モラルハラスメントとは-その定義とやり方
今回は、「モラルハラスメントの定義とやり方」-つまり、モラハラとはどういうことをいうのか、そして、それはどのようになされるのかという下記5項目について書きます。
■1,モラルハラスメントとは、「人権無視の犯罪」
■2,モラハラの始まり方は、「ある日突然」
■3,支配のポイントは「理不尽」
■4,理不尽は「激化」する
■5,逃げられない=「無力化」のメカニズム
■1,モラルハラスメントとは、「人権無視の犯罪」です
【moral harassment】→直訳すると「精神的な嫌がらせ」ですが、「精神的暴力」と言った方が実態をよく表すでしょう。
「暴力によってモラル(精神、倫理、道徳)が破壊されていく状態」です。
精神的暴力、肉体的暴力を問わず、暴力の本質は「ディスカウント」。ディスカウントとは「価値を値引くこと」(ディスカウントセールという言葉でおなじみですね)。つまり、人を人扱いしないと言うこと。人格否定。つまりは、人権無視の犯罪です。
人としての尊厳が侵害され、人扱いされてないな、支配されているなと感じたら、それはモラルハラスメントです。
尚、ディスカウントは具体的には次のようなものを言います。
・肉体的ディスカウント
突き飛ばす、殴る、蹴る、殺す
・精神的ディスカウント
皮肉、嫌味、けなす、仲間はずれ、無視
(無視は精神的殺人です)
【ご参考】・ディスカウント
■2,モラハラの始まり方は、「ある日突然」
ある日突然ムッとした顔で口もきかない、あるいは、何でもないことで烈火のように怒る。そういう形で妻に精神的動揺を与えることから始まります。
何の前触れもなく不意打ちを食らいますから、妻はうろたえるわけです。そして、自分に何か至らないところがあったのだろうかとか、あの人も疲れていたんだとか、あれこれ考え始めます。このように考え始めるところで、もう既に相手の術中にはまっているわけです。
これを恋人時代にやると逃げられますよね。しかし、結婚してしまえばおいそれと逃げることができません(第3次禁止令にあっている状態です)から、安心してハラスメントができるわけです。
自分自身を信じてください。自分の直感が「何かおかしい!」とピンときたら、証拠集めを始めて下さい。相手の言動の記録をとってください。
【ご参考】・第1次~第3次禁止令
■3,支配のポイントは「理不尽」
①ある日突然
②些細なことで
③鬼のように怒る もしくは フルシカト(完全無視)する
というのがポイントです。
なぜ、突然なのか?
なぜ、こんな些細なことで怒るのか?
なぜ、そんなにまで罵倒されたり無視されたりするのか?
理性で考えても分かりませんよね。
しかし身体が覚えるのは、服従しないとさらに嫌な思いをすると言うことです。だから、“我慢”することになりがちです。つまり、理不尽なことを押しつけることが服従を押しつけるポイントなんです。
■4,理不尽は「激化」する
ハラッサーは支配者という立場を守るために、常に理不尽を押しつけ続けることが日課とならざるを得ません。
1つは、理不尽というもろいものの上に成り立っているからこそ、いつ支配の立場が崩されるか心配だからです。
2つには、理不尽を押しつけることが、互いに支配と服従の関係を確認することになるからです。
つまり、支配と服従の関係は常にその関係を保つ努力をしないといけないくらい不安定なものなんです。ですから、毎日のようにちくちくと続くだけではなく、激化していくことも多いのです。
■5,逃げられない=「無力化」のメカニズム
ストレス理論でご説明します。
夫の圧力で妻にストレスがかかると、妻はストレスを回避するためにあれやこれやと「対処行動」を起こします。これをコーピングといいます。
しかし、この「対処行動(コーピング)」が何の影響力もないことを思い知らされると、どのように対処するかということを考える能力(これを2次評価と言います)が落ちてきます。「学習性無力症」に陥っていくわけですね。
同時に、離婚はしたくないと思っていると、破局を避けるための「防衛機制」が発動します。自分の気持ちをごまかして(これを合理化と言います)、破局を避けるために謝ることになります。
気持ちをごまかして我慢する日々が続くと、身体が悲鳴を上げ始めます。動悸、冷や汗、硬直、震え、過呼吸、自律神経失調、パニック障害…体調に異変を感じたら、「身体が自分にサインを送ってくれている」とキャッチしてください。
ところが、実家や家族に話しをしたりすると、「男なんてそんなものよ」とか「あなたにも至らないところがあるんじゃない」とか「子供のために離婚だけは避けた方がいい」というアドバイスを受けて、もう誰も分かってくれないという絶望を味わいます。これを「2次被害」と言います。
すると、2次被害に遭いたくないために無力→自閉へと進行し、ますます24時間監視体制の監獄の中で自己否定され続ける状況になります。その中にいると“誰でも”、自分ならこれができる、なんとかなるという「自己効力感(セルフエフィカシー)」がどんどんなくなっていきますので、行動自体ができなくなっていくのです。
【ご参考】
・私がパワハラに遭って無力化していったときのストレスメカニズム
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★モラハラ(モラルハラスメント)相談ハンドブック
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