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「土浦連続殺傷事件」―6,社会に出られない恐怖のトラウマ

2013/08/02(Fri) Category : 少年犯罪・家族事件簿
【土浦連続殺傷事件】

★1)真大の語った父親の姿------------------------------------------

さて、証人喚問から見えた父親の姿は、家族に無関心で家族のことを何も知らない姿でした。が、それですべてではありません。金川真大は、裁判で次のようなエピソードを語っています。

負傷歴について質問された時、真大は「記憶にはない」としながらも、1歳ごろに左肘の上を骨折したことがあると明かしました。

それがどういう理由だったのか。父親の証人喚問で弁護人に「この子がかわいそうだなと思ったことはないですか?」と問われて、「幼少のころ、2、3歳のころ、けがをしました…」と父親は答えています。続けて弁護人が「けがをしてかわいそうだと思ったということですか?」と問うと、《父親は再び首をかしげるだけで、言葉が出てこない》―フリーズしています。

このフリーズの意味は、感情を話せない禁止令によるものもあるでしょうが、もしかするとこの怪我に父親自身が関わっていたのかもしれません(真大の記憶と父親の記憶の年齢に幅がありますが)。


また、『小中学生のころ、父が2階で寝ていて、1階で弟と遊んでいて『うるさい』ということで木刀を持ってきて。畳を叩いていた』ことがあったようです。

高校3年生の時には、トイレのカレンダーを破いてその場に放置していたら、真大の部屋のドアに穴が開くほど怒ったそうです。

これらの出来事が、少年の心にどのような影響を及ぼしたでしょうか。




2)記憶にないトラウマ----------------------------------

「胸苦しさ」や「息が詰まる感じ」を訴える相談者の方がいました。その方の語る思い出の中で、本人に直接の記憶はないけれど親から聞かされたというエピソードがありました。実感が伴わないので、サラッと話されただけでしたが、私はそのエピソードに引っかかりました。

それは、その方がまだ赤ちゃんの時にウイルス性の高熱を出したことがあったというエピソードです。そこで、状況をいろいろと訊いてみました。すると、どうやら病院にも行かず数日間家で看病されていたらしいことが本人にも分かってきました。そこで、赤ちゃんの身になって想像してもらいました。

・・・高熱で全身が熱くて苦しい。気持ち悪い。咳きも激しく息が詰まりそうです。辛くて苦しくて死にそうな思いです。けれど、寝かされているだけ。こちらは訴えようにも言葉は使えません。体も動きません。助けを叫びたい苦しい思いが、自分の体の中に閉じ込められています。

大人は時折顔を覗かせますが、実質放置です。永遠に続くような苦しみの中で、ただただ天井を見つめながら、昼が過ぎ夜が過ぎていきます。生きたまま見捨てられている―いえ、周りは見てもいるわけですから、見殺しにされる恐怖・・・

「あ!これだ!!」―その方は声を上げました。

その方は「生き埋め」にされる怖いイメージや、「息苦しさ」の原因がすとーんと腑に落ちたのでした。


つまり、記憶にはなくとも、赤ちゃんの時の体験はトラウマとなって残っており、「人を信用できない」「人は助けてくれない」「社会に出られない」という影響を及ぼしていたのです。




★3)刻まれた破壊のトラウマ----------------------------------------

『1歳ごろに左肘の上を骨折した』真大。なぜ骨折したのかは分かりませんが、アクシデントというものは何らかのサインとして起こっています。先に書いたとおり、この家は「感情の墓場」であり、この夫婦にとって赤ちゃんは“天敵”だったでしょうから、父親が激怒したか何らかの危機的な状況があったのではないかと推察されます。

いずれにせよ、赤ちゃんにとって、この両親は安全基地ではなかったということです。それは、人間が、ひいてはこの社会が信用できないということにつながるのです。

ところで、父親が怪我をさせたのではないかと推察した理由は、この2番目のエピソードにあります。
『小中学生のころ、父が2階で寝ていて、1階で弟と遊んでいて『うるさい』ということで木刀を持ってきて。畳を叩いていた』


想像してみて下さい。


小学生の頃に弟と無邪気に遊んでいたら、「うるさい」と父親に怒鳴られて、それで終わりではなく、2階からわざわざ降りてきたかと思うと手には木刀。何より、その剣幕と父親の目に震え上がったと思います。

そして、木刀で畳を叩くわけです。バンバンという鈍く重い音に、破壊されるような恐怖を感じたことでしょう。

何も悪いことをしていないのに、死の恐怖を感じさせられる―いえ、心理的には、この体験の時に一度殺されています。何の罪もないのに、ただ圧倒的な力の前に殺されたのです。この理不尽なトラウマ的体験が小学生の脳に刻まれました。




★4)破壊的な怒りの裏にある恐怖------------------------------------

なぜ父親は、これほどの仕打ちができたのでしょうか?

