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JR福知山線脱線事故の深層-第1部 事故の構造的要因 (3)事故現場の軌道

2007/07/13(Fri) Category : JR福知山線脱線事故の深層
■1,「カイゼン」とは何か---------------------------

ノーマルな話からしましょう。
私は、カイゼン運動(インプルーブメント)も組織改革(イノベーション)もやってきました。工場勤務の人はわかると思いますが、5Sの第一歩は不安全箇所の「改善」にあります。
腰をかがめなくてよいように作業台の高さを変えたり、頭をぶつけなくてよいようにバルブなどの位置を変えたり、安全を確保するために動線(作業のために人が動く経路)を変えたりすることが基本です。

その背景には、危険を放置しないということのほかに、危険に注意を向けるエネルギーを作業に集中してもらうという効率化(生産性向上)の目的があります。
不安全箇所を放置したままにしておくというのは、毎日毎日それに注意をし続けなければいけないわけで、人間にとっては物凄いストレスです。ロボットでない限り注意が続くものではありませんので、忙しかったり疲れてうっかりした時に事故を起こしてしまいます。

つまり、「そうならないよう注意している」「言ってある」「マニュアル(作業指針)に書いてある」-では、経営者失格なのです。そういう経営者は、毎日毎日腰をかがめて作業したり、頭をぶつけないかと気をつけながら作業してみるとよいでしょう。注意したり、言ったりしなくても無理なく仕事ができ、目の前のことに集中できる環境を整えることこそが経営者の果たすべき任務なのです。

不安全箇所の改善は、安心して仕事に集中してもらうために工場が第一優先でやるべきことなのです。





■2,鉄道運輸にとってやってはならないこと--------------

安全に、安心して、無理なく仕事に集中できること-その環境を整えることが経営者の任務だと分かりました。そうやって仕事に集中できるからこそ、お客様や利用者への配慮が行き届くようになり、住みよい社会が実現していくことになります。
さて、人や物を安全に目的地まで運ぶことが使命である鉄道運輸にとって、やってはならないことは次の2つです。

1,急カーブを作らない
2,S字カーブを作らない

1は、直線からカーブに入る時にいきなりその半径に突入しないで、直線(=半径無限大)から徐々に半径を小さくしていく緩和曲線を設けつつ入っていくということ。
2は、カーブにおける勾配のつけ方、その切り替えし、緩和曲線の確保など、脱線防止のために「構造上」の様々な注意が必要である上に、車両の長さや車重、速度など、「運行上」の注意も必要になってきます。日常的に運転士に注意を強いることになりますので、基本的に作ってはならないカーブです。
(2000年3月の地下鉄日比谷線脱線事故においてもS字カーブの問題がクローズアップされました)

つまり、鉄道がカイゼン活動を行うとすれば、急カーブやS字カーブをなくしていくことがその基本となるわけです。





■3,事故現場の軌道-------------------------------

1987年に国鉄が民営化されて10年後の1997年、大阪でJR東西線が開通した時、尼崎駅に進入する軌道が変更されました。それまでは、伊丹駅からほぼ直進できて、そのまま左にカーブして素直に尼崎駅に接続する軌道でした。
が、変更後は尼崎駅手前で急に大きく右カーブを切り、次に大きく左カーブを切って尼崎駅に乗り入れるという不自然なS字カーブになりました。地図で見てもその不自然さが分りますが、伊丹駅から現場までヘリコプターから映した報道の映像を見て本当に不自然な感じがしました。

この軌道変更の結果、「魔のカーブ」と言われるR300(半径300メートル)の急カーブが生まれることになり、そして、まさにそのカーブで脱線事故は起きたのです。

冒頭に見たように、カイゼンとは事故の種をなくすこと。
しかし、1997年にJR西がわざわざ行った軌道変更はカイアク。やってはならないことを2つともしてしまったのです。この時に、将来の事故の種はまかれたと言ってよいでしょう。

事故の芽を摘むカイゼンとは真逆のことをしたのですから、いずれ事故が起こるのは当然の帰結でした。事故当時の記事によると、「(現場のカーブで)揺れを強く感じ、不安を感じることがある。乗客が少ないと安定感がなく、運転には注意がいる」と運転士が語っています。
(繰り返しになりますが、このような危険軌道を放置せずに、安全軌道に変えることが経営者の任務なのです)



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