ハラッシーハラッサーのでき方
『おや、また異変が』の記事で、『物心ついたときには既に逃げ始めていますから、逃げていることが「常態」ですので、気づきようがないのです』と書きました。
気づかないでいると、どのような影響が子どもに出るでしょうか。その一例を示してみます(架空の事例をストーリー的に示したものです)。
★「レッテル貼り」の通りに育つ子ども-------------------------------
たとえば、友達にパシリに使われている小学校低学年の女の子E子ちゃんがいるとしましょう。お母さんは、なぜ毅然とした態度が取れないのか、嫌なことをイヤと言えないのか、そんな友人たちと付き合うことをやめられないのか、と悔しくて仕方がありません。
E子ちゃんも、お母さんにそう責められても、なぜか毅然とした態度をとることができません。が、その理由は自分でもよくわからないのです。
ここで大人は、E子ちゃんに対して「大人しい子」「自分の意見を言えない子」「煮え切らない子」などとレッテルを貼ります。一度レッテルを貼ってしまえば、その後似たようなことがあるたびに「この子は“自分の意見を言えない子”だから」と、レッテルのせいにできます。
一方のE子ちゃんは、「事実+レッテル」の繰り返しの中で、「自分は意見を言えない子」なんだという自己イメージ(自己概念)を固めていき、それが自分(性格)なんだと思い込んでいきます。こうして子どもは、親の貼ったレッテル通りに育っていくわけです。
★「真実を暴いてはいけない」という禁止令---------------------------
でも、よく考えてみると、そのレッテルは、親が外からE子ちゃんを見て勝手につけたもので、E子ちゃんの内面を表すものではありません。しかも、友達にパシリに使われていながら付き合っているという状況が何でそうなのかという「謎」は、親も本人もわからないままですね。
わからないまま
=わからないままに放置
=親が子をわからないままに放置する
=親がわからないままであることを維持する
ということです。
つまり、「わかってはいけない」ということですね。
だから、E子ちゃんはお母さんに聞かれても「よくわからない」以外の選択肢はないのです。
ここでE子ちゃんに禁止令が内在化します。
それは、
「謎を解いてはいけない」
「真実を暴いてはいけない」
「本質に迫ってはいけない」
という禁止令です。
★問題を自分から切り離す生き方-------------------------------------
真実は封印されました。
親もまたそのように生きているのです。問題未解決のまま、謎を残したまま生きていくことはとても苦しいので、新たに発生する問題は自分が関わらなくいいように排除していきます。
そこで行われるのが「レッテル貼り」です。
相手にレッテルを貼ることで、「相手の問題」にしてしまうことができ、自分はその問題から切り離されてラクになることができます。(それは幻想ですし、子の問題を自分から切り離したとき、親は成長するチャンスを自ら断ち切りブラックホールへの道を歩み始めることになります)
親は楽になりますが、E子ちゃんは苦しみの中に放置されることになりますね。ここでE子ちゃんに次の「生きる処方箋」が内在化します。
「問題が起きたら、レッテルを貼ってその問題を自分から切り離せ」
―これがお母さんの身につけた処方箋であり、それをE子ちゃんも実地体験の中で身につけていくことになります(連鎖しましたね)。
★空しい人生→人間の堕落------------------------------------------
こうして全ての問題を何かのせい―
自分の性格のせい、
親のせい、
誰かのせい、
社会のせい、
他国のせい、
資本主義のせい、
インナーチャイルドのせい、
霊のせい、
カルマのせい、
生まれたせい、
神のせい・・・
―にして生きていくようになります。
せいにする=何かを責め続けて生きるわけですから、苦しいですよね。
せいにする=人生の責任を自分で取れないわけですから、空しいですよね。
・自由からの逃走―(2)人のせいにする心理
★人間の堕落→劣化していく社会の悪循環-----------------------------
「全ての問題は“関係性の問題”である」のが真実です。
が、そこを暴くことを禁じられたことが全ての始まり。
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それを禁じたのは、親が問題を引き受けたくなかったから
↓
そして問題(=発達課題)に取り組まずにレッテルを貼って誤魔化す
↓
こうして、自分と向き合えない人(=向き合うことを禁じられた人)がどんどんできていき、そういう人々が“社会”を形成していきます。
↓
すると社会がだんだんおかしくなっていきます。
・犯罪→個人を裁いて終わり
・心身の医療→薬を処方するための診断名をつけて終わり
↓
真実を封印した虚構の社会システムの上で生きるようになり、その虚構システムを維持しようとするようになります。
↓
たとえば、真実を暴こうとすると、「組織人としてあるまじき行為」などと本気でいう人間が出てくるのです。「虚構システム維持者としてあるまじき行為」と言い換えるとよくわかりますね。「裸の王様だ!」と叫ぶ子どもを排除していくのです。
↓
その組織が人を不幸に陥れることをしようとしていても、盲目的に従うようになります(あなたの所属する集団が、オウム真理教とは違うと言い切れますか?)。
社会がおかしくなっていくのは、誰かのせいではありません。
真実から目を背け続けている、
私たち一人ひとりの責任なのです。
★親の「受け皿」役は、人の「受け皿」役になる-----------------------
ところで、なぜE子ちゃんはパシリに使われていたのでしょうか。もっと言えば、そうまでされてなぜ、その仲間から離れなかったのでしょうか。
それは家に居場所がなかったからです。
親が問題を自分から切り離す生き方をしていますね。切り離された全ての問題は誰かに押し付けることになります。
社会からの要求があれば、その要求をそのまま子どもに押し付けることになります。社会が正しいとは限らないのですが(むしろ間違っていることが多くなっていますが)、全ての問題に責任を持てない親は、無批判に学校や地域や企業の要求を子どもに押し付けています。
子どもは押し付けられるばかりで、受け止めてもらうことがありません。E子ちゃんにとっては、親から要求されることよりも仲間から要求されることの方が、はるかにラクなのです。
家にいることができないので懸命に外に居場所を探そうとするわけですが、この時、自分の「役割」を果たせる場所を探そうとします。
E子ちゃんの役割は「受け皿」ですから、自分に指示命令をくれる相手を探します。そして、そういう素質のある仲間を見出して、相手をそのように仕向けていくわけですね。そのようにして、自分の居場所を確保、あるいは作っていくわけです。
なぜ、自分が苛められるのか、
なぜ、職場で自分ばかりが文句を言われるのか、
なぜ、ハラッサーの夫と結婚したのか(or夫のモラハラが酷くなっていったのか)
なぜ、親族の中で自分だけがバカにされるのか
・・・
そういうお悩みをお持ちの方、どうか自分の人生脚本に気づいて下さい。
もしかすると、あなたが「受け皿」の役割を果たすために、無意識に周囲に仕掛けているかもしれません。あなたの主観は「自分が道具にされている」と悔しがっていても、実は「自分が周囲を道具にしている」のかもしれないのです。
【小谷美紗子 「自分」】