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「渋谷夫バラバラ殺人事件」の考察

2014/11/01(Sat) Category : 渋谷夫バラバラ殺人事件
「土浦両親姉惨殺事件」「土浦連続殺傷事件」の2つの事件を振り返ってみてわかることは、飯嶋勝も金川真大も母親のための人生脚本を生き抜いたと言うことです。しかも2人とも最後まで「自分自身に気づかせないように」徹底していました。

たとえば、飯嶋勝は本当のターゲットである母親を殺害した後、一度はそこで自首を考えるのですが、『父親こそ自分を苦しめている張本人であり、このまま終わらせる事はできない』と『考え直し』て父親を殺害しました。それは、父親を殺さないことによって、本当の支配者が母親であることを「自分に気づかせないため」だったと思います。

金川真大も母親に向けられない殺意を妹→小学生→男性(代理父親)と変えていきました。しかも、「母親のための人生脚本」を終わらせるわけですから、母親に忠誠を尽くしている自分としては自分の手で終わらせることができません。ですから、死刑という形で他人の手によって自分の脚本人生を終わらせる―つまり、最後の最後まで母親に忠誠を尽くしたままでの死を選ばざるを得ず、そのための無差別殺人にまで至ってしまったわけです。

真大が拘置所内では「日々、殺すことしか考えていない」「殺すこととは、もし外に出たら、どうやってまた殺しをするかということ。それは死刑になるため。『今解放されたら、また殺人をするか』と問われたら、答えは『します』しかない」と言ったのも、偏にこの母親のための脚本人生を自分の手で終わらせることができない=脳内母親を裏切ることが出来なかったからです。
「土浦連続殺傷事件」―15,自分で人生を終わらせられない本当の理由



いかがでしょうか。人生脚本というものがいかに母親を守り通して突っ走っているかが分かると思います。そして抑えておくべきことは、脚本が従っているのは脳内母親であって現実の母親ではないと言うことです。ですから現実の母親を殺すこともできますし、無差別殺人に向かうこともできるのです。

『1.「実体」と「観念」』で書きましたが、『人生自体が脳内親という土台の上に築かれて』おり、『たとえそれが悲惨な半生であっても、歩んできた半生が徒労だったと思うのがイヤなので』、脳内親を守るのは究極的にはには自分が築いてきた歴史を守るためなのです。





さて、2つの事件を見直してみて、「渋谷夫バラバラ殺人事件」の記事も見直す必要を感じました。5年前にこの事件についての記事を書いた時は、主に歌織(以下敬称略させていただきます)の公判証言を元に書いており、母親との関係の掘り下げが浅かったからです。

改めて初公判から14回公判(判決)までを読んでみて、そこに現れている事実(行動)から、母親及び歌織の脚本が見えてきましたので、それを元に再考してみます。以前に書いたときは、歌織の語るストーリー(人生脚本)を元に構成していたことが自分でよく分かりました。

また、控訴審も見られた河合香織さんの「三橋歌織受刑者(36歳)本当の動機」(講談社の新ノンフィクションメディア『G2』に掲載)も読み、新たに分かった事実も参考にしました。

なお、あくまで法廷証言という限られた事実からカウンセリング体験を元に推定するものですが、証言を丹念に拾っていくと隠されている事実が浮かび上がってきます。その事実と本人が無意識に縛られている脚本を照らしていくと、証言の内どれが事実でどれが虚構なのかも見えてきます。裁判のあり方への疑問も見えてきます。

歌織が『私が一番わかっていただきたかったのは、鑑定に話した精神的な部分ではなくて、ここに至るまでの彼との生活をわかってほしかったし、取り調べで消された部分をわかってほしかった』と言っているように、失われた命である祐輔も「なんで?・・・」と死の間際に問いかけた謎への答えを求めているでしょう。

親から見捨てられた二人の子どもが、親に認めてもらうためにどのような道を歩んだのか。それを目を背けずに見てほしいと思います。書き終えて感じたのは、飯嶋勝や金川真大がそうであったように、三橋歌織も母親のための人生脚本を生き抜いた、いえ気づかないから降りることが出来なかった悲劇です。