先に見たように、この父親は感情を封印したロボット人間でした。なぜそこまで厳重に封印するかというと「存在不安」がとても強いからです。不安感情も感情の一つ。その不安感を封印するということは、インナーチャイルド(感情)すべてを封印するということになるのです。

そのように不安の強い人にとって、寝入りばなと寝起きというのは思考がゆるんで感情が出てきやすいので鬼門なのです。特に不意を突かれて目が覚めたときは、心に構えがありませんからここぞとばかりに不安が出てこようとします。

すると、24時間自分を思考で埋め尽くし、一瞬一秒不安から逃げ続ける“無意識の努力”をしている人間にとって、虚を突かれた一瞬というのは不安が噴出するだけではなく、それまでの努力のすべてを水の泡にされるわけです。人生をかけて不安から逃げているわけですから、不安を感じるということは人生を破壊されるということなのです。だから凄まじい怒りが沸いてきます。

不安を感じないように一刻一刻を生きている俺に、
こんなに不安を感じさせやがって!
俺を恐怖のどん底に突き落としやがって!!
俺の努力を無にしやがって!!!
俺の人生を破壊しやがって!!!!
―父親の凄まじい怒りを代弁すると、こういうところでしょうか。

凄まじい怒りの裏にあるのは多くの場合“怯え”です。まるで怒りのパワーで、出てくる不安や恐怖を押し戻そうとしているかのようです。
それは、自分に恐怖と不安を与え、自分の人生を破壊する“敵”への凄まじい怒りでした。その相手を破壊するほどの怒り(=恐怖)の波動を小学生の子どもが全身に浴びたのでした。




★5)生み出された膨大な「なぜ?」----------------------------------

しかし、子どもは父親が、まさかそんなに懸命に「不安からの逃走」をしているとは思いもよりません。わかるのは、わけもわからないままの鬼気迫る殺気のみ。

なぜ、お父さんはあんなに激怒したんだろう? 
木刀まで持ち出されるようなことを僕はしたのか? 
僕の存在を破壊されてしまうかのような殺気だった。
あの凄まじさは身動きできなかった。動いたら殺されていた。
何でもないことで、人は我が子さえ殺せるのか?
人とは何だ。親とは何だ。
なぜ、あそこまで僕は憎まれなきゃいけないのだ? 
それとも、僕は存在してはいけない存在なのか?
・・・

この一瞬で膨大な「なぜ?」が生み出されます。
そして、それらの「なぜ?」を残したまま、刻まれるのは「気持ちを出してはいけない」という禁止令です。最もノビノビできるはずの家庭は、気持ちを出してはいけない監獄になりました。

(父親の立場から見ると、気持ちのままにポジティブフィードバックをしている子ども達に、強烈なネガティブフィードバックを与えて、家を「感情の墓場」に戻したわけです)




★6)高校時代のフラッシュバックで自覚したこと---------------------

高校時代に、『被告人は原因不明の失神を経験しています。戦争映画の流血シーンを見て気を失ったことがあり、高校の生物の時間では、失神しそうになりました』―もしかするとこの時、トラウマで刻まれた恐怖がフラッシュバックしたのではないでしょうか。

あまりにも強い感情は、その場で感じると自分を壊す危険があるため「瞬間冷凍保存」されます。そして、自分がその感情を感じる準備ができたときに、その感情が出やすいきっかけで「解凍」されます。それは、瞬間冷凍されたものですから、新鮮なまま、生々しく出てくるのです―それがフラッシュバックです。

それは、正気を保っていられないほどの恐怖だったのだと思います。つまり、小さい頃に経験した木刀の恐怖は、当時それを実感していれば気が狂うほどの恐怖だったのでしょう。当時は、自分を壊さないために感情鈍麻したのでしょう。

そして、些細なことでこれほどの恐怖を感じる自分を知ったとき、真大は社会に出て行けないことを自覚したのではないでしょうか。


真大は、弁護人に「高校時代、先生に『課題を出さないと卒業できない』と言われたことがありましたね? なぜ言うことを聞かなかったのですか」と訊かれたときに、次のように答えています。

