「餓鬼人間」(3)-「居場所」作り
安全基地とは、
1,あるがままの自分が認められて回復し(承認欲求)
2,気持ちを受け止めてもらえて心のコップを空にして軽くなれる所
ところが、親がそれができなければ、そこは自分の安全基地ではありません。
自分は愛されない存在なのではないかという「存在不安」と「ストローク飢餓」に駆られて、自分の居場所を求めて彷徨うことになります。(ストローク=その人の存在を認める働きかけ)
■4,【家】に執着する
最も分かりやすいのは、「家」です。
その中で自分が安心できる器。そのため、家を持つことに執着します。
家を持つことに執着しますが、それは家族のためではありません。家が自分を守る鎧の一部であるように、家族もまた自分を守る鎧の一部です。鎧が意志を持つことは許されません。本人にとっては鎧、家族にとっては監獄になります。
■5,【職場】を居場所にする
逆に家に執着しないケースもあります。
家や家庭に幻想を抱きません。家以外の場所に自分の拠点を作ろうとします。
多くの場合、それは職場です。特に、ローカルや専門性などで1つの職場に長く居座る場合、その職場自体が居場所になってしまうことがあります。
この場合、全ての生活が職場のリズムを中心に回り始めます。
生活が主で、仕事は従、職場はその器のはずなのですが、職場が主で、生活も仕事も従になってしまうのです。
職場がワールドですから、そこにいると安心し落ち着きます。そのため、無意識にあの手この手を使って自分の持ち場を死守しようとします。巧妙に自分の仕事をブラックボックスにして、「余人に代えられない」ように仕組むこともあります。
また、どんな目に遭っても、そこに居残ろうとします。そこしか生きる場がないからです。
■6,【事業】を起こす
自分で居場所を作ってしまう人もいます。
事業を興すのです。自分が社長であればオールマイティです。従業員は全員自分のことを見てくれますから、ストローク飢餓を満たすことはできるでしょう。
ビジネスのためというよりも、自分の居場所確保のために事業をしている人は多くいます。沈んでいく例も成功例もあります(世間的には)。
この場合、家族は手足として使われる一方で、その生活は放置(ネグレクト)されることが多いです。
■7,【仕事】に超人的に打ち込む
自分の居場所を「器」ではなく、「仕事」に求める人もいます。
人からストロークをもらうために、仕事人間(仕事依存:ワーカホリック)になります。何でも自分に仕事を集める「仕事の虫」です。仕事過剰で心身を壊すまでとどまるところを知りません。
時に超人的に働き、世に認められる業績を残す人もいます。いわゆる成功者の中にはそういう人もいるでしょう。
…ところで、上記のことはいずれも「人工的」なことです。ですから、いつ崩壊するか分かりません。
そのため、居場所を作ると同時に、その維持が最大の仕事となってしまいます。朝から晩まで、その創り上げた場所をどう維持し続けるかが「生きること」と同化してしまうのです。
たとえば、4の「家」であれば、人間である家族をどのように鎧にし続けるかという策を考え続けなければなりません。考えるだけで実に驚異的なことをやってしまうのです。なぜなら、そこが生きる拠点だからです。
親が安全基地でありさえすれば、子は安心して自分の人生に向かって飛び出していけます。
しかし、安全基地がない場合、子は安全基地作りとその維持のために一生を費やしてしまうのです。飛び出すことにより自分の人生が開けるのですが、一歩も自分の人生を歩まないままに生涯を終わる人も多々いると思います。
悲惨なのは、その安全基地が崩壊したときです。
莫大なエネルギーを費やしてきただけに、一挙に鬱になったりすることもあります。絶望することもあるでしょう。
でも、それは人工的な安全基地から卒業するときなのです。
人間は神ではありません。
人が作ったものは壊れます。
壊れないものは、人と人との絆です。
全てが崩壊したがれきの中に、あなたと手をつないでくれる人が立っているはずです。
人への信頼を取り戻しましょう。