人生脚本は、胎内に魂が宿ったときからの親との関わりの中で無意識に形成されていきます。子どもは、親がどのように生きているのかなど知りませんので、親の言動から勝手に思い込んで作っていくのが人生脚本とお考えください。つまり、極端に言えば、人生脚本を現実化して行く「脚本人生」とは「思い込みの虚構人生」です。

私のカウンセリング体験からつくづく思うことは、皆最終的には「お母さんに認められたい」のだなぁということです。認められたいが故に、頼まれもしないのに親を背負い、勝手に創った脚本に子どもは縛られて生きていき、それが悲劇を生んでいきます。それは

脚本―自分(人生脚本)、
演出―自分(インナーペアレンツ)、
主演―自分、
共演―自分に巻きこまれた家族、親族、第三者、
観客―脳内母親(=自分が創り上げた虚像)

という「壮大な独り相撲」(ゲーム)を、あたかも“人生”として延々と演じていく「脚本人生劇場」です。
私たちは皆それぞれが「劇団ひとり」のようなものです。

脚本人生劇場にも喜怒哀楽はありますが、それは「舞台上(虚構の中)のホンモノ感情」であって、所詮はニセモノ感情です。舞台上にいる間は、本当の自分(インナーチャイルド「小さいちゃん」)は封印されており、それが「心のコップ」に蓄積されて時に衝動的に人を突き動かすことになります。



けれど、脚本が悪いのではありません。すべての生物は環境に適応していきますが、脚本は「親という環境」に適応するために創られたものでもあり、親という世界の中で生きるには必要だったもの、自分をここまで生かしてくれたものでもあるのです。

しかし、それが自分を親の胎内世界に閉じ込めてしまったり、親の胎内世界の外では適応できなかったりして自分を苦しめます。その苦しみを感じたときが人生脚本(脚本ちゃん)に気づくチャンスです。

自分の脚本に気づいたときに、これまでの謎が目から鱗が落ちるように解けていくでしょう。そして、消されていた記憶や封印されていた感情が蘇ってくるでしょう。

その感情(小さいちゃん)を声に出して表現し、実感していったときに、これほどの気持ちまで封じて頑張ってきた脚本ちゃんの苦労もわかるでしょう。このように小さいちゃんの救済と脚本ちゃんの慰労は同時になされていくことになります。

つまり、人は自分で自分を救うことが出来るのです。


そして、「今ここ」にたどり着くまでにどれほどの苦難の道があったのかを、「自分」が実感と共に受け入れること、それが「引き継ぎ」です。その引き継ぎの期間に、気持ちを表現していく過程でどんどん背骨も出来てきます。そして、脚本ちゃんの苦労を十分に分かって引き継ぎが終わったとき、初めて脚本ちゃんは背骨が出来た自分にバトンを渡すことが出来るのです。

このように、小さいちゃんも脚本ちゃんも、他の誰でもなく、自分自身にその苦労と気持ちを十分に分かって欲しいと思っています。親に分かって欲しいと思っているわけではないのです。親に分かってほしいと思っているのは自分の自我(エゴ)です。そのエゴをも自分が受け止めてあげてください。

そして、エゴを受け止め、親への執着を手放し、そこから「自分の人生」が始まります。

どうか、人の命まで奪ってしまった悲劇から学び、「一人芝居」の舞台から降りて、本当の現実を歩き始めるきっかけになってほしいと願います。





以下、次のように展開していきます。4ヶ月にわたる長期連載となりますが、予約投稿で毎朝アップしていきますので、先を急がず、答えを焦らず、気長にお付き合いください。
(敬称は略させていただきます。裁判傍聴記録の《》の部分は、その裁判の傍聴者のコメントです)




◆「渋谷夫バラバラ殺人事件」の考察

1.歌織の父親の人生脚本
 1)証言に現れた父親像と違和感
 2)存在不安を感じたくないために鋳型成形する
 3)「第1次反抗期」に絶対服従を叩き込む
 4)実母への憎しみを代償行為で娘に吐き出す(娘は代理母親)
 5)父親役割の限界設定

2.歌織の母親の人生脚本
 1)「不安の封印装置」としての夫の確保
 2)「都心の高級マンション」願望
 3)娘に「存在不安」を植え付け、見捨て続ける
 4)娘を自律させないための道具=金とブランド志向
 5)「人生脚本」の出来方と「脚本人生」の見せ方
 6)「男性に支配されて我慢して家を得る」という生き方モデル

