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「戦争体験の継承」の難しさと大切さ

2007/08/07(Tue) Category : 戦争
小田実の「何でも見てやろう」という分厚い本を読みふけったのは高校生くらいだったか。




再び彼の名を聞いたのは、胃ガンと闘っていることを報じた7/5日の朝日朝刊だった。
「えっ、胃ガン? それにもう75なの。親父と同じ年なんだ…」-なんだか一挙にワープして実感がなかった。

そのときの新聞では、『33年の『全権委任法』で、ナチスがワイマール憲法をなし崩しにした過程にそっくりだ。最低投票率制がない国民投票法は、20%ぐらいの投票率であっても改憲可能になる。少数独裁民主主義になるのではないか』と、病床にあっても、国民投票法の成立など政治の動きを心配していることが伝えられていた。





ところで、国民投票法案が衆院通過した時の新聞(4/14朝日)には次のような声が掲載されていた。

『終戦からたった60数年。なのに、戦争ができる国に着々と変わろうとしているように見える。孫たちに同じ思いをさせたくない』【23年前からドームの水彩画を描き続けている原広司さん(75)】

『ついにここまで来たか。(略)あの大空襲の惨禍を今の時代に伝えきれなかったか。だが、私たちは過去の戦争犠牲者と、今の子どもたちの声なき声に耳を傾け続けなければいけない』【作家の早乙女勝元さん(75)】





小田実氏はじめ、いずれも75歳-私の父と同世代である。
早乙女勝元氏が嘆くように、この世代は残念ながら『大空襲の惨禍を今の時代に伝えきれ』ていない。

語り継ぐこと』に書いたが、語り継がれていない知識は、いざというときに智恵として機能しない。スマトラの大地震の時、奇跡的に全員が助かった村では、“ツナミ”の怖さが親から子へと実感をこめて語り継がれていた。


しかし、『連鎖を断つために過去と向き合う』に書いたように、過去を見たくない人々にとって、実感を持って語り継ぐことはとても辛い行為なのだ。ここに戦争体験を継承することの「体験者側の難しさ」がある。


むしろこの世代は、悲惨な過去を振り払うかのように前だけを見て突進してきたのではないだろうか。前途には輝かしい未来が開けていた。
ちなみに父の場合は、1年分の給与をつぎ込んで真空管ラジオを購入…から始まってモノを揃えていった。貧しいが故、そして焼け野原になったが故の物欲が高度成長を押し上げた。





一方、会社で学歴差別に苦しんだ父から、大学だけは行けというプレッシャーを受けて私は育った。当然、中学時代から反発をするようになる。そして、高校時代に家族が転勤になって私一人「間借り」暮らしを始めてから救われ、私は息を吹き返した。
間借りだから、朝夕は「まるまん」という同級生の親がやっている食堂で食事した。

そして、そのまるまんの親父から、シベリア抑留の話など毎日のように聞かされたものだ。まぁ批判的反抗期だからね、私がそうだったように息子(同級生)は話を聞かないだろう。だから、自分の息子に話せないことを私に話していたんだろうと思う。
抑留から解放されて帰国の船上、抑留中に高圧的で反感を買っていた2名の日本人を残る全員で海にたたき落とした話など、今でも覚えている。

私も、自分の親からであれば聞かなかったかもしれない。何しろ話の内容ではなく、父親という存在そのものが、今の言葉で言えばうざかったから。これが戦争体験を「受け継ぐ側の難しさ」である。

だから、前世代の経験をいろんなルートで後世代が受け継げるような多世代混住社会が望ましい。



幸い私は親以外の年配者と接する機会も多く、あちこちで戦争体験を聞いた。だから自然と、戦争に対する関心も培われた。
そして今は、親の人生をきちんと聴くことが親の生涯を全うさせることであり、その戦争体験をきちんと聴くことが「世代間引き継ぎ」の完了だと思っている。逆に、それをさせなければ、民族に経験が残っていかない。





8/7の「天声人語」によると、小田実氏は、大阪空襲に遭い黒焦げの死体を片付けたという体験から、ベトナム戦争の写真を見てその悲惨さを実感し、「ベトナムに平和を!市民連合(べ平連)」を立ち上げたそうだ。

