水木氏の見えないものに導かれるような旅行や交流が面白かった。取り憑かれたりして大変なことも(^^;)。彼は「南方病」と言いつつ何度も南方に足を運んでいるが、古代出雲国の滅亡の経緯を描くようにと王が夢枕に立ったそうだから、縄文系なのかもしれないね。ということは、龍神様が守っていたのでしょうか…。
★巻末のインタビューも面白かった
【幸せ】----------------------------------
生まれてこの方睡眠時間9~10時間。恐らく彼は、寝ている間にあちらの世界で何かやってるんだろうなぁ、と思った。現実界がマンガに見えたのも無理はない。水木氏は、「胡蝶の夢」をやっていたのかもしれない。
兄弟は遅刻するのが怖いので朝飯食わずに学校に行くが、彼はおもむろに起き出して二人が残していったご飯も平らげて二時限目から登校した。だから、“習っていない”算数はいつも0点。「朝は寝床でグーグーグー」のゲゲゲの歌は、ご本人のことだったのね~(今朝の「ゲゲゲの女房」で、このエピソードが出ていましたね~^^)。
それが軍隊に入って毎日殴られても、その癖は直らなかったのだから筋金入り。ある種の「鈍感力」(タフさ)は人間ばなれしていると思う。
『寝たいときに寝て、食いたいときには起きて食う。これが幸福の基本形ですね』―水木氏が言うと、説得力おおありで、その通りと思った。
【死】----------------------------------
のんのんばぁに出逢った5歳から「死」に興味を持つようになった水木氏。
死んだらどうなるのかを知りたくて、弟を海に落とそうとした―驚いた。
おりしも彼の住んでいた港町には女郎屋があり、1週間に1~2人も自殺者が出た。その水死体を毎週見に行っていたという。死が日常にあった。
人生脚本ができる5年生の頃にのんのんばぁが亡くなっているから、水木氏にとってのんのんばぁの存在はとても大きかっただろう。見えない世界への水先案内人だった。
年表によれば、戦時色が濃くなっていく18歳の頃には、死への恐怖からゲーテに傾倒。聖書、ニーチェ、ショーペンハウエルをへて、哲学では間に合わなくなり、「大虚図説」「死体写真集」「ムンク画集」などの奇書ばかり眺めていたようだ。
5歳の頃に地獄絵図を眺め続けた頃から今に至るまで、水木氏は「死」と向き合い続けている。
「死の向こうにはいったい何があるのか?」
その興味が、水木氏の創作活動の原動力だった。
でも、既に十分向こうの世界と通じているように思うのだけれど。
完全版水木しげる伝 文庫 全3巻 完結セット (講談社漫画文庫)