「東京に暮す(1928-36)」―(2)キャサリン・サンソムの日本人観察
2010/11/12(Fri) Category : 見方・考え方・価値観-パラダイム
【「東京に暮す(1928-36)」―(1)対象に向き合う姿勢】の続き
・ごく一部ですが、これからの社会が向かったらいいなぁと思う姿を示す部分をピックアップしてみました。
<自然と美>---------------------------------------------------------
●日本のインスピレーションの元―富士山
『富士山は不思議なくらい軽やかで、まるで天から垂れ下がっているよう』
『富士山はむしろ夢であり、詩であり、インスピレーションです。久しぶりに見た瞬間、心臓が止まってしまいました。それほど美しいのです。富士山が日本人の想像力と美的感受性に強い影響を与えている理由がよくわかります』
●自然との調和
『なんと言っても日本人の最大の特徴は自然と交わり、自然を芸術的に味わうことです。』
『日本人は天候に関するあらゆることにとても敏感です。さらに、この自然の状態に敏感であることが美を感じる心と密接に結びついています。この点で日本人に勝る国民はいないでしょう』
<自然と仕事>-------------------------------------------------------
●生態系の一員としての農民
『農民の仕事はとても大変なのに彼らは自然と格闘しているようには見えません。彼らはむしろ、成長しては滅びることを繰り返して永遠に再生し続ける自然界の一員であり、そしてまたこの循環のあらゆる過程を美しいものとして味わうことができる優れた感受性を持っている人たちなのです』
●木に能力を発揮させる庭師
『木が好きな人なら必ず日本が好きになるはずです』
『木は、日本では、他の国々と同じように育つわけではありません。庭師が木を非常によくほめるあまり、木が何でもできるようになるのです。魔法をかけられて、見事に変身するのは天然の木々です』
『日本の庭師は、いわば、生徒を二、三の単純な型にはめ込むことでは満足せず、生徒一人ひとりの個性を考慮して、長所は伸ばし短所は改めて、その生徒にふさわしい健全な成長の機会を与えようとしている現代の教師のようなものです』
<生き方もアート>---------------------------------------------------
●流れ行く日本人の人生
『日本人には私たちにはない落ち着きがあります。人生が彼らの中や傍らを流れていきます。彼らは焦って人生を迎え入れたり、人生の舵を取るようなことはしません。流れが運んでくるものを受け取るだけです。流れてくるものが富や高い地位であっても、驚いたことに彼らは何気なく利用するだけです』
●運命は無力
『他の国民のように気取ることもないので、たとえ運が傾いたとしても私たちのようにショックを受けることはありません。高官や金持ちの質素な暮らしと、身分の低いものの暮らしは大して違いません。どちらも優雅で無欲です』
●感じることが糧
『日本人は生きていくのに必要な養分を自然から得ているといってもよいでしょう』
『日本人はじっと座って何時間も同じ景色を眺めていることがありますが、自然を見つめることで精神の大事な糧を得ているのです。自然に対するこのような姿勢が、心の落ち着きという日本人のおそらく最も素晴らしい性格の基礎にあるに違いありません』
●思考は無力
『穏やかな心からは精神の葛藤は生まれませんし、満足しきった日本人に対しては思考の鋭い槍も無力です』
<ゆとり>-----------------------------------------------------------
●ゆったり
『私たちは知らないうちに、私たちよりずっとゆったりしている日本人の影響を受けてしまいます。その証拠に、ものごとが思い通りに行かなくても、誤解されても、日本に到着した頃のようには気になりませんし、日本人には知らずと優しく話しかけるようになっています。その効果は大です』
●テンポ
『日本にいると私はよく何十年も昔の自分の子ども時代に戻ったような気になります。日本社会のテンポは私の子ども時代の田舎の生活のテンポより遅いからです。気候、習慣、住居、衣服のいずれもがテンポを遅くしています』
●おおらか
『その風呂には、恥ずかしげもなく裸の男女が気持ちよさそうに浸かっていました』
