階段を下りられない子供
「いい子でお休み」するはずだったのに、目がさえて眠れない。
独りぽっちの部屋は小2の女の子には淋しい。
迷いに迷った挙げ句、部屋を忍び足で出る。
抜き足差し足、階段を下りる。
途中で足がすくむ。
「見つかったらどうしよう…」
だけど、せめて顔を見たい。
意を決して階段を下り、寝ている両親の顔を遠くからそっと覗く。
「あのお布団の中に潜り込めたらいいのになぁ…」
それができたらどんなに幸せだろう。
しかし、見つかるとコワイ…部屋に戻ろうとする
だが、戻れない。
どうしようもなくなって、階段の真ん中で座り込む…
どのくらい、そのように夜を過ごしただろう…
ある夜、寝ぼけたのか、妹が大声で泣きながら部屋から飛び出して駆け下りていった。
チャンス!
「どうしたの?」
と言いながらついていった。
何の迷いもなく両親の布団に向かっていく妹がいつもうらやましかった。
なぜ、私はできなかったんだろう……
「寝るときの様子を聴かせてください」と、私は訊いた。
「そう言えば…」と、彼女は答えた。
「こうやって額に手を当てられました」
なるほどね。小さい頃の彼女は「魔法」をかけられたのだ。
「もう起きちゃダメ」という魔法である。
眠くないのに、親が手を引いて階段を上がるとき、
「眠るのを拒むことを禁じる」という第一次禁止令が発令されている。
そして、「いい子ね」と言って寝かすとき、
「異議申し立てを禁じる」第二次禁止令が発令されている。
はい、これでダブルバインド(二重拘束)の完成。
実はこれだけで、もう身動きが取れなくなる。
さらに額に手を押し当てること-これは、「もう起きちゃダメ」という無言のメッセージ(禁止令)である。
これだけ禁止令が出ていれば、そりゃ当然身動きが取れなくなる。
そして、「禁」を破ったことがばれるのが怖くて、下手するとトイレにさえ起きるに起きれなくなる。
妹にできて自分にできなかった理由
-それは、「禁止令」という魔法にあったのでした。
- 関連記事
-
- 女性蔑視の裏に潜む女性恐怖
- 階段を下りられない子供
- 「考える」という病の回避方法