3. 歌織の人生脚本
 1) 人生の始まりの記憶―殺意の原点
 2)束縛や暴力を受けるサンドバッグであれ
 3)「三角形のゲーム」を通しての謎解き
 4)「自己否定のゲーム」と「スタンプ集め」
 5)「自分を道具にして都心にマンションを得る」人生脚本
 6)「修羅行き姫」と「7人のこびと」

4.大学時代~愛人契約まで(19/1993~28/2002)
 1)仕送り月40万円の意味(母子カプセルのへその緒)
 2)ソープランドでバイトした理由
 3)シナリオに合った「形」が重要
 4)命を道具にする1~歌織が愛人からマンションを手に入れることができた理由
 5)式場まで決まっていた御曹司との婚約を破棄した理由
 6)祐輔登場―親からディスカウントされた者同士の出逢い(2002.11)

5.祐輔を自分の土俵に乗せた歌織(28/2002.11~29/2003.4)
 1)ハラッサーのリミットテストとハラッシーのリミットテスト(2002.11~)
 2)アリバイ作りとその裏にあるメタメッセージ(2003.01~)
 3)脚本人生のキャスト採用のオーディション
 4)命を道具にする2~歌織が婚約者から祐輔を手に入れることができた理由(2003.02~03)
 5)母親(ボス)に祐輔育成宣言をした歌織(2003.03)
 6)ハラッサーを育てるハラッシー(2003.03)
 7) DVハラッサーの誕生(2003.04)

6.人生脚本を突っ走り始めた歌織(2003.05~2003.08)
 1)「見捨てられ不安」を突いて束縛を強化させる(2003.05)
 2)強引な引っ越しの裏にある「お母さんと暮らす」決意表明(2003.08)
 3)キレた祐輔と狙った部位が意味すること
 4)「わからない」と「恥ずかしい」で真実を封印する
 5)殴られ続けることが母親への絶望を回避すること(個々人が従う“常識”の正体)
 6)第三者の利用の仕方を学び合うハラッシーとハラッサー
 7)イメージ操作できる脚本人生(束縛)の証人役(2003.夏)

7.脚本人生劇場(2003.秋~2004.05)
 1)脚本ちゃんによる「見せ場」作り、踊らされる祐輔
 2)見せ場の証拠作り(2003.秋)
 3)歌織の脚本に完全に取り込まれた祐輔(2003.冬)
 4)暴力をバージョンアップさせる理由(2004.02)
 5)怒りはストローク飢餓者にとっての心のファーストフード(2004.03)
 6)暴力誘発が不発に終わった仕掛け(2004.03)
 7)暴力の加速者(イネイブラー)となった母親(2004.05)

8.離婚を決意した娘vs拒否した母親(2004.05)
 1)リアリティのない母親
 2)徹底して娘のせいにした母親
 3)離婚の強い決意を示した娘
 4)離婚を拒否した母親
 5)妻と娘から利用された父親
 6)父親の利用のされ方―不安を抱えている人間は利用しやすい
 7)母子のへその緒を切ることが「父親」の本当の役割
 8)男を武器にして闘い合う母と娘
 9)人生脚本のレールに戻された歌織

9.母への絶望と憎しみの封印(2004.06~2005.01)
 1)母への絶望の中、祐輔の優しさに泣いた歌織(2004.06)
 2)自己洗脳で心を再封印し、人生脚本のレールに自分を引き戻す(2004.夏)
 3)爆発しようとする母への憎しみを封印する歌織(2004.秋)
 4)万引き事件―脚本人生の再スタートを切るために仕掛けた「謝罪」ゲーム(2005.01)

10.人生脚本の復活とバージョンアップ(2005.06~2005.夏)
 1)なくなっていた暴力(人生脚本)を復活させた歌織
 2)激しい暴力を引き出した仕掛け(2005.06.27)
 3)DVシェルターで決意した代理母親への復讐
 4)DVシェルターから夫の元へ戻るための理由(性的写真)の構築
 5)夫に提示した「3つの提案」に隠された罠
 6)「公正証書」に執着した理由~現実から乖離し始めた歌織(2005.夏)
 7)公正証書を母親に突きつけた娘、無視した母親

