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16-4)母への最終手段―地獄に道連れ(2006.12.11夜)

2015/04/18(Sat) Category : 少年犯罪・家族事件簿
【「渋谷夫バラバラ殺人事件」の考察】
【16.地獄の中で夢を形にしようとした歌織(2006.12)】


4)母への最終手段―地獄に道連れ(2006.12.11夜)

祐輔が女性と会っているとき、歌織は商社時代の友人女性を家に呼んでいました。「虚構人生の証人役」の女性です。歌織のストーリーでは、一人では恐かったので離婚話に立ち会ってもらうために呼んだことになっていますので、その女性が帰ってしまった後は離婚話が消えるはずです。その疑問を鑑定人がぶつけています。

鑑定人B「離婚をしようとした夜、(歌織被告に呼ばれ自宅に来てくれていた)○○さんは帰った。(祐輔さんと2人では怖いのに)それでも離婚の話をしようと考えたのは」
歌織 「両親が上京しようとしていたし、ICレコーダーがあったから」
鑑定人B「今から考えると(祐輔さんと2人でいるときに離婚話を持ち出すのは)危険ではないか」
《歌織被告は鑑定人の質問を理解できていない様子だ》
歌織 「そう思ったので○○さんに来てもらった」

このように目の前の状況とは関わりなくストーリーを語り続けるところが脚本人生を生きている人の特徴ですが、本当はなぜ呼んだのでしょうか。


検察側「最初は渋谷の約束だったのに、『家に来い』と言われた?」
証人 「はい」
検察側「変更の理由は、『テープを聴いてほしい』ということだった?」
証人 「はい」
検察側「離婚の話し合いへの立ち会いを頼まれたか?」
証人 「それはなかった」
検察側「何時に行った?」
証人 「午後9時40分ごろ」
検察側「テープを聴いたか?」
証人 「はい」
検察側「録音されていたのは?」
証人 「祐輔さんが女性に電話しているものだった」
検察側「(テープを聴いているとき)歌織被告のリアクションは?」
証人 「無表情だった」

『無表情』―感情を極度に封印していますね。おそらく整理がつかないほどの衝撃を受けたのではないでしょうか。

9月に祐輔が指輪をなくしたとき、その事実を完全に否定するほどの憎しみが噴出しました。『心からあいつが憎い。憎くて憎くてしょうがない』『本当にあいつを何とかしてやるなら、誰にも頼らず、力をためておこう』と、凶器となるワインボトルを用意しました。

11月に(おそらく)祐輔に彼女がいる証拠を掴んだとき、『もうあいつのことは憎しみ、憎悪しかない。一緒にいることはできない。地獄に身を置くことだ』―もはや1秒たりとも、“そこ”に居ることが出来ないくらいの憎悪に身をやつしています。

ここまでの憎悪になったのは、祐輔が(代理)母親であると同時に、自分の人生にとってなくてはならない存在になっていたからこそでした。だから、自分から離れていく祐輔が、「自分を見捨てた母親への強い憎しみ」+「自分の人生を破壊する者としての強い恨み」の両方の対象となってしまったのです。

そういうところに祐輔が親しく女性と話している録音を聞いたわけです。
『そのICレコーダーには夫と 愛人の会話が録音されていた。
「イタリアで結婚式を挙げよう」』(by河合香織)


あぁ、これか―と思いました。歌織が『向こうは新しい彼女と結婚する』と父親に明言していたことは・・・。(『16-2)歌織を追い詰めた母親の上京(2006.12.13)予定』参照)
知らぬ間にそこまで話が進んでいるとは!―強い衝撃が歌織を襲ったことでしょう。

真っ暗闇の中にいる歌織が、希望の光の中にいる祐輔を見たのです。
目がくらんで何も考えられなかったでしょう。

その光が強い分だけ歌織の闇は濃くなり、
歌織は漆黒の闇に突き落とされました・・・。

そして、友人を呼んだのです。






検察側「テープ以外の話はした?」
証人 「心配して、『テープを今日は見せないほうがいい』と何度も言った」
検察側「なぜ心配した?」
証人 「また暴力をふるわれ、けがをしてはいけないと」
検察側「歌織被告は何と?」
証人 「彼は私がシェルターから出た後、DV法をすごく研究していて、言葉や暴力で罪に問われないよう研究しているので大丈夫だと…」

この女性は歌織に洗脳されていましたので、当然のごとくDVを心配しましたが、ここで、祐輔がシェルターから出た後は暴力を振るっていないことがわかります。


検察側「それ以外にマンションのことなどは話に出ませんでしたか」
証人 「離婚にあたっての具体的な話があった。その中で『マンションは』と聞かれました」
検察側「証人はなんと答えましたか」
証人 「『旦那さんのお金で買ったものだから難しいみたい』と答えました」
検察側「それに対して被告の反応はどうでしたか」
証人 「ため息をついて『そっか』と言っていました」
検察側「被告の家から帰ったのは何時ごろですか」
証人 「(午後)11時くらい」
検察側「離婚の話に立ち会ってほしいと言われましたか」
証人 「いいえ」

