JR福知山線脱線事故の深層-第5部-「日勤教育」に内在するダブルバインドの構造 (2)ダブルバインドによる「操り人形症候群」
本当にそうかと思う人もいるかもしれませんね。意志が弱い、あるいは気持ちが弱い人間なのではないかと思う人もいるかも知れません。
言ったことを実行することを心がけて50年生きてきた私は、それほど意志が弱い人間ではないと思います(単にわがままなだけという話もありますが…^^;)ので、私の例を挙げましょう。
私がダブルバインドに遭ったとき、私の意志に関係なく体が反応するようになりました。
ダブルバインドを行使するそのパワハラ上司は右隣の席でしたが、いつしか、出社して席に座った途端に全身の右側面の神経がピリピリしているのが分かりました。その上司がまだ出勤していないにもかかわらずです。あぁ、全身がバリアを張っていると思いました。
上司がいようといないとにかかわらず、出社してから家に帰り着くまでの間、全神経が戒厳令の夜のように緊張を解いていないのです。いつ何時、どのような弾が飛んでくるのかわからない-全神経が仕事ではなくその上司の一挙一動、一言一句を警戒していました。
これは私の「理性」ではなく「生理」の問題でした。
このように過ごすと、どうなるでしょうか。
わずか1日の出社でくたくたになってしまいます。
何をしていなくてもです。
仕事の効率が目に見えて落ちるのが分かりました。
感覚として100分の1でしょうか。
しかも、ダブルバインドの本質は、「指示通りに動け」=「言われたことだけやれ、言われていないことはするな」です。何しろ、指示以外のことに関しては全て“何か”が待っていますから、自分の行動にストッパーがかかって何もできなくなっていくのです。
自ら行動する意志を失い、逸脱行為ができなくなり、指示待ち人間となり、突発的なことには判断停止して身がすくんで対応できなくなっていく…つまり、「ロボット化」していく。これが、ダブルバインド被害者の特徴なのです。
活力がなくなったある日、「妙な操られ感」を感じたことがありました。
自分の行動が自分のものではない感じです。
自分と行動が乖離し、自分の行動を別の自分が眺めているような感じです。
あぁ、これが統合失調症が発症するときに感じる「操られ感」というものか、と思ったものです。
(もともとダブルバインドは、心理学ではなく「人類学者」ベイトソンが、統合失調症者が現れる家庭を調査していて“発見”したコミュニケーションパターンです)
・「精神の生態学」~ベイトソンのダブルバインド理論の詳細
ダブルバインドに遭えば、誰でも操り人形にされてしまうことがわかると思います。
(ご参考)
・パワハラにおけるダブルバインド(二重拘束)の構造
・パワハラからの離脱法
・実録!言葉のDV
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