脳内結界を解除すると、できなかったことができるようになる
エンプティチェアを通じて、ついに親に言いたいことを言った青年。すぐに効果が現れたことがありました。すぐ―そう、電話カウンセリングでエンプティチェアを終えた直後でした・・・。(掲載の許可を得ております。ありがとうございました)
★正体をさらした「頭に隠れ棲む父親」--------------------------------
「あ、今『気づくな』という声が頭の中でしました」
L君は、そう言いました。エンプティチェアがようやく終わってすぐのことです。
「自分の声? それとも誰かの声だった?」と訊くと
「父親の声でした」
おー、と思いました。L君は、かつて思考にがんじがらめにされて身動きできなかった青年です。しかし、ここ1年ほどは周囲にどう思われようが、徹底して気持ちで動くということを実践していました。だから、自分とICの絆も強くなり、そしてようやく、そのICの思いを、この日脳内の父親にぶつけることができたのです。
親から強い支配を受けた人が気持ちのままに行動すると、「IPの逆襲」がありますが、それが直後に来たわけです。ということは、IPが相当に追い詰められているということですね。
しかも、“自分の声”ではなく“父親の声”で来ました。つまり、これまで自分に同化していたIPが分離し始めたということです。
「おー、やったね~。ついに正体をさらしたね~♪」
IPがなりふり構ってられねぇな、よしチャンスだ!―そう感じた私は、今セッションが終わったばかりですが、畳み込むことにしました。
★脳に打ち込まれた楔を抜く-----------------------------------------
「今、“気づくな”と言われたよね。さっきやったエンプティチェアの要領で、その父親に言い返してやろうよ。なんて言います?」
彼はしばらく考えて言いました。
「俺はごまかされないぞ。もうごまかしはきかない」
私は言いました。
「『ごまかされなくてもいいよ、でも気づくなよ』とお父さんは言ってくるよ、さぁどうする?」
沈思黙考・・・
「俺は自分のやり方でやる」
返答。
「『あぁ自分のやり方でやっていいよ、でも気づくなよ』と言うだろうね」
そして長~い沈黙の後、
「・・・わかりません」
「もっと直接的に言うといいかもね」
しかし、迂回するばかり。
そこで、ヒントを言いました。
「『気づくな』というのは禁止令だよね。それをそのまま許可に変えてみようよ」
再び沈黙の後、
「俺は気づいてもいいんだ」
「そう!いいね! 今、自分で自分の許可を与えたね。今度はそれを、お父さんに“宣言”する形で言ってみよう」
「俺は・・・気づいた」
「うん、これまでのことには気づいたね。でも、これから先も“気づくなよ”と言ってくるからね。もっと意志を示そう」
「・・・俺は、気づく」
「やったね!! 自分の口で宣言したね!」
やっと、もやもやが晴れました(^^)。
「気づくな」という禁止令を、自分の言葉で「俺は気づく」に変える。
一見、なんでもないことのように見えますが、ここに至るまでに実に20分以上かかっていました。それほどに、親の支配が強かったということです。
このときL君は、頭に打ち込まれた楔を引っこ抜いたのです。
★脳内結界を解除すると、できなかったことができるようになる----------
彼は自分を縛る脳内結界を一つ解除しました。
その効果はすぐに現れました。
この日はくたくたになって、何も食べれずにすぐに寝たそうですが、その翌日のこと―。
L君は、何かをすると最後までやり遂げることができずに途中放棄する癖がありました。本を読むときでさえも、最後の数行までくると何か別のことをし始めて途中放棄するのです。結局、読み終えた本が1冊もありませんでした。
この日、彼は短編に挑戦しました。
最後の数ページに差し掛かると、妨害がすごくたくさん、繰り返し繰り返し出てきたそうです。
「気づいていいんだ」
「気づくからね」
「最後まで自分のために読む」
「読んでいいんだ」
妨害が出てくるたびに、そのような言葉を呪文のように唱えながら、頭の中と戦いながら、ついに読み通したそうです。
ブラボー!!
やりましたね。脳内親(IP)を撃退しました。
★天領を自分の領地に取り戻す-----------------------------------------
彼は、読み終わって次のように感じました。
『読み終わりどっしりしました。
まだよくわからないのですが、何か自分が占める場が増えたかもです』
実感がよく伝わってきますね~。
L君の頭の中には父親が棲んでいます。いわば、L君の頭という領地の中に、父親の天領があるわけです。天領は、その領地の主である大名でさえ手を出せない幕府直轄領です。つまり、そこは遠隔操作ができるのです。
L君は親と離れて暮らしていますが、それでもなお、こんなにも強いIPの支配下にありました。生き辛い方は、このように自分(IP)が自分を縛っていますので、そこに親からの送りモノ、手紙、メール、電話などがあっただけのことで、天領が活性化して大ダメージを受けてしまいます。
まして、実際に親に会うと、現実のIP(親)と脳内IPの挟み撃ちにあうわけですから、瞬く間に行動を支配されていくでしょう。
しかし、IPを分離し、自分が自分の主導権を取り戻した後は、親は取るに足りないちっぽけな存在となるでしょう。怒りの塊だったり、自動実行のロボットだったりする親も、その本質は、不安で怖がって泣いている幼児ですから、こちらが気持ちをビシッと言えば、逃げていきます。
『何か自分が占める場が増えた』―この述懐は、自分が自分を取り戻し始めたことを示して、とても感慨深いものでした。
長きの安泰を誇っていた天領体制は崩壊し始めました。
「自分維新」が始まったのです。
★レッテルに惑わされるな--------------------------------------------
ところで、彼はレッテルを貼られていました。
「怠け者」
「気まぐれ」
「面倒くさがり」
「根気がない」
「体力がない」
「集中力欠如」
「注意力散漫」
けれど、その本質は、「“気づくな”という禁止令で、IPが最後まで成し遂げることを禁じた」のです。気づいてはいけなかったので様々なことを中断する結果、その結果だけを見て上記のようなレッテルが、ただ貼られていたのでした。
自分がレッテルにとらわれている間は、そこから先に進めません。あるいはレッテルに安住することもあります。でも、レッテルは結果をカテゴリー分けしたものに過ぎません。なぜそうなったのか? そこを問うことが大切です。
けれど、そこに至るまでは難しいですよね。
たとえば、“気づくな”という禁止令が言葉としても出てこずに潜在している間は、「なぜ自分はこうなんだろう?」と自分を責めます。
次に、自律に向かって歩き始めると、“気づくな”という言葉が顕在化してきます。ただそれは、まだ自分の言葉として、ニュアンスで出てきますので、それが自分を縛るものとしては明確にとらえ切れません。
そして、自分がICと信頼関係を結ぶ(=気持ちで行動する)と、“気づくな”という言葉が父親の言葉としてハッキリと聞こえました。このように自分から分離されれば、明確に闘う相手、無視する相手として認識できます。
このように正体をさらしていくためには、まず自分が親や周囲から貼られているレッテル(決め付け)や、あるいは自己イメージ(自分で自分に貼っているレッテル)は、「本当にそうか?」と自分に疑問を持つことからスタートします。
過去に肯定の評価を貰ったこともあるはずです。
思い出してみて下さい。
【Noa 「Flap Away」】