<バランス>--------------------------------------------------------
●労働と休息―緩急のメリハリ
『日本では男性ばかりでなく女性も田に出て忙しく働いていますし、西洋文明の影響でますます多くの人が時間に終われる生活をするようになったというのに、人々がとても大らかでゆったりしているように見えるのは実に不思議です』
『ところが、働く必要がないと日本人は何もしないでのんびりしています。通りに面した小さな店の中で店員が新聞を広げてこっくりしていたり、仲間といつ終わるとも知れないおしゃべりに夢中になっている姿をよく目にします。暑い時期には配達の小僧たちが自転車に寄りかかり、手で頭を支えて眠っています』
『日本人は巣箱に群がる蜜蜂のような旺盛なエネルギーを持っていると同時に、東洋人らしく全身の力を抜ききってしまうこともできます』
<お笑い民族?>-----------------------------------------------------
●陽気
『日本ではいろいろな紙テープを投げ合っているうちに、見送る側も見送られる側も別れの悲しみをしばし忘れてしまいます』
『日本では太平洋汽船の出発でさえ陽気で、英国の港を発つときのあの悲しさはありません』
●冗談が素直に喜ばれる素晴らしい国
『世界で最も難しい言語の一つと言われる日本語が上手にしゃべれないために、どうしてもいろいろな誤解が生じてしまいます。
ところが幸いにも一つ有効な解決策があります。どこへ行っても冗談は楽しいものですが、この陽気な国日本のように冗談が受ける国はないでしょう。しゃれでも飛ばそうものならたちまち家中に広まります。そのしゃれが繰り返され爆笑を誘うのが聞こえるほどです。家中が浮かれ騒ぐのです』
『日本は冗談がこのように素直に喜ばれる素晴らしい国です。大昔からある、誤解や失敗を種にした冗談は日本がふるさとかと思われます』
●笑いは生活の知恵
『辛ければ辛いほど逆に笑おうという驚くべき態度は、おそらく、神経を鎮め、大気の異常な重みが神経をいら立たせるのを少しでもやわらげようとする日本人の生活の知恵なのでしょう』
<調和>------------------------------------------------------------
●男女間
『日本が平和な農村国家であるために日本人の男女の間には不思議な調和が見られます。それは日本の文明から堅苦しい形式をすべて取り去ると後に残るのは偉大な素朴さだからです』
●タテマエ男尊女卑、ホンネ男女対等
『女性が法的にも慣習上も男性に従属しているのに不当に低く見られることがないのは、日本人がもともと優しくて陽気だからです』
『歩くときは夫より数メートル後をゆっくりと歩き、お茶屋に入れば下座に座ります。しかし、顔を見れば、彼女たちにも支配力があり、少なくとも夫と同等の地位にあることがすぐにわかります』
●階層間
『(淑女と百姓の女にも共通点があって)それが日本の魅力の一つなのです。淑女は自分が生まれてきた大地を忘れることがありませんし、百姓の女には長い歴史のある単一民族国家だけに見られる優しさがあります』
<平等>------------------------------------------------------------
『日本人は本当にこのような華やかなものが大好きです』
『イギリスでいうとフランスの高級デザイナーの最新作品に相当するような非常に美しくて大胆な着物を、田舎の女中の娘があかぎれの手で触っているのを見るのは面白いものです』
『みんなが何でも買えるわけではないにせよ、この商品は特定の人しか所有できないといった階級差別はありません』
<本質を見る>------------------------------------------------------
『偽者と本物を見分けることができる鋭い目と優しい心を持った日本人には、そんな嘘の肩書きなどほとんど意味がなく、ひどく滑稽に見えるようです』
『日本人が質のよいものを見つける能力はたいへんなもので、実に鮮やかです』
『ごく普通の女性の前で、日本人の有名な貴族で、美人で金持ちで素敵な格好をしている女性をほめたことがありました。すると相手の女性はすぐに「本当にあのお方の笑顔は素敵です」と答えました。それは非常に日本的なコメントでした。つまり、その女性の外見が立派であることは当然であり、性格がよいことが魅力だったのです』
