感情を閉じ込める家(部屋)の結界を崩そう
さて、自分の育ってきた環境がわかり、自分の中に閉じ込めてきたインナーチャイルドがいることもわかりました。あとは、そのチャイルドの思いを口に出して表現してあげればいいわけです。が、なぜか出てきません。たとえ親元から離れて一人であっても出てこないのです。
この場合、親から遠く離れていたとしても親の胎内に棲んでいることがあります。それは、家のたたずまいにも現れています。
・水平位置―周囲の環境、前後左右に何があるか
・垂直位置―上下のどこにあるか
・家の構造―どこにどんな部屋があるか
・家具配置―どのように配置しているか
・各室状況―配色や物の置き方など
・居住動線―どこに居るのか、どのように動いているのか
・食卓席次―食事の様子や家族の座る位置など
・飾り物―観葉植物、絵画、写真、鏡などの様子
・衣類、鞄―これらも自分の心を表す重要なアイテムです
家には隠しようもなく住んでいる人の心が表れています。その立地から部屋の中、住まい方に至るまで、すべてが心の現われです。人は自分で自分の心を認識していなくても、心で生きているのですから当然ですよね。
私は風水を知っているわけではありません。が、多くのご家庭を訪問してきましたので、様々な「現場」を知っています。現場に足を運べば運ぶほど、見えてくるものがあります。そうですね、ヒッチハイクをしていたとき、「このカーブはつかまる」とか「あの3台目が止まってくれそう」とかの勘ができてきたように、「地域」や「家」という現場をたくさん見ていると、直感が働くようになるようです(誰でもそうなると思います)。
さて、上記の中で「飾り物」を動かしただけで、一挙に爆発的にチャイルドが出てきたことがありました(もちろん、そこに行くまでにご自身一人で自分と向き合った期間があって後のことですから、チャイルドを受け止めるだけの背骨ができていたわけで、チャイルドも出る準備ができていたのでしょう)。皆様のご参考にと許可を得ましたので、掲載させていただきます。ありがとうございます。
★感情封印結界の張り巡らされた家------------------------------------
Tさんにとって、親を表すカラーは茶色でした(その家によって基調カラーは異なりますから、親をイメージする色も変わってきます)。
リビングの一番目立つ壁の前に木製の棚。その上にラジカセと家族の写真が幾つかあり、両脇に観葉植物があります。写真のフレームはしっかりした木枠。植物の鉢は茶色の籐製の鉢です。
ラジカセはヒーリングCDを聞くそうですが、なぜか聞かないラジオのアンテナが横に伸びており、写真に横串を通しているように見えます。
写真の上方、壁の中央には絵が飾ってありました。緑を背景にした赤い花の絵です。額の構成が面白くて、その絵の周りに白地があって、それを金の線が囲んでいます。その外側にも白地があって、太い木枠に収まっています。つまり、絵は二重の枠に囲まれているのです。
さて、カウンセリングが進み、Tさんの気づきが深まったところで、部屋を見せていただきました。寝室を見たとき、あぁここも心が出ないように厳重に結界が張ってあるなぁと思いました。
なるほど、リビングにいる間はあの壁がにらみをきかせ、寝るときには、この寝室に入った時点で心が出なくなります。おまけに、震災対応ということで、ソファの下などから黒い懐中電灯がまるで獲物を狙う蛇のように顔を覗かせています。あぁ、これでは死角がないなぁ、と思いました。自分を封印する結界の張り方が実に巧みなのです(自分で無意識にやってるんですけどね ^^;)。
これでは、この家の中にいる間は心が出てこないでしょう。
だから、チャイルドが私をここへと呼んだんだろうなぁ、と思いました。
Tさんは、無意識に安心を得るためにそのように配置しているのですが、それは不安な心を見たくないためですから、不安感情もろともに他の感情達も閉じ込めることになってしまっているわけですね。
★息を吹き返した寝室-----------------------------------------------
そこで、まず寝室を見て感じたことをお話しました。ドアを開けた正面、部屋の対角、中央のベッドの枕部分を頂点にした三角、頭部分両脇、そして足元から頭を見据えるテレビ、と5重くらいに結界が張ってありました。それを聞いてどうするのかはTさんです。片付けたり動かしたり、私は一切手を出しません。
見ていると、微妙に手が迷っているのがわかります。片付ける最中に、持って行こうとして手がかすかに震え、なぜか一つ残していたりします。結界を残すことをやっているのです。
体の中で戦いが起こっていることがわかります。このように無意識に結界を張っているんだなぁと現場を見た思いです。そういうときには、全体を眺めてもらいながら「それもそこになくていいですよね」と気づいてもらいます。
・・・結果、「明るくなりましたね~!」
―Tさんが声を上げました。
あれほど暗かった部屋に日が差し込んでいます。
閉じていた空間が外界とつながり、空気が動き始めたようでした。
止まっていた時が流れ始めました。
心臓が再び動き始めたかのように、静謐なシンメトリーが崩れて律動(リズム)が生まれています。
まるでドラキュラが眠りに着く棺のようだった空間が、生命力ある空間に生まれ変わりました。
このことを実感していただいて、リビングに戻りました。
★インナーチャイルドの祭壇------------------------------------------
さて、リビング全体を見渡しているあの壁面です。
ここを何とかしなければ、チャイルドが出て来れないでしょう。