体験があるから「におい」がわかり、においがわかるから行動する-これは、私にもよくわかる。スマトラの村が助かったように、「におい」を共有できる人を増やすことが、(パワーバランスなどの頭でっかちの危うい抑止力ではなく)戦争の本当の抑止力になる。

奇しくも、氏が暴走を懸念した自民が大敗を喫した日、氏は亡くなった。
時代の変化の兆しを見届けたのだろうか。


合掌。


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満州からの引き揚げ船でも

祖父が内地への帰還を許可されなかったため、伯母だけが内地の様子を見に行って、一家が最後の引き揚げ船で出航してから、人を海にほうり込むことが決まって、団長だった祖父は止めるのが大変だったと。
この時期はまだ戦争中で、日本軍の降伏を受け入れた敵は日本人の肉体に直接働き掛けて日本人の心の中の日本人国家を壊すことが出来なくなっていますが、降伏文書や国際法の制限内で、互いに敵国人の心の中の敵国を破壊しようとする戦争状態は、連合国との日本との平和条約や日華平和条約、日ソ共同宣言の発効迄続いていました。
占領側は敵の同胞愛を破壊したり抑圧するのが一番手っ取り早いから、敵に迎合するために同胞に対し過酷に振る舞う人が出て来てしまう。
環境が過酷であれば団結する必要性を感じるのが人情ですし軍人は特にそうですから、団結する必要性を強く意識する環境に置かれながら団結心や同胞愛を罰せられた、シベリア、朝鮮北半、満州のソ連軍管理下の収容所の過酷さは想像を絶するものだったと思います。
そこら辺が、占領下で人民裁判の怖さを知った人達により引き揚げ船中で殺害が決定されたり、実行されたりされなかったりした事情なのかと。

ポツダム宣言が、日本民族の国家の存続を前提にするものである以上、愛国心を構成する同胞愛を直接攻撃する行為は当然に違反です。
それが降伏文書のポツダム宣言条項に基づき連合国が戦犯と指定したものに対する者であってもです。実際、戦争状態終結後、連合国が指定した戦犯に対する刑免除の嘆願は連合国によって聞き入れられています。
日米が戦争終決を決定して、戦闘中止を号令した後も、戦争は戦闘を行った期間よりも長く続きましたが、もう終わりました。戦闘中止後のまだ互いの心を攻撃することが合法であった期間の戦争や国際法違反や敵の恩情についても冷静に見直すべきでしょう。また、この期間の戦争犯罪については互いに免責して講和していますから、敵ではなくなった諸国を敵視するべきではありませんが、現在どことも戦争状態に無い日本の国民の、同胞愛等を破壊しようとする等の、心の中の日本国に対する攻撃は如何なる名目の下に行われるものであっても違法です。
それは、日本人の福利を保証することを国家の目的とするよう命じる独立主権国家の最高法規が存在することを否定することにより、日本人が人権を有することを否定しようとする違法な暴力です。

 

伝えることの難しさ

当事者は悲惨な過去を思い出したくないし、非体験者は競争社会にせっつかれて聞く耳持つ暇がないし…

当事者からの引き継ぎがないままにこの国から当事者がいなくなってしまえば、重しがなくなって簡単に暴走する可能性があります。

感謝感激さんやマイコさん達のお子さんへの思いは素晴らしいと思います。

 

母の話

お久しぶりです(^-^)
中尾さんのブログを読んで、母(もう78才です)の話を思い出しました。
呉市の軍需工場で学徒動員で働いていた母は、高等女学校の生徒でした。広島に原爆が落ちた時、呉市の工場からもはっきりと「きのこ雲」が見えたそうです。
私も息子を広島にもうそろそろ連れて行かないとな…と思っていたところです。
戦争は絶対にしてはいけない。心から思います。

 

あっという間です

私たちが伝える世代になってあっという間でした。
考えてみれば父は長崎で遠くで赤い空を見つめました。被爆地からは遠かったけど、恐ろしいような色だったと言っていました。
年数が立つ度に薄れていきますね・・・
子ども達も大きくなってきたので、いつか原爆ドームに連れていこうと思っています。
戦争も行けないし、原子力もとても恐いです。

 
    
 
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