<老若男女>--------------------------------------------------------
●日本の子ども
『確かに赤ん坊が生まれてきて一番幸せな国は日本です。日本人は子どもをとても大切にしますから、子どもを虐待したり、子どもに対して罪を犯すと言うことはめったにありません。子どもの数が多いので、子どもはあらゆることの中心になっています』
『不思議なことに、日本の子どもは甘やかされても駄目になりません』
『日本人は、私たちよりも静かで和やかな雰囲気の中でのんびり暮らしています。従って子どもも当然のことながら穏やかです』
『最近、外国人はクリスマスの直前に限り玩具は関税を払わずに持ち込んでよいと決めたのは、実に日本人らしいと思います。話が子どものこととなるとどんなに厳しい日本人の心もなごむのです』
●日本の女性
『日本の女性はまさに日本民族の母であります』
『女性が母のように優しく献身的であるということは日本社会のとって測り知れない貴重な財産であり、今日近代社会の必要に迫られて女性たちが家庭という狭い枠の外に出るようになったのはうれしいことです。』
『そのために子どもが犠牲になることはないと思います。日本ではいつでも子どもが第一ですから』
『温泉に、美しい体で動作も優雅な日本人女性と一緒に入ることは、最も素晴らしい体験の一つで、本当の贅沢といえます。日本人女性の動作はとても控えめでかつ優雅なので、入浴自体が一つの完成された技のようです』
『女性こそが魅力の源なのです。優美で優しい女性のいない日本などは海の底に沈んだ方がいいでしょう。日本とは呼べませんから』
●肝っ玉おばさん
『水に入る用意をしてこなかったおばさんたちは、着物を脱いで襦袢姿であるいはそれも脱いで、水の中を歩いています。この勇敢なおばさんたちは何かにひるむということがないのです』
●日本の老人
『日本の老人は、ほかの国の老人に比べて気品があります。素敵な老人に出会わない日はないといっていいくらいです』
『しかし、今の若い人たちが年をとったときもそうであるとは限りません。今日の老人は、現在よりもずっとのどかな時代、日本が西洋を意識し始めたとはいっても、まだ旧来の道を進むことができた時代に青年期を過ごしてきました。ところが、今や日本も近代国家の一員となり、社会のあらゆる階層で熾烈な競争が見られるようになりました』
<国の土台=家庭と地域>---------------------------------------------
●家庭が要
『家庭は複雑な人間関係の要であり、家族の間では何を言っても許されます。日本の家庭には協調心があります。それに家族全員がある程度責務を分担しているので、いつでも誰かが助けてくれるという融通性もあります』
●盆踊り
『二つの輪が揺れながら反対の方向に何時間も回り続ける盆踊りは、最も感動的な光景の一つと言えます。』
『それは心の琴線に触れる踊りで、人間と人間が生まれてきた自然との間には本質的に調和が存在することを思い出させてくれます』
★-------------------------------------------------------------------
私が外国人でこの本を読んだなら、
「日本人は、なんとまぁポテンシャルの高い民族だろう」と思うでしょう。
そして、そのポテンシャルの源泉は、人を育んでいる風土―自然の持つポテンシャルであることがわかります。
その風土を大切にするだけではなく、木村秋則さんのように自然のポテンシャルを高め活用しているのが人間であることもわかります。
このように、自然と人間が互いに感謝し、互いを高めあって循環し調和して生きているのです。母の幼き日の光景は桃源郷のようでしたが、そのような国が、つい“先ほど”までそこにあったのです。開発という名のつまらぬ破壊事業はやめて、取り戻しましょう、ポテンシャルを。
子どもが大事にされる国では、気品ある素敵な老人たちになる。
人生の始点と終点のモデルが、この国には明確に存在しています。
その途中は押して知るべし。
人生の初めの姿(子ども)と終わりの姿(老人)を見れば、いろんな人を見なくとも、政治や社会の細かいあり方を知らずとも、あぁこの国は幸せの国だ、と思えるでしょう。
どのような形であれば幸せに向かうことができるのか、それがこの本に示されています。多くの人に読んでほしい本です。


行き過ぎた振り子は戻ります。