「ここは、まるで祭壇のように見えますね」と、声をかけました。
Tさんも、なんとなく気にはなっていたようです。
現家族は源家族の「枠」の中にはめ込まれている。
しかも横串を通されて身動きができない。
絵の赤い花は怒りを代表とする感情。それを取り巻く癒すかのような緑。その全てがまるで魔法瓶のように二重の枠に閉じ込められている。白の“真空地帯”があるので、外に伝わっていかない。しかも、前面がガラスで覆われ完全密閉。
・・・あぁここにチャイルドが封印されているんだなぁ、と感じました。
そして、両脇に榊のごとき観葉植物―完璧です。
「まるで“荒御霊”を祭る祭壇のようですね」
「ヒーリングミュージックは、その荒御霊を慰めているかのようですね」
それが、私の感じたことでした。
荒御霊―Tさんの激しいインナーチャイルドです。
人は荒らぶる神を鎮めるため、神の社を作って祭り上げてきました。
荒らぶる神は、納め、奉り、癒す―その祭壇が出来上がっていました。
あの花の絵はまるで原発でした。
真っ赤に燃えるプルトニウムを水で癒し、それを鉄棺と石棺で二重に納めている原発―現代社会に閉じ込められた怒れるインナーチャイルド・・・
★祭壇崩し(結界の解除)-------------------------------------------------
Tさんは、試行錯誤しつつレイアウトを変えていきました。先ほどと同じように、ここでもチャイルドを出したくないIPと、出て来たいICのせめぎ合いが起こっているのがわかりました。そして、やはり無意識ながら結界を残そうとします。このように、どうしても存在不安とIPにやられてしまう場合は、見守っている第三者のサジェスチョンが必要な時があります。
こうして、絵と“榊”は祭壇上から消え、ラジカセもアンテナを引っ込めて写真の配置も変わり、棚の上がとてもスッキリしてリズムが生まれました。
「広くなりましたね~」
―Tさんが言いました。
確かに、明るく広くなりました。縦に高いものがなくなって、目線の上のほうがスッキリすると、部屋の面積が変わったわけではないのに広く感じるものです。そして、空間にゆとりを感じるようになると、心が動き始めます。
他にも幾つか、部屋の中で気になったところを変えていただきました。
準備完了。
Tさんが実際に“行動”したことで、チャイルドはTさんを信頼したはずです。結界も崩れました。そこで、エンプティチェアをやりました。
すると、思いもかけず、爆発的に出てきたのです。
ビッグバンでした。
■見守る力----------------------------------------------------------
さて、Tさんのようにセルフカウンセリングでかなり進まれていても、なかなか感情が出てこない人がいますが、そういう場合は、このように家の中に結界が張ってある場合があります。加えて、何かをチャイルドのシンボルとして封印していることもあります(上記事例では、「絵」)。
このような時は、たとえ外のカウンセリングルームで感情が出てきても、家に戻ると心が閉じてしまうわけですね。ですから、家にいると感情が出にくいと感じている方は、無意識の内に結界をはっている可能性があります―自ら張っているので気づきにくいのですが、この記事を読まれた方は、もしやと思って部屋を見回してみて下さい。
また、結界崩し、封印崩しは、タブーを犯すようでとても怖いものです。何しろ神(脳内に棲む親)への挑戦ですからね。
それに、崩したときに自分の内側からどんな感情が出てくるのかわからないから怖いのです。なにより、虚無や不安を見るのは恐怖です(でも、恐れないで下さい。それらは既に幼いあなたが感じていたものです)。
ですから、一人ではなく、電話でも現場でもいい、自分を見守ってくれる人を欲するわけですね。
子どもは、何かをするときに親に「これしてもいい?」と声をかけますね。
ダメと言われてもやることを決めているのに、なぜ聞くのか。
それは、自分のすることを見ていてほしいからですね。
「これからやることを知っていてね」「これからすることを見ていてね」という合図なのです。
見守られているだけで、勇気が湧くのです。嬉しいのです。
「見守る」
―それは、その言葉通り、「見る」ことは「守る」ことなのです。
「見ているだけ」「聴いているだけ」―このことの真のすごさがわかるでしょうか。親は子に何をする必要もありません。そこにいて、子のすることを見て、聴いてあげるだけでいいのです。
そのすごさと大切さがわかれば、親のやるべきことは、子を見守ることができるように心と体のゆとりを持つこと―このことに尽きます。それがわかったとき、現代社会がいかに歪で本末転倒しているのかがわかるでしょう。
「見守ること」「気持ちを聴いてあげること」―本来誰もができること。
そして、すべての人に気づいてほしいと思います。
どの人もみな、見守られています。
【茅原実里 「優しい忘却」】
何もいらない―それは嘘ではありませんでした。
けれど、閉じ込めたはずのチャイルドが願いを繰り返します。
繰り返されるゲーム(代償行為)の日々の中で願いが叶っても
それは偽りの世界
張りぼての裏の空洞に無意識に怯える日々
それを見ないように逃げ続け、駆け抜ける日々
ぐるぐると巡り続ける日々の行為は、記憶(背骨)にはなりません
振り返ると、アルバムに残ってはいても
自分に覚えのない世界に衝撃を受けることもあります
でも・・・操り人形の世界の中にも
封印されてきたチャイルドがいるのです
思い出してください
封印を解いて
静謐な白黒の写真にも、活き活きとした色が戻るでしょう
・存在不安が強い人の家の結界