福島高3母親殺害事件(1)-家族カウンセラーの見方
今朝のテレビでのコメントはおおむね次のようなものでした。
・田舎で優秀だった人間が都会の高校で挫折。ダメな自分を生んだ母親を逆恨みして殺害。
・思春期は変化の時。病的に変化することもある。人を殺してみたい、とか。それにネット社会が拍車をかけ、殺してみたい衝動が高まり、最も身近で弱い母親に向かった。
・テロや戦争など社会悪に対する嫌悪+酒鬼薔薇崇拝→母殺しは一種の儀式で、人のやっていないことをやって(首持参で自首)ヒーローになる。
・理解しがたい常軌を逸した異常な行動だから人格異常者、発達障害者…
人は元来健全です。なぜなら「生き物」だからです。
妙ないじくられ方をしなければ、まっすぐに育ちます。
この、人に対する基本的信頼を根底に置かなければ、全ての解釈は誤った方向に流れてしまいます。
【テレビ・新聞報道のピックアップメモ】
家族構成は、祖父母、両親、高3、2、中3の男子3兄弟。おばあちゃん子。
母親は、まじめで明るく溌剌としてリーダー的(by保育園)、教育熱心で父親の影は薄い。
地元では、よく旅行するなど家族仲はよく、少年は挨拶もきちんとするまじめな子。成績優秀でスポーツ万能。
大学進学のため、有名な進学校近くの親族の家に住む。
高校での評判は、中学時代とは打って変わって、おとなしい本好きな子、何を考えているか分からない、周りにとけ込まない、影が薄い。1年の連休明けに不登校の時期があった。
2年目に弟と一緒にアパートに住み始め、その9月頃から学校を休みがちになる。
母親は毎週末アパートを訪れ、洗濯をし、一泊して翌早朝に自宅に戻り、仕事をするという日々。
今年2月土砂崩れで実家が無くなる。
そして3年生に進級した4月16日から欠席。20日病院から抗不安剤を処方。
担任からの連絡で初めて不登校を知った母親は、「すぐに様子を見に行く」と話した。
5月1日、病院から、「登校を強く促さないように」とアドバイスを受ける。
5月15日。
午前1時半頃寝ていた母親を殺害(以降切断した頭部を持って行動)。
午前5時頃月1回ほど利用していたネットカフェで、リクライニングシートで音楽DVD鑑賞。
午前7時、タクシーで警察に乗り付けて自首。
警察では、3食よく食べ、よく眠っている。
ここに書かれてある情報だけで、その息苦しさが、分かる人には分かるのではないでしょうか。
親の真綿の支配に遭っている人たち、
親に乗っ取られて自分が無くなっている人たち、
体の痛みや寒暖の感覚が鈍くなっている人たち、
気持ちを聴かれて自分の気持ちが分からない人たち、
肩から先が消えているような気がしている人たち、
自分の足で歩いている気がしない人たち、
自分の思うように体が動かない人たち、
自分が思わないのに体が動いてしまう人たち、
なぜか息をするのが苦しい人たち、
……
2004年11月24日、19歳の少年が寝ていた両親を鉄アレイで殴り殺した事件を思い出します(水戸市両親鉄アレイ殺害事件)。
エリートでなければ認めない厳しい祖父。信望厚い中学教師の父親。「二四の瞳」の先生みたいといわれた小学校教師の母親。中学まで優秀だった少年。尊敬する家庭と言っていたご近所。
しかし、エリート高校進学後に長男は欠席が増え、卒業後はニート状態。妹も中卒後進学しません。母親は、少年のために教師を辞めてニュージーランドに別荘を買い、少年と妹の三人でニュージーランドで生活し、時々日本に帰ってくる生活を始めます。-そういう中、少年は両親を殺害しました。
彼はその時、次のように言っています。
『自分の人生にどこまでも介入してくる両親を亡き者にする以外に、自分の生きる道はない 』
この言葉が、上記記事を読むと、真実を話していることがよく分かると思います。そして、会津若松の少年の追い詰められ方が、上記水戸の少年とよく似ていると感じます。
少年が母親を殺したのは、コメンテーター(世間の常識?)が言うように、逆恨みなのか、殺人の興味を母親に向けただけなのか、ヒーローになりたかったからなのか、人格異常者だったのか・・・以下のように考察してみます。
★会津若松母親殺害事件
1,完璧な母親の無自覚な支配
2,夫を支配する方法
3,子を支配する方法
4,家族を支配する方法
5,人を成長させない方法
6,鵜飼いの鵜匠
7,「作品」としての家庭
8,不登校はフルマラソン直後の状態
9,それでも走らせ続けようとする母親
10,絶望から怒りへ
11,出口をなくした怒りから殺意へ
12,首を切り、首を持ち歩いた理由
13,右腕のオブジェが表す世代観連鎖