龍馬が目指した「みんなが笑って暮らせる日本」
再び、「笑顔の国」を目指したいですね。
・「笑顔の国」から「怒りの国」へ
・ごく一部ですが、これからの社会が向かったらいいなぁと思う姿を示す部分をピックアップしてみました。
<自然と美>---------------------------------------------------------
●日本のインスピレーションの元―富士山
『富士山は不思議なくらい軽やかで、まるで天から垂れ下がっているよう』
『富士山はむしろ夢であり、詩であり、インスピレーションです。久しぶりに見た瞬間、心臓が止まってしまいました。それほど美しいのです。富士山が日本人の想像力と美的感受性に強い影響を与えている理由がよくわかります』
●自然との調和
『なんと言っても日本人の最大の特徴は自然と交わり、自然を芸術的に味わうことです。』
『日本人は天候に関するあらゆることにとても敏感です。さらに、この自然の状態に敏感であることが美を感じる心と密接に結びついています。この点で日本人に勝る国民はいないでしょう』
<自然と仕事>-------------------------------------------------------
●生態系の一員としての農民
『農民の仕事はとても大変なのに彼らは自然と格闘しているようには見えません。彼らはむしろ、成長しては滅びることを繰り返して永遠に再生し続ける自然界の一員であり、そしてまたこの循環のあらゆる過程を美しいものとして味わうことができる優れた感受性を持っている人たちなのです』
●木に能力を発揮させる庭師
『木が好きな人なら必ず日本が好きになるはずです』
『木は、日本では、他の国々と同じように育つわけではありません。庭師が木を非常によくほめるあまり、木が何でもできるようになるのです。魔法をかけられて、見事に変身するのは天然の木々です』
『日本の庭師は、いわば、生徒を二、三の単純な型にはめ込むことでは満足せず、生徒一人ひとりの個性を考慮して、長所は伸ばし短所は改めて、その生徒にふさわしい健全な成長の機会を与えようとしている現代の教師のようなものです』
<生き方もアート>---------------------------------------------------
●流れ行く日本人の人生
『日本人には私たちにはない落ち着きがあります。人生が彼らの中や傍らを流れていきます。彼らは焦って人生を迎え入れたり、人生の舵を取るようなことはしません。流れが運んでくるものを受け取るだけです。流れてくるものが富や高い地位であっても、驚いたことに彼らは何気なく利用するだけです』
●運命は無力
『他の国民のように気取ることもないので、たとえ運が傾いたとしても私たちのようにショックを受けることはありません。高官や金持ちの質素な暮らしと、身分の低いものの暮らしは大して違いません。どちらも優雅で無欲です』
●感じることが糧
『日本人は生きていくのに必要な養分を自然から得ているといってもよいでしょう』
『日本人はじっと座って何時間も同じ景色を眺めていることがありますが、自然を見つめることで精神の大事な糧を得ているのです。自然に対するこのような姿勢が、心の落ち着きという日本人のおそらく最も素晴らしい性格の基礎にあるに違いありません』
●思考は無力
『穏やかな心からは精神の葛藤は生まれませんし、満足しきった日本人に対しては思考の鋭い槍も無力です』
<ゆとり>-----------------------------------------------------------
●ゆったり
『私たちは知らないうちに、私たちよりずっとゆったりしている日本人の影響を受けてしまいます。その証拠に、ものごとが思い通りに行かなくても、誤解されても、日本に到着した頃のようには気になりませんし、日本人には知らずと優しく話しかけるようになっています。その効果は大です』
●テンポ
『日本にいると私はよく何十年も昔の自分の子ども時代に戻ったような気になります。日本社会のテンポは私の子ども時代の田舎の生活のテンポより遅いからです。気候、習慣、住居、衣服のいずれもがテンポを遅くしています』
●おおらか
『その風呂には、恥ずかしげもなく裸の男女が気持ちよさそうに浸かっていました』
<バランス>--------------------------------------------------------