「卒業する必要も就職する必要もなく、高卒という肩書を取る必要がなかったからです」―社会に出てはいけない自覚を示した言葉だったように思います。


『ひめゆり部隊の少女を揶揄(やゆ)したり、他人を中傷するような感想文を書き、教師に訂正を求められてもその内容自体は変更していない』―このようなことをしたのも、自分が恐怖でできないことをしているひめゆりの少女達に、嫉妬したのかもしれません。




★7)弁護人は弁護の方針を変えよ-------------------------------------

弁護人は『3つの思想(ファンタジー思想、運命思想、殺人が悪ではない思想)のもとに、ひたすら1人で考えて人格が形成されました。幼少期のトラウマなどによるものではありません。』だから、『今なお死刑を熱望している被告人の態度は、独特の思想に基づくが、誤りに気付けば態度は激変します』と述べています。

弁護人は、『ひたすら1人で考えて人格が形成されました』と述べ『誤りに気付けば態度は激変します』と述べています。そこには、被告を突然変異や特殊人間のような異常者にすることによって罪(責任能力)を軽くしようとする意図と、更生の可能性があることを示す意図があるのでしょう。

けれど、この弁護人の発想は、自分と息子を切り離した父親と全く同じです。つまり、この父親のような無責任な生き方を助長するもので社会に害を与えます。

その上、被告を異常者扱いした時点で更生の可能性も断たれるのです。すべての動物は環境に適応するために環境から学んでいます。前項で真大の決定論的な特異な世界観が、紛れもなく父親の姿から学んだものであったことがわかったように、自分がなぜこのような考え方や生きづらさを抱えているのか理解したときに、初めて更生のチャンスが訪れるのです。

その上、本当の意味では被告を救いません。一番苦しんでいるのは、そういうことをしてしまった自分なのです。自分が自分のことを分かりたいのに、異常者扱いで終わって救われる人はいません。

夫をバラバラ殺人した事件がありました。その歌織被告は精神鑑定を拒否しました。『鑑定は形だけ。やってもやらなくても同じ。モルモットみたいに扱われるだけ』―彼女は罪を軽減されようとは思っていませんでした。ただ本当のことを分かってほしかったのです。
【渋谷夫殺害事件-法廷証言でたどる歌織被告の真実】

本稿を見ても分かるように、『幼少期のトラウマ』が強く影響しています。そして、弁護人の言う「3つの思想」も親との関係から形成されています。それを次で述べます。





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こういうブログで何時も気になる部分は「子供」だけ注視して責任を「親」に擦り付けることです。父も母も「人間」であり幼少時代があったのです。その幼少時代の経験が成人になった今でも影響を及ぼしているのです。人間は思考できる生き物で選択できる生き物ですが環境が望むべく方向に進ませません。・・・・と、こういう話をしますと誰に責任があるのか?ということになり責任の所在がわからなくなりますね(=不安?)。ですから親に原因を求めるのでしょう。確かに親は思考できて子供(幼少)は極論言いますと思考できませんから親に原因を求めるのは理解できます。しかし、先ほども申したとおり親にも幼少時代があり幼少時代に与えられた環境が人格形成に影響して望むべく方向へ進ませないのです。つまり、その一族は「罪」なのでしょう。負の連鎖、負のスパイラルと言いますか。・・・・せめて他人ではなく身内で清算してほしかったです。

 


>胸苦しい。息が詰まる。子供の頃から、ずっと感じてました。
>私は赤ちゃんではありませんでしたが、記事にある高熱のエピソードは同じでした。あれは放置だったんですね。
>両親共にそうでした。
>ずっと引っ掛かっていましたが、聞いても答えてもらえなかったので(両親には当たり前のことだったと思います。生きていたら問題なし、なんだから)わかってスッキリしました。
>記事の中にも同じようなところがあって、私も加害者になっていたかもしれないと思うと、私、頑張っていたんだなぁと、自分が愛しく思えます。

 

恐怖

親が突然ものすごい剣幕で、ものすごい形相で怒り出し、小さな私は理由も分からず恐怖の中に突き落とされた。
私はそれほどの恐怖を封印して日々を送って来たのだと、ようやく分かりました。
チャイルド噴出。恐怖と悲しみを、抱きしめます…。

 
    
 
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