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「エネルギーとエントロピーの経済学」(室田武)―2、水こそが地球の「絶対的富」

2011/04/17(Sun) Category : 地震・災害・脱原発
前項で紹介した室田武氏の「エネルギーとエントロピーの経済学―石油文明からの飛躍 (1979年) (東経選書)」の紹介の続きです。


★産油国アメリカが石油を輸入する理由-----------------------------

産油国アメリカが石油を輸入する理由はなんでしょう?
この不思議は、エネルギー収支という考え方を理解するとわかります。

自国のエネルギー収支は下記のように求めます。
エネルギー(e)の剰余生産率D=(e生産量-e投入量)/e投入量

原油の採掘や輸送などの投入量をエネルギー換算して、採掘された石油エネルギーが投入量の何倍の利益をもたらすかということですね。

石油を輸入する場合は次のように求めます。
エネルギー(e)の剰余生産率D=e輸入量/e投入量(売価のe換算)

すると、1974年当時
1バレルの石油エネルギー=160万kcal
1$の通貨価値=2.5万kcal
購入額1バレル=10$(25万kcal)

D=e輸入量/e投入量=160/25=6.4

つまり、輸入石油は購入額の6.4倍の価値があるということです。
一方、米国内で採掘した場合は6以下でしたから、6倍の価値しか生みません。つまり、買った方が儲けが大きいということになります。




★農家が「石油の缶詰」を作ることになった理由----------------------

上記を、当時の日本に当てはめてみましょう。
輸入した石油の剰余生産率D=6.4とします(米国と同じ設定)。

前項の記事で見た1974年の稲作のエネルギー収支を基にすれば、
日本の米のエネルギー剰余生産率=(1770-4707)/4707=-0.62

つまり、日本の水田は価値を生んでいないどころか、『米は石油の缶詰』といわれるほど石油漬けで、石油エネルギーを入れないと再生産できない構造におかれているのです。にもかかわらず、なぜその構造が維持されているのか。

それは、産油国アメリカでさえ買ったほうが安いという、中近東の剰余生産率の高さでした。エネルギー収支で見ると、苦もなくカバーできるのです。

それで石油浪費の文明が出来上がり、機械・肥料・農薬・燃料・電力・資材・建物など石油投下型の農業に転換させられ、5倍も投資することになり、その借金は農家に押し付けられました。

エネルギー的観点から見れば、農家は石油を買わされ、エネルギー収支大赤字の石油の缶詰を作っているわけです。農家が借金漬けになるはずですね…。




★石油が使い勝手がいい理由----------------------------------------

なぜ石油がそんなに使い勝手がいいのでしょう。
これも、熱力学第二法則(=エントロピー増大の法則)を基に見るとわかります。

すべての物事は、低エントロピーから高エントロピーへと変化します。
整頓された状態→乱雑な状態
きれいな状態→汚れた状態
有用な状態→使い途のない状態

これをエネルギー換算で見ますと、あらゆる仕事や現象は、「有用なエネルギー」が「使い途のないエネルギー」へと変化する過程でなされています。ここで、「有用な」というのは、いろんなものに変化し得る可能性が高いということです。

そこで、低エントロピーで有用性の高いエネルギーのことを「絶対的富」と呼んでいますが、石油や石炭は、きわめて低エントロピーの資源だったわけです。

だから、採掘してちょっと手を加えるだけでいろいろなことに活用できたんですね。石炭は蒸気機関という技術を得て、石油は内燃機関という技術を得て、いろいろなものを作り出しましたね。




★公害が起こった理由---------------------------------------------

『いろいろなものを作り出しました』→さて、ここです。
人間は、原材料から人間にとって価値のある製品を作り出します。
バラバラの原材料から秩序ある製品を組み上げるわけですから、いわば高エントロピーから低エントロピーのものを作り出しているわけで、そこに「価値」があるわけです。

しかし、熱力学第二法則に反するかのようなことがなぜできるのか?
それは生産工程に低エントロピー源を投入しているからですね。
それが、工業に不可欠の水や石油です。

そして、低エントロピーの製品を作り出すと同時に、高エントロピーの廃物・廃熱を捨てているわけです。近経もマル経も、このエントロピー増大の法則を無視したため、公害や産廃の問題が噴出しました。

簡単に言うと、宇宙の法則(熱力学第二法則)を無視して、人間が生産活動を行ったので地球が汚れたのです。

<エントロピー増大の法則の事例>
ナポリを見たら死ぬ
ショック!太平洋にゴミ大陸





★原発が「石油の缶詰」である理由---------------------------------

では、1gのウラン235から石油2t分のエネルギー(石油の200万倍のエネルギー)が得られると言われる原発は夢のエネルギー?