●労働と休息―緩急のメリハリ
『日本では男性ばかりでなく女性も田に出て忙しく働いていますし、西洋文明の影響でますます多くの人が時間に終われる生活をするようになったというのに、人々がとても大らかでゆったりしているように見えるのは実に不思議です』
『ところが、働く必要がないと日本人は何もしないでのんびりしています。通りに面した小さな店の中で店員が新聞を広げてこっくりしていたり、仲間といつ終わるとも知れないおしゃべりに夢中になっている姿をよく目にします。暑い時期には配達の小僧たちが自転車に寄りかかり、手で頭を支えて眠っています』
『日本人は巣箱に群がる蜜蜂のような旺盛なエネルギーを持っていると同時に、東洋人らしく全身の力を抜ききってしまうこともできます』
<お笑い民族?>-----------------------------------------------------
●陽気
『日本ではいろいろな紙テープを投げ合っているうちに、見送る側も見送られる側も別れの悲しみをしばし忘れてしまいます』
『日本では太平洋汽船の出発でさえ陽気で、英国の港を発つときのあの悲しさはありません』
●冗談が素直に喜ばれる素晴らしい国
『世界で最も難しい言語の一つと言われる日本語が上手にしゃべれないために、どうしてもいろいろな誤解が生じてしまいます。
ところが幸いにも一つ有効な解決策があります。どこへ行っても冗談は楽しいものですが、この陽気な国日本のように冗談が受ける国はないでしょう。しゃれでも飛ばそうものならたちまち家中に広まります。そのしゃれが繰り返され爆笑を誘うのが聞こえるほどです。家中が浮かれ騒ぐのです』
『日本は冗談がこのように素直に喜ばれる素晴らしい国です。大昔からある、誤解や失敗を種にした冗談は日本がふるさとかと思われます』
●笑いは生活の知恵
『辛ければ辛いほど逆に笑おうという驚くべき態度は、おそらく、神経を鎮め、大気の異常な重みが神経をいら立たせるのを少しでもやわらげようとする日本人の生活の知恵なのでしょう』
<調和>------------------------------------------------------------
●男女間
『日本が平和な農村国家であるために日本人の男女の間には不思議な調和が見られます。それは日本の文明から堅苦しい形式をすべて取り去ると後に残るのは偉大な素朴さだからです』
●タテマエ男尊女卑、ホンネ男女対等
『女性が法的にも慣習上も男性に従属しているのに不当に低く見られることがないのは、日本人がもともと優しくて陽気だからです』
『歩くときは夫より数メートル後をゆっくりと歩き、お茶屋に入れば下座に座ります。しかし、顔を見れば、彼女たちにも支配力があり、少なくとも夫と同等の地位にあることがすぐにわかります』
●階層間
『(淑女と百姓の女にも共通点があって)それが日本の魅力の一つなのです。淑女は自分が生まれてきた大地を忘れることがありませんし、百姓の女には長い歴史のある単一民族国家だけに見られる優しさがあります』
<平等>------------------------------------------------------------
『日本人は本当にこのような華やかなものが大好きです』
『イギリスでいうとフランスの高級デザイナーの最新作品に相当するような非常に美しくて大胆な着物を、田舎の女中の娘があかぎれの手で触っているのを見るのは面白いものです』
『みんなが何でも買えるわけではないにせよ、この商品は特定の人しか所有できないといった階級差別はありません』
<本質を見る>------------------------------------------------------
『偽者と本物を見分けることができる鋭い目と優しい心を持った日本人には、そんな嘘の肩書きなどほとんど意味がなく、ひどく滑稽に見えるようです』
『日本人が質のよいものを見つける能力はたいへんなもので、実に鮮やかです』
『ごく普通の女性の前で、日本人の有名な貴族で、美人で金持ちで素敵な格好をしている女性をほめたことがありました。すると相手の女性はすぐに「本当にあのお方の笑顔は素敵です」と答えました。それは非常に日本的なコメントでした。つまり、その女性の外見が立派であることは当然であり、性格がよいことが魅力だったのです』
<老若男女>--------------------------------------------------------