検察の確認で、歌織が友人を呼んだ時も、帰るときも、離婚の話に立ち会ってほしいと一言も言ってないことが分かりました。元々、両親が上京して来る前に一人でけりをつけなければと焦っていた歌織です。その両親が来るのは、明後日に迫っています。

つまり、この夜にけりをつけなければ、翌日の夜しかチャンスはなくなってしまうのです。翌日、万一祐輔の帰りが遅ければ、そのチャンスも消えてしまうかもしれません。それだけは絶対に避けなければなりません。

「離婚話をこちらから切り出すな」「1月10日のボーナスはゲットしないことを禁ずる」という2つの禁止令が生きている歌織にとって、両親と会うということは離婚延期になる可能性大―それは地獄が続くことになります。

マンションについて、歌織は一体何の確認をしたかったのでしょう。離婚カウンセラーの養成に通ったくらいですから、そういう知識もあったでしょう。それに、13日には自分用のマンションが手に入る段取りになっています。

けれど、先に見ましたように、13日に移り先のマンションが決まることも、歌織にとっては「行き場を失う」ことでした。歌織が確認したことは、自分だけが行き場を失う一方で、祐輔は歌織が苦労して入れたこのマンションでその女性と新たな生活を始めることになるということでした。

すべてを失い、八方塞がり、出口なしです。




--------------------------------------------------------------------
出口なしのマンションの中で、一人の時間が刻々と過ぎていきます。

出社するとき、その週にボーナスの金額が決まるということもあって『週末に一緒に正月旅行の話をしよう』と機嫌良く出かけた祐輔は帰ってきません。「イタリアで結婚式を挙げよう」と言った女性の所に行っているに違いない―歌織はそう確信したはずです。

過ぎていく一人の時間が、
見捨てられた実感を積み重ねていったことでしょう。

それでも、午後9:40という随分遅い時間に友人を呼んだと言うことは、その友人がいる間に帰ってきてくれることを、どこかで願っていたのかもしれません。けれど、その間にも帰っては来ませんでした。

見捨てられ感は募ったことでしょう。


《最後に、裁判長が質問を投げかけた》
裁判長「平成18年に入ってからもあなたは被告と話したことがあるということだが、12月11日午後9時40分から11時の会話についてふだんと違った様子はなかったか?」
証人 「(被告は)ボイスレコーダーを聞いて、考え込んでいるようだった」
裁判長「それは怒っているの、それともおびえたり不安に感じているの? 分かる?」
証人 「どっちもあるが、怒っている様子だった」

無表情を割ったのは、「怒り」でした。
こういう場合、本人は気づいていないことが多いものですが、第三者には分かります。


生まれて以来、「母と暮らしたい」ためだけに生きてきた歌織。
束縛と暴力の苦労に耐えたのも、母と都心のマンションで暮らすというただ一つのゴールにたどり着くためでした。

暇な時間はほとんど不動産巡りやマンション歩きに費やして、祐輔の暴力と引き替えに、次々に都心に向かってマンションを住み替えてきたのです。まさに、歌織の血と汗と涙で手に入れたのがこのマンションでした。



既に殺すための凶器―ワインボトルを9月から用意していた歌織。
歌織には二つの選択肢がありました。
その殺意を実行するか、その殺意から自分を逃がすか。

弁護側「祐輔さんが帰ってくるまでのあなたの精神状態は」
歌織 「1人でいた時間は2時間以上あったが…」
《歌織被告は声を詰まらせた》








11月に母に去られ、
そして今、祐輔(代理母)も去ろうとしています。

唯一の夢のマンションは、母から「無駄」と突き放され、
そして今、本当に無駄であることがハッキリしました。

血と汗と涙で得たそのマンションで、祐輔は希望に満ち、
放り出された歌織に行き場はありません。

新たに束縛と暴力に我慢する脚本を生きるのは、もうイヤ。
といって自律してもいけません。

すべての人が自分の周りから去りました。
すべての希望も、潰え去ったのです。

やってきたことごとくのことが、無駄であったと、
今はっきりとわかったのです。




「勝ち組」になるはずだったのに、
真っ暗闇の奈落の底―

深夜に一人取り残されて
刻々と空しい時を刻んでいく時間・・・

自分がこんなにも地獄に居るのに、
自分から何もかも奪っておいて、
一人だけ幸せになるのは許せない。

お前も一緒に地獄に落ちろ
―地獄に道連れ―

それは、逃げ続ける母親に対する最終手段だったのかもしれません。





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