11.脚本人生劇場第二幕(2005.06~2005.秋)
 1)バニシングポイントに向かって―離婚への先手争い(2005.06)
 2)完全なる虚構世界―「マミィとダディ」を始めた理由(2005.07)
 3)脚本人生第二幕の証人として利用された義母(2005.08)
 4)渋谷署で狂言を演じた歌織(2005.夏)
 5)脚本人生を見抜くポイント~定点チェック役の友人から見た歌織(2005.夏)
 6)祐輔に別居させた歌織(2005.秋)
 7)ついに手に入れた「都心のマンション」(2005.09)
 8)それでも却下された底なしの絶望(2005.09.30)

12.人生脚本の変容(2005.11~12)
 1)祐輔の浮気調査を友人に依頼した理由(2005.11)
 2) 離婚か脚本継続か―運命の分かれ道―事件1年前のその日(2005.12.12)
 3)離婚もしMSも手に入れる―人生脚本の変容の宣言(2005.12.13)

13.反転攻勢―主導権を握った歌織(2005.12~2006.03)
 1)日々の生活の実権を握っていた歌織
 2)離婚を突きつける歌織と逃げた両親(2005.12.24)
 3)母親に放つ「マンション購入」という二の矢(2005.12.25)
 4)アリバイ作りをする父親への怒り(2006.02~04)
 5)祐輔の浮気でアドバンテージを握った歌織(2005.02~03)
 6)脚本人生劇場のひな壇に座る2人(2006.03)
 7)劇場型夫婦喧嘩―力尽くで祐輔を追い出した歌織(2006.03.15)
 8)支配しようとする歌織vs逃れようとする祐輔―友人が見た異様な空間
 9)はかなき白昼夢(2006.03.16)

14.離婚に向けての攻防(2006.04~2006.秋)
 1)父の会社の倒産(2006.04)
 2)シェルター後、減っていた祐輔の暴力(2006.05~)
 3)離婚に向けて探偵学校に(2006.06)
 4)離婚誓約書を手に入れた誕生日(2006.07.29)と億ション購入宣言
 5)離婚に向けて走り出した祐輔(2006.09~)
 6)噴出した母親への憎しみ
 7)母への憎しみが祐輔への殺意に転化した理由、凶器を用意した歌織
 8)絶対期限の決定と始まったカウントダウン

15.逃げる母親vs追う歌織(2006.11)
 1)父を取るか私を取るか―歌織vs母親(2006.11.05)
 2)「安心を得る」より「外に不安を置く」のが不安からの逃走人生
 3)離婚を決意した祐輔(2006.11.22)
 4)歌織にとってのMSの意味とその全人生を否定した母―母への憎しみが殺意へ(2006.11.22)
 5)金を取るか娘を取るか―母親vs歌織(2006.11.22)
 6)地獄に身を置く―殺意の確定(2006.11.29)

16.地獄の中で夢を形にしようとした歌織(2006.12)
 1)『もう限界』と『もう1回』の狭間で、とことんの絶望(2006.12.10)
 2)歌織を追い詰めた母親の上京予定
 3)希望の中にいる祐輔、絶望の闇にいる歌織―別れた明暗(2006.12.11)
 4)母への最終手段―地獄に道連れ(2006.12.11夜)
 5)歌織にとってのスポーツクラブの意味
 6)計画的殺害だった可能性(2006.12.12 6:00am頃)
 7)殺害後、再び始まる夢―「これからお母さんと暮らす」(2006.12.13)

17.バラバラ殺人をした歌織の心理
 1)なぜ殺したのか?―アイテムからアイドル(偶像)となった祐輔
 2)どのように殺したのか?―凶器と殺し方の意味
 3)なぜ殺しているときに笑ったのか?
 4)なぜ風景が綺麗に見えたのか?―現実感を取り戻した理由
 5)なぜバラバラにしたのか?―脚本人生劇場の舞台からの消去
 6)下半身をゴミ袋から出して捨てた本当の理由―ストローク飢餓
 7)殺害後の歌織の行動~捕まるまで止まらない脚本行動(2006.12.12~2007.01.10)
 8)最終意見陳述から見える深層―歌織が三橋姓を名乗る理由

<おわりに>





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