私がパワハラに耐えられた3つの理由
先ずは、このストレス状況にどう耐えるのかについてお話ししたい。
私が、このストレスフルな状況にかろうじて耐えられたのは3つの理由がある。
1つは、過去に同様な上司についた経験があったこと
2つは、カウンセリングの勉強仲間が話を聞いてくれたこと
3つは、ダブルバインドの理論を知っていたこと
1.過去の経験で「ストレス耐性」ができていた
いきなりこの上司に当たっていたら、潰されていたかもしれない。しかし、以前にも独裁型上司に仕えた経験があった。その上司はダブルバインドの使い手ではなかったが、蛇のようなしつこさで部下を意のままに操ろうとするねちっこさにかけては天下一品。疲労困憊したものだ。が、一度経験すると身体に抵抗力がついている。
たとえば、赤ん坊の汗疹も2年経験すれば、3年目からは出てこなくなる。身体に抵抗力がついて、その気候風土に慣れるのだ。
ストレス理論でいえば、最初はストレスに耐えられずに汗疹が出る(警告反応期)が、汗腺活動の活発化など身体反応が起こって(抵抗期)、その気候に対応できるようになる。その温度環境における新たなホメオスタシスを生体が獲得したのである。
そのような感じで、身体に抵抗力(ストレス耐性)がついてくるのだ。
私も、以前の上司に3年ほど仕える中でストレス耐性ができていた。そのため、以前の上司が小粒でかわいく思えるほど、はるかにバージョンアップしたこの上司についたときにも、ストレス耐性のおかげで持ちこたえることができた。
そういう意味では、以前の上司“様様”である。
2.“ストレスのはけ口”(サポーター)があった
ストレスにどれだけ耐えられるか、それは個人の強さだけではない。私はむしろ、個人を支える環境(サポーター)要因の方が大きいと思っている。人に話を聴いてもらう、自分を受け止めてもらう、ということはそれだけでエンパワーされることだ(受け止められ体験)。
幸い、当時カウンセリングの訓練をしていた私には、話を傾聴してくれる仲間がいた。そこで話をすることが、鬱屈した気持ちを吐き出すだけではなく、自分の状況を再整理し、客観的に自分を把握することに役立った。何より、実際に応援の力を得ることができた。
これをストレス理論で言うと次のようになる。
前回出てきたコーピングには、「情動中心対処」と「問題中心対処」の2つの型がある。私が会社で試行錯誤していたのは、問題そのものに対峙して問題解決を図ろうとする問題中心型対処法である。
一方、自然に接してみたり、その出来事の肯定的な面を見出そうとしたりして、情動的な苦痛を減らそうとする対処法を情動中心型対処法という。
カウンセリングは、気持ちを吐き出すと同時に問題に対する気づきが深められて対処の仕方を自分で発見し、さらにエンパワーされて問題に立ち向かうことができるため、「情動中心対処」と「問題中心対処」の2つを内包するもっともすぐれた解決策だと思う。
つまり、「困ったら人に相談しなさい」―それが、心理学的に見てもベストの対応法だということだ。
3、「知は力なり」
これは、ダブルバインドというストレスそのものになぜ耐えられたか、という理由である。
前々回、ダブルバインドに遭うと、被支配者は自分の感情は押し殺したまま、一方的に支配者の感情や言い分を受け入れざるを得ない操り人形になってしまうことが分ったと思う。
それは、逃げ場のない閉塞状況(第三次禁止令)に追いつめられるからであった。
ところが、私の場合、その閉塞状況(第三次禁止令)にかろうじて穴が開いていたのである。その穴を通して何とか息を吸うことができ、それで窒息を免れた感じだ。
その穴と言うのが、「理論を知っていること」だった。理論を知っていることで、上司の行動パターンが読めたのである。
あぁ、これがダブルバインドか―そう理解できることが、かろうじて私を救っていた。そういう意味で心理メカニズムを知っていることは救いにつながると思った。
とはいえ、現実の苦しさが減るわけではない。
ストレッサー(ストレス源)に対して、いろいろと働きかけ、問題解決型コーピングも情動型コーピングも行い、さらに防衛機制まで発動し、それでもどうしようもないと思ったとき。
あなたがとり得る選択肢は1つかない。
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