仕事を手放す (仕事人間、仕事依存の方へ)
私が新しい仕事に着任して、真っ先にすることはファイルの読みあさりだった。(いずこも引き継ぎなどなきに等しいのが実態)
その後、仕事をしながら新たにマニュアルを整備していく。
法規制等に関連づけて、一つ一つのタスクがどのような意味を持っているのかフローで全容がわかるようにマニュアルを作成していく。
翌年部下が入れば、そのマニュアルを見れば概要が把握できる。簡単に全容を説明してあとはやらせていく。それが新人であっても、1ヶ月間ともに行動して教え、2ヶ月目にはやらせてみて、3ヶ月目は見守っているだけでどんどん成長していく。
こうして、私は「職務」を手放していった。
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そうして4,5年あれば、その課全体の仕事についての体系付けが終わる。その時には、やらなくていい仕事、やらなくてはいけない仕事などの業務再構築も併せて終わっている。
そこが終われば転勤。着任すると、「あ、ここは5年前のあそこだ」。こうして、規模は大きくなっていったが、水面下の組織をゼロレベルにしては次へ移ることの繰り返し。大変だが、人が生き生きと変化していくのを見るのが楽しかった。
どうやら自分は変化を促してしまうらしいから、と言うわけではないが、何か新しいことを始めたとき、手放すことを考えていた。いつでも手放せるように、一挙にはできないから日々たゆまず整備していく。それこそが私の仕事だった。そうすると、変化が起こるのである。
そして、自分が卒業した仕事はどんどんやらせて人を育てていく。人が育ったときに、私は次に移ることができる。そういう意味で、いつでも手放せるように真剣に仕事に取り組んだ。人が本当にやるべきことは、次世代を育成することだと思っている。
こうして私は、「職場」を手放していった。
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中には、仕事をブラックボックスにすることによって、社内での地位を保とうとする輩もいた。あれこれと顔を出し口を挟むことにより、自己を顕示しようとする者もいた。が、彼らの成長は守りに入った時点で止まっている。
実害がなければ放っておけばいいのだが、組織改革となるとそうもいかない。そういう面々と対決せざるを得なくなる。どのようにその面々を変え、あるいは排除していったかを描いたのが「あきらめの壁をぶち破った人々」だ。
このプロジェクトが成功したのは、常に手放す姿勢でいたからだ。
自分が率いるのではなくプロジェクトメンバーが率いなければならない。システムの構築部隊だけが議論するのではなく、その後に引き継ぐ運用部隊が議論しなければならない。常に自分が抜けた後、プロジェクトメンバーが抜けた後のことを考え、先手先手を打った。
つまり、責任を持って引き受けた瞬間に「プロジェクト」を手放していたのである。
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組織改革を成し遂げたとき、私は、舶来品ではない日本企業に適したミドルアップの方法論を公表すべきと思った(『日本発チェンジマネジメントの実際』…日本“発”と言う言葉には、日経編集長の“日本オリジナル”という【気合い!】が入っている ^^)。
そこで私は、小説「あきらめの壁をぶち破った人々」を組織改革を行う際の、変革メカニズムを盛り込んだ実務マニュアルのつもりで書いた。
後日、この本を読まれた読者の方から、使えるエピソードが満載で、半年がかりで社内調査をし組織改革の提案をトップに上申したという、ある業界の大手企業の管理職の方からお便りをいただいたとき、「これぞ本望」だった。
そして、私は「会社の生活」を手放した。
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今、家族カウンセリングを行っていて、家族の関係性のメカニズムが理論だけではなく実感として見えている。そうして得たものを、どんどんフィードバックしていきたいと思っている。そのフィードバックの一つが「あなたの子どもを加害者にしないために」であり、ナレッジサーブなどを通じての心理学講座だ。
これらを通じて、自分に気づき、自分の本当の人生を歩き出される方が増えることを願っている。
そして、最終的には「カウンセリングという職業」がなくなる社会になるのが一番いいと思う。
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そして…
伝えるべきは伝え、
子の成長を見届け、
妻の気持ちも十分に受け止めたら、
自分の肉体を手放すときなんだろうなぁ。
とはいえ、まだまだ学ばなければならないことは多く、それに比して人生短い気がするが…、ま、精一杯やるだけやりましょう♪