1975年の米国エネルギー分析研究所(テネシー)の分析によれば、まず30kgのウラン235を作るのに約3000tの石油が必要です。
次に100万キロワットの原発を作るのに400億キロワットのエネルギーが必要です。原発の建設にも、燃料の抽出にも桁違いに莫大なエネルギーがかかる―つまり、原発もまた「石油の缶詰」なのです。

その上、原発の点検・修理、放射性廃棄物の処理・保管、廃棄された原発の遮蔽に要するコストがどれほどになるのかは、全く想定されていません。

それだけのコストをかけて原発の耐用年数は30年と計算されているそうですから、半減期24000年のプルトニウム(死の灰)は、そもそも放置することを前提にしているといえるでしょう。

さらに、スリーマイル島やチェルノブイリ、フクシマで失われた命、奪われた人生、取り返しのつかない地表、汚染された大気や海洋、失われた信用、滞る経済、将来にわたる被爆者対応―これらの損失を一体どのように計るのでしょうか?




★水こそが地球の「絶対的富」-------------------------------------

さて、地球は水の惑星。
水というエントロピー吸収物質があるので生命活動ができ、その一部としての工業も発達しました。

石油は低エントロピー源と書きましたが、原油から1リットルの石油を作るのに、10リットルの水が必要です。つまり、水は石油の10倍のポテンシャルを持つ、地球で最高の「絶対的富」(低エントロピー物質)なのです。

その水を豊富に持つ地球は、「宇宙の宝」
機能的な淡水及び世界一生態豊かな海岸線を持つ日本は、「地球の宝」

(*日本はロシア、オーストラリアに次ぐ世界第三位の海岸線の長さを持ちます。が、ロシアのかなりの部分は北極海に面し、オーストラリアは砂漠と接しています。つまり、亜熱帯~亜寒帯に渡り、暖流と寒流に接する豊かな海岸線において日本は世界一でしょう)




★原発が突きつけた水の本当の価値---------------------------------

その絶対的富に取り返しのつかないダメージを与える原発。
原発が夢のエネルギーではないことが既に学問的にも証明され、スリーマイルで馬脚を現しました。それでも人類は方向性を変えませんでした。

今度のフクシマで「3度目の正直」です。
ここで過ちを正直に認め、原発廃止へと方向転換しなければ、「仏の顔も3度まで」です。

絶対的富を脅かし、命あふれる惑星を死の星に変えていく人類を地球は異物としてはじき出すでしょう。


使用済み核燃料は、水に抱かれ大人しくさせられていました。
今、原発を押さえ込むために膨大な水(絶対的富)を使っています。
また、汚染水を流すために、海という絶対的富に甘え、そこに垂れ流しています。ことごとく、人間の不始末を水にさせています。

どこまで人は無意識に水(地球)に甘え続けるのでしょうか。


原子力という幻の富をとりますか?
水という絶対的富をとりますか?

放射能汚染された飲めない水が、すべての答えを教えてくれているのではないでしょうか?





★「原発廃止」を決断せよ------------------------------------------

東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けてエネルギー政策の見直しを進めているドイツのメルケル首相は15日、「原発をできるだけ早く廃止したい」と述べて、原発の稼働期間の延長を柱とした、みずからのエネルギー政策を改める意向を示しました。
【NHKニュース 4月16日 4時36分】


ドイツは先駆けましたね。
アウシュビッツなど、戦後と向き合ってきた国と向き合ってこなかった国の差を見せられる思いがします。向き合ってきた国は背骨を持っていますが、向き合っていない国は背骨がありません。人と同じです。


当事国、日本。

どうしますか?






【卍Line 「日本のうた」】




今朝も地震がありましたね。
毎日のようにと言っていいくらい、朝地震があります。

目を覚ませ! と揺さぶられている気がします。







お手本

3,「無料」という優れた資源配分方法


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