●日本の子ども
『確かに赤ん坊が生まれてきて一番幸せな国は日本です。日本人は子どもをとても大切にしますから、子どもを虐待したり、子どもに対して罪を犯すと言うことはめったにありません。子どもの数が多いので、子どもはあらゆることの中心になっています』
『不思議なことに、日本の子どもは甘やかされても駄目になりません』
『日本人は、私たちよりも静かで和やかな雰囲気の中でのんびり暮らしています。従って子どもも当然のことながら穏やかです』
『最近、外国人はクリスマスの直前に限り玩具は関税を払わずに持ち込んでよいと決めたのは、実に日本人らしいと思います。話が子どものこととなるとどんなに厳しい日本人の心もなごむのです』
●日本の女性
『日本の女性はまさに日本民族の母であります』
『女性が母のように優しく献身的であるということは日本社会のとって測り知れない貴重な財産であり、今日近代社会の必要に迫られて女性たちが家庭という狭い枠の外に出るようになったのはうれしいことです。』
『そのために子どもが犠牲になることはないと思います。日本ではいつでも子どもが第一ですから』
『温泉に、美しい体で動作も優雅な日本人女性と一緒に入ることは、最も素晴らしい体験の一つで、本当の贅沢といえます。日本人女性の動作はとても控えめでかつ優雅なので、入浴自体が一つの完成された技のようです』
『女性こそが魅力の源なのです。優美で優しい女性のいない日本などは海の底に沈んだ方がいいでしょう。日本とは呼べませんから』
●肝っ玉おばさん
『水に入る用意をしてこなかったおばさんたちは、着物を脱いで襦袢姿であるいはそれも脱いで、水の中を歩いています。この勇敢なおばさんたちは何かにひるむということがないのです』
●日本の老人
『日本の老人は、ほかの国の老人に比べて気品があります。素敵な老人に出会わない日はないといっていいくらいです』
『しかし、今の若い人たちが年をとったときもそうであるとは限りません。今日の老人は、現在よりもずっとのどかな時代、日本が西洋を意識し始めたとはいっても、まだ旧来の道を進むことができた時代に青年期を過ごしてきました。ところが、今や日本も近代国家の一員となり、社会のあらゆる階層で熾烈な競争が見られるようになりました』
<国の土台=家庭と地域>---------------------------------------------
●家庭が要
『家庭は複雑な人間関係の要であり、家族の間では何を言っても許されます。日本の家庭には協調心があります。それに家族全員がある程度責務を分担しているので、いつでも誰かが助けてくれるという融通性もあります』
●盆踊り
『二つの輪が揺れながら反対の方向に何時間も回り続ける盆踊りは、最も感動的な光景の一つと言えます。』
『それは心の琴線に触れる踊りで、人間と人間が生まれてきた自然との間には本質的に調和が存在することを思い出させてくれます』
★-------------------------------------------------------------------
私が外国人でこの本を読んだなら、
「日本人は、なんとまぁポテンシャルの高い民族だろう」と思うでしょう。
そして、そのポテンシャルの源泉は、人を育んでいる風土―自然の持つポテンシャルであることがわかります。
その風土を大切にするだけではなく、木村秋則さんのように自然のポテンシャルを高め活用しているのが人間であることもわかります。
このように、自然と人間が互いに感謝し、互いを高めあって循環し調和して生きているのです。母の幼き日の光景は桃源郷のようでしたが、そのような国が、つい“先ほど”までそこにあったのです。開発という名のつまらぬ破壊事業はやめて、取り戻しましょう、ポテンシャルを。
子どもが大事にされる国では、気品ある素敵な老人たちになる。
人生の始点と終点のモデルが、この国には明確に存在しています。
その途中は押して知るべし。
人生の初めの姿(子ども)と終わりの姿(老人)を見れば、いろんな人を見なくとも、政治や社会の細かいあり方を知らずとも、あぁこの国は幸せの国だ、と思えるでしょう。
どのような形であれば幸せに向かうことができるのか、それがこの本に示されています。多くの人に読んでほしい本です。
行き過ぎた振り子は戻ります。
龍馬が目指した「みんなが笑って暮らせる日本」
再び、「笑顔の国」を目指したいですね。
・「笑顔の国」から「